先進製造の広範な導入には、依然として課題があります。
革新的な技術ソリューションにより、先進製造業界はパンデミックによる打撃から急速に回復しました。
先進製造ソリューションの普及をさらに進めるには、産業界と政府が連携して取り組むべき優先課題が3つあります。イノベーション、包摂性、持続可能性です。
2020年の操業停止や減速を経て、製造業界は革新的なソリューションで課題に取り組んでいます。労働力とサプライチェーンに大きな圧力がかかる中、世界各地の製造企業は能力と強靭性を高めています。
先進製造の加速
この回復を支える大きな要因の一つは、パンデミックに対応した先進製造技術とソリューションの導入加速です。機械やロボット、ソフトウェア・技術のプロバイダーから、製造を手がける企業まで、先駆的なソリューションが業務運営とビジネスモデルを大規模に変革しています。環境・社会・ガバナンス(ESG)への配慮の重要性も高まり、変化を促しています。生産性を向上させ、環境負荷を低減するとともに、工場の現場をより清潔で安全な、働きやすい環境にしています。
広範な導入に向けた課題
先進製造の利点はよく理解されているかもしれません(国連工業開発機関(UNIDO)のデータによると、より革新的な技術を活用する産業では、生産実績が向上しています)。しかし、導入をさらに広げるには、継続的な課題があります。製造企業が利用できるアクセス、インセンティブ、投資は、立地や企業規模をはじめとする複数の要因によって大きく異なります。気候変動、地政学的不安定、所得格差、資源不足、サプライチェーンの混乱の深刻化を放置すれば、こうした格差はさらに広がるでしょう。
例えば、失業率が高い国の製造企業は、先進製造技術を導入するインセンティブが乏しくなります。また、国際的な投資の流れが滞れば、発展途上国の企業の進展が止まるおそれがあります。
したがって、世界の製造業コミュニティには、発展途上国や中小企業を第4次産業革命(インダストリー4.0)とその先へ包摂する責任があります。適切に管理すれば、こうした進歩は、より包摂的な労働力を実現し、全体としての環境負荷を最小限に抑える力となります。
官民の組織は協力して、第4次産業革命に備えて労働者のスキルを再習得するためのロードマップを策定する必要があります。これにより製造企業は、バリューチェーン全体のレジリエンスを高める新たな能力を育成できます。
3つの最優先課題
先進製造を広く普及させるには、大きな変革と協力が必要です。その実現に向け、産業界のリーダーと公共部門の推進者が連携するための優先課題を3つ挙げます。
1. イノベーション:アイデア、技術、ベストプラクティスをオープンに共有する
2. 包摂性:先進製造の可能性を生かし、人を最優先にする。
3. 持続可能性:効率性を高め、持続可能な業務運営を推進する
知識を共有し、イノベーションを加速する
民間部門と公共部門が先進製造を受け入れるようになるにつれ、知識やベストプラクティスをオープンに交換する場を引き続き設けるべきです。先進製造の成功事例や活用例を共有すれば、たとえば世界経済フォーラムのグローバル・ライトハウス・ネットワークのように、生産性と成長を高めながら変革を加速できます。こうした取り組みは、政府や投資家が将来得られる可能性のある便益を理解する助けにもなります。
組織内での知識共有も欠かせません。大企業は、これらの技術をサプライチェーンに広げ、買い手と売り手の市場における協力を育むことで、バリューチェーン全体の連携を促進できます。そうすることでサプライチェーンを強化し、生産性を向上させるとともに、可視化、計画、デジタル連携、データ共有、需要に応じた規模の拡大・縮小、製造能力の確保を通じて導入を加速できます。
こうした技術の導入を促すだけでは不十分です。絶えずイノベーションを続けなければなりません。導入企業が増えるにつれ、技術は新たな用途に適応し、市場や気候変動による混乱に対応し、顧客の新たなニーズを先取りする必要があります。それにより、新製品やサービスに向けて、機敏で共同創出型のイノベーションが可能になります。

先進製造を通じて人を中心に据える
最良の先進製造技術とソリューションは、人を中心に据えます。過去の産業革命では、技術が進歩するたびに、国内および国家間の格差が拡大しました。今回は、労働者の力を引き出し、スキルを高めることで、仕事への意欲と定着率を向上させなければなりません。
先進製造は、労働者の創造性、問題解決力、協働力、生産性を高め、その能力を大きく伸ばす可能性を秘めています。新たな投資やプログラムを通じて、労働者のスキル向上と再習得を可能にする必要があります。新技術や新たなスキルの導入を加速するため、学術分野のイノベーション、研修、カリキュラムに投資するには、業界の同業者や地域社会のパートナーとの協力が必要だという点で、私たちはフォーラムの先進製造CEOコミュニティに賛同します。
こうした技術は、労働者の間にある障壁を取り除くことにもつながります。職務記述書から「物を持ち上げる能力」という要件をなくせば、性別や能力の水準を問わず、以前は身体的負担が大きすぎた職務に就けるようになります。先進製造は、よくある反復動作によるけがを減らすこともできます。より清潔で安全な工場現場は、生産環境の魅力を高め、人材不足への対応に役立ちます。
より持続可能な世界を築く
先進製造は、製造現場に効率性をもたらし、大きな効果を生む可能性があります。材料の無駄を減らし、過剰生産やミスを防ぎ、水と電力の使用量を削減し、工場の敷地面積を縮小できます。その結果、サプライチェーンが短く安定し、物流の流れも簡素化されます。
例えば、Severn Trentは、英国で2番目に大きな水道会社です。同社はRockwellなどの技術革新企業と協力し、人工知能(AI)によって廃水集水域の自律運用を実現する方法を探っています。AIモデルは、汚水ポンプ場の故障や洪水の発生可能性と顧客への影響を予測できます。これにより、先回りした対応が可能になり、浸水や汚染の軽減につながります。
世界的なテクノロジー、サプライチェーン、製造ソリューションのパートナーであるFlexも、その一例です。同社は、製品の返品、修理、回収、再利用を含むライフサイクル全体を効果的に管理しながら、規制要件の強化に対応しやすくする技術や手法を用いて、顧客の持続可能性目標の達成を支援しています。
産業用モノのインターネット(IIoT)技術を使えば、顧客に近い小規模工場を遠隔から制御・監視できます。先進製造は、効率性を高める次世代の技術とソリューションを提供するとともに、新たな持続可能性指標の追跡と報告を可能にします。
強固な世界規模の先進製造コミュニティを育むことは、産業変革を責任ある形で加速する助けになります。主要企業は、より持続可能で循環型のプロセスやバリューチェーンへの移行を可能にする技術とソリューションの重要性を示すことができます。それによって、将来の危機に対処する新たな方法が生まれ、レジリエンスが高まります。
すでに広がりつつある勢いを心強く感じています。今後も議論を続けるダボス・クロスタースでの年次総会とその先を見据え、先進製造コミュニティが協働の姿勢を取り入れるよう呼びかけます。




