水は戦略資源にとどまらない。そのことを認識する必要がある

A surfer rides a wave during sunset in Vina del Mar city, about 75 miles (121 Km) northwest of Santiago, March 20, 2010. People slowly return the normal life in the coastal border after suffering an earthquake and tsunamis in much of southern Chile on February 27, 2010. REUTERS/Eliseo Fernandez (CHILE - Tags: SOCIETY IMAGES OF THE DAY) - RTR2BVIJ
This has been a long time coming.Image: REUTERS/Eliseo Fernandez
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ニューヨークの国連ビル38階で行われた交代は、アントニオ・グテーレスが潘基文の後任として国連事務総長に就任したもので、平和と紛争をめぐる考え方が静かに変化しつつある時期に起きた。とりわけ、資源、なかでも水の役割が、その重要性にふさわしい認識を得つつある。

こうした変化は、長い時間をかけてようやく訪れた。潘氏とその前任者であるコフィー・アナン氏は、とりわけ水などの天然資源を保護し、共有することが平和と安全に不可欠だと、約20年にわたり主張してきた。しかし、この問題が広く認識されるようになったのは、昨年11月、当時の国連安全保障理事会議長国だったセネガルが、水、平和、安全保障をテーマとする国連初の公式討論を開催してからのことだった。

すべての国連加盟国に開かれたこの討論には69カ国の政府代表が参加し、水を危機の潜在的な火種から平和と協力の手段へと変えるべきだと一致して訴えた。数週間後、グテーレス氏はアミナ・モハメッド氏を副事務総長に任命した。同氏はナイジェリアの元環境相である。

水の戦略的重要性への認識が高まっている背景には、世界情勢の変化がある。過去3年間に、イスラム国(ISIS)はチグリス川とユーフラテス川にあるタブカ、ティシュリン、モスル、ファルージャの各ダムを制圧した。ISISはその後、いずれのダムも支配を失ったが、その前にダムを利用して下流の住民を洪水に見舞わせたり、水を絶ったりし、降伏を迫っていた。

多くの分析者は、今後数カ月のうちにISISがイラクとシリアからついに排除されることを期待している。しかし、それは同組織が解体することを意味しない。むしろ、リビアとチャドの国境地帯に移り、西アフリカの都市や水関連施設を危険にさらす可能性がある。

Image: プロジェクト・シンジケート/世界資源研究所

この戦術を使うのはISISに限らない。南アジアの過激派組織も、水インフラへの攻撃を予告している。もちろん、国家主体も水資源を利用して戦略的優位を得ることができる。

21世紀における水の重要性は、20世紀の石油に匹敵し、いくら強調してもしすぎることはない。それでも、一部の戦略専門家は水の重要性を過小評価し続けている。実際、石油には天然ガス、風力、太陽光、原子力といった代替エネルギーがある。これに対して、産業や農業にとっても、飲料や衛生にとっても、水の代わりになるものは、スロベニアの元大統領ダニロ・テュルク氏がかつて述べたように、水しかない。

貿易についても同じことが言える。チャグレス川を考えてみよう。あまり知られていないかもしれないが、この川はパナマ運河に水を供給しており、アジアと南北アメリカ間の貿易の50%がこの運河を通るため、極めて重要である。今後100年間、河川流量が自然に減少するリスクはないが、中米で安全保障上の危機が起きれば、無法な勢力に掌握される可能性がある。世界経済への影響は甚大だろう。

紛争地域の水資源や関連施設を守る必要があるという点では、意見が一致している。どう実現するかについては、まだ明確ではない。医薬品や食料の小包とは異なり、水を紛争地域に空中投下することはできない。国連平和維持部隊も、深刻な人員・資源不足に陥っている。

赤十字国際委員会は、イラク、シリア、ウクライナで水道管や貯水システムの損傷を点検・修理する技術者の安全な通行を交渉している。しかし、通行のたびに紛争当事国の政府や反政府勢力の司令官と交渉する必要があり、時間がかかるうえ手続きも煩雑だ。よりよい方法は、大国がその大きな影響力を生かし、長期化する紛争地域で、水システムの修理と復旧を目的とした短期停戦を交渉することだろう。

しかし、こうした方法への道を開くには、国連安全保障理事会が水を「人類の戦略資源」と宣言し、水資源と関連施設を保護する決議を採択する必要がある。これは、武力紛争下の医療施設を守るため昨年5月に採択された決議2286に類するものだ。

長期的には、河川流域を共有する国々が、資源を保全・保護するための地域安全保障の枠組みを設ける必要がある。協力的な管理を共同保護の基盤とすれば、しばしば競争や紛争の原因となる水が、平和と協力を促す存在になり得る。

コンゴ共和国大統領のドニ・サスヌゲソ氏は、8カ国の政府を率いてコンゴ盆地ブルー基金の設立を目指し、この動きを主導している。実現すれば、この基金は気候変動の緩和、河川を基盤とする新たな雇用機会の創出、不安定な地域における集団安全保障の促進に役立つだろう。2カ月前にマラケシュで開かれたアフリカ行動サミットは、この基金を大陸を変革し得る4つの重要な構想の一つと位置づけた。

昨年3月の世界水の日に、ヨルダンのハッサン・ビン・タラール王子と私は呼びかけた。世界が共有する河川流域のためのマーシャル基金の設立を求めたのだ。コンゴ盆地ブルー基金は、その方向への一歩である。今、世界にある263の共有河川流域と湖をすべて保護するため、同様の基金が生まれる必要がある。これは大きな課題だ。しかし、水には紛争を招く力も平和を支える力もあるのだから、私たちは正面から取り組まなければならない。

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