「適応」戦略は民間セクターにとっても有益です。とりわけ、社会とつながるステークホルダーを考慮する場合に重要です。
組織は、新たに現れる社会の潮流に耳を傾け、理解する力を高める必要があります。
効果的な協働を通じて、適応にかかるコストを分担できます。
各国政府には、緩和策を通じて気候変動の最悪の影響を防ぐだけでなく、回避できない影響をできる限り乗り越えるための適応戦略を策定し、実行することも、ますます求められています。
例えば米国では、最近、23の連邦機関が適応計画を公表しました。変化する気候への対応を目的としたものです。欧州連合(EU)も、2050年までに気候レジリエンスを実現することを目指す適応戦略を発表しています。政府の適応計画が必要とする解決策を実現するうえで、民間セクターが役割を果たす機会があります。同時に私たちには、緩和にとどまらず、企業の適応計画も含めて自らの取り組みを広げる責任があります。
今日、企業の適応が求められていることを考えると、適応の時期や推進力は、特定の生態系の変化からではなく、社会とつながるステークホルダーの変化によって、より大きな圧力と緊急性を伴って訪れる可能性がある点に留意すべきでしょう。
こうしたステークホルダーは、温室効果ガスの排出削減を明らかな優先課題とする一方、支援が必要なその他の複雑な課題も懸念しています。そのため、企業の適応戦略には次の要素が必要です。
新たに現れる社会の潮流をより深く理解できるよう、組織の備えを整える。
社会が懸念する、すでに明らかになっている重要な分野で、解決策に貢献する。
同業者と効果的に協働する。
特にテクノロジー企業には、これらの各分野に大きく、そして切実に求められている貢献を行う力があります。
ステークホルダーの懸念に耳を傾ける必要がある
新たに現れる社会の潮流に備えるには、社会とつながるあらゆるステークホルダーが現在どのような懸念を抱いているのか、よりよく耳を傾ける力を高めることが重要です。私が勤める組織、Armは長年にわたり、コンピューターのモビリティを可能にし、デバイスの知能を高める技術的貢献を通じて、スマートテクノロジーの実現を支えてきました。
企業の適応の一環として、こうした「スマート」の技術的な定義は今後、社会がスマート製品をどう捉えるかに積極的に耳を傾けることで補う必要があります。これには、製品のカーボンフットプリントへの意識を高めることや、さまざまな技術進歩が社会に与える影響への懸念などが含まれます。
こうした意識を組織に取り入れるとは、今後、スマートテクノロジーを何によって定義するかを話し合う場に、社会とつながるステークホルダーの声を届けることです。今日の課題である炭素排出を確実に含め、必要に応じて他の社会的懸念も取り上げます。
気候変動に次ぐ主要な懸念は不平等
社会とつながるステークホルダーの懸念を追跡するだけでは不十分です。すでに明らかになっている重要な課題の解決にも貢献しなければなりません。私たち自身や他のテクノロジー企業にとって、拡大する不平等は、気候変動以外で最も大きな社会的懸念の一つです。不平等にはさまざまな形があり、とりわけ機会の不平等を減らすことは、テクノロジーが貢献できる余地の大きい課題です。
これまでテクノロジー業界は、デジタルソリューションを通じて前例のない機会の創出を後押ししてきました。しかし残念ながら、そうしたデジタルの機会は世界中に等しく行き渡っていません。
しかし、解決策への貢献や、デジタルの機会を新たな分野へ広げるためのイノベーションの機会は、至るところにあります。大小さまざまな取り組みを通じて、こうしたイノベーション分野に解決策をもたらし、デジタル格差の解消に着手できます。
適応コストは分担できる
適応にはコストがかかりますが、多くの分野で、効果的な協働によってそのコストを分担する機会もあります。効果的な協働とは、具体的な成果と影響につながるものです。とりわけテクノロジー業界では、適応戦略において、効果的な協働の機会を一つ残らず見つけて生かすべきでしょう。
例えば、社会とつながるステークホルダーは、人工知能(AI)が自らの生活をどの程度変えるのか、また、その変化が社会全体に公平に行き渡るのかについて、明確な懸念を抱いています。
AIをめぐる懸念に対処する協働の取り組みを見つけ、支援することは、例えば世界経済フォーラムのグローバルAIアクション・アライアンスのような活動を通じて、社会とつながる世界でよりよく繁栄する力を高める適応戦略の重要な要素となり得ます。
ステークホルダーを理解し、その要望に応えるには、それぞれのグループの明確な違いや固有のニーズに目を向ける必要がある場合が多くあります。しかし一歩引いて、こうしたグループに新たに共通している点に注目すれば、いずれもテクノロジーを通じて同じ社会のつながりの中にあり、似た分野でますます変化を求めていると認識できます。
そうした変化に適応する時が来ています。適応戦略の一環として、特定の懸念に応える即時の具体的な行動から、新たに生じる懸念に対処する幅広い将来計画まで、さまざまな取り組みが必要です。各自がこの変化に適応するための適切な戦略を定めることになりますが、誰にも傍観している余裕はありません。





