深刻化する気候危機の中、電力部門は水ストレスの影響を受けやすくなる一方、その悪化にも拍車をかけています。
電源構成やインフラの建設場所に関する選択によって、各国が水関連の問題にどれほどさらされるかが決まります。
水の消費量が少ない再生可能エネルギーの拡大は、水を賢く利用する電力の実現に不可欠です。
多くの国では、農業、都市、産業の間で水をめぐる競争が激化し、干ばつの頻度が高まり、夏の気温も上昇しています。同時に、熱波の際の冷房需要の増加などを一因として、電力需要も伸びています。
こうした傾向を踏まえると、電力部門は水ストレスに脆弱であると同時に、技術の選択次第では水ストレスをさらに深刻化させる可能性もあります。このバランスへの対応は、信頼性と投資に関わる課題です。水の状況が変化すれば、発電資産の運用期間を通じて課題も変わり得ます。河川流量が減少したり、取水温度が上昇したりすると、熱波で電力需要がピークを迎えるまさにその時に、火力発電所の運転が制限されるおそれがあります。こうした変動は、許認可の判断や系統運用者による送電網の運用に影響し、水ストレスの高い流域でのプロジェクトに求められるデューデリジェンスの要件を厳しくする可能性があります。
水、エネルギー、電源構成
発電技術によって水の利用特性は大きく異なります。電源構成やインフラの建設場所に関する選択は、運転を制限し、承認を遅らせ、気候変動に起因する水ストレスを悪化させる可能性のある水関連の問題に、国がどれほどさらされるかを左右します。
水と電力の関係が特に顕著に表れるのが、発電所の冷却です。そのため、発電技術を比較する際には、取水量(取水源から取り入れる総量)と水消費量(蒸発などにより水源に戻らない量)を区別することが重要です。
以下のインフォグラフィックが示すように、風力発電と太陽光発電(PV)はライフサイクル全体での水消費量が少ない一方、蒸気サイクル方式は冷却方式によっては水の使用量が多くなります。

風力発電と太陽光発電(PV)は、運転に必要な水がごくわずかで、水冷式火力発電と比べ、ライフサイクル全体での水使用量も最小限です。再生可能エネルギーの拡大は、次の効果をもたらします。
排出量とともに、電力システムの水フットプリントを削減する。
冷却用水の制約を受けやすい発電への依存を減らし、水ストレスへの曝露を低減する。
ただし、すべての低炭素電源が水の使用量も少ないわけではありません。集光型太陽熱発電(CSP)や地熱発電などの熱電技術では、かなりの量の水が必要になる場合があります。冷却方式によって。
水の節約を最大化する4つの分野
実際には、水リスクが最も大きく、水を節約できる可能性のある対策は、次の4分野にあります。
1. 水の使用量が少ない発電
システムの状況が許す場合、太陽光発電(PV)と風力発電を優先すれば、暑さや干ばつによる水ストレスが高まる時期に、水を大量に使用する火力発電設備を稼働させる必要性を減らせます。再生可能エネルギーを、稼働率の向上と確実な系統統合を可能にする対策と組み合わせれば、その効果は高まります。
2. 冷却方式の選択
火力発電では、冷却システムの選択が取水量と水消費量を左右します。ピーク需要への対応と送電網の安定維持に必要な火力発電設備について、計画担当者は冷却性能に関する基準を設けることで水リスクを低減できます。
再生可能エネルギーと冷却政策の連携によって、電力部門の水リスクをどのように低減できるかを示す明確な事例がインドです(以下のインフォグラフィックを参照)。IRENAと世界資源研究所(WRI)の分析では、再生可能エネルギーの導入や冷却技術の転換によって、2030年までに同国の発電における淡水使用量がどのように変化するかを評価しています。再生可能エネルギーへの大胆な転換と冷却の改善により、2014年比で、2030年までに取水原単位を最大84%、水消費原単位を25%削減できる可能性があります。政策上のメッセージは明快です。水の使用量が少ない再生可能エネルギーを拡大し、残る火力発電設備の冷却対策を強化することです。

3. 立地選定と許認可
立地によって、他の利用者との水をめぐる競合や気候変動への曝露が決まります。流域単位の水ストレスや排水に関する制約に照らしてプロジェクトを審査すれば、運用能力が活用されないままになる事態や、他の水利用上の優先課題との衝突を避けるのに役立ちます。
中国の経験は、水ストレス、立地、冷却方式の選択が、システム全体の計画を制約し得る理由を示しています。IRENAとChina Water Riskによる評価では、2030年の電力部門について複数のシナリオを検討し、それぞれが同国の水使用原単位と排出原単位に及ぼす影響を分析しています。発電設備の推定45%は淡水に依存し、水ストレスの高い地域に立地しています(水力発電を除く)。再生可能エネルギーの導入拡大と発電所の冷却改善により、2013年比で取水原単位を42%、水消費原単位を30%、排出原単位を37%削減できる可能性があります(以下のインフォグラフィックを参照)。水ストレスの高い流域では、発電計画と許認可において、水の利用可能性と冷却を初期段階から制約条件として扱うべきです。

4. 水リスク計画
水ストレスは季節や地域によって異なり、気候変動の影響をますます強く受けています。計画策定では、燃料や送電網のリスクを想定するのと同様に、水の制約を受ける運転条件のもとでシステムを明示的に検証する必要があります。計画の枠組みが、新たに生じる水に敏感な電力需要を予測できるかどうかが、重要な検証項目です。
水素: 水素の製造は、直接的には(電解の原料として)、間接的には(発電や冷却を通じて)、水需要を局所的に集中させる可能性があります。計画では、水ストレスの観点から立地を審査し、水源を明示する必要があります。
データセンター、AI、デジタル関連の電力需要: これらは電力消費が急増している分野であり、冷却を通じて多くの水を消費する場合もあります。立地、冷却方式、電力の調達方法によって、水ストレスを悪化させるかどうかが決まります。
「水を賢く利用する電力」を推進するための取り組み
新規の発電設備計画では、水の使用量が少ない再生可能エネルギーを優先する。 システムに適している場合は、太陽光発電(PV)と風力発電を主要な選択肢として扱う。送電網の増強、送電設備、蓄電、デマンドレスポンス、運用の柔軟性によってこれらを支え、水ストレスが高まる時期に水を大量に使用する発電を代替できるようにする。
計画、環境影響評価、許認可において、流域単位で水ストレスを審査する。 水ストレスが特に高い流域から新規投資を遠ざけ、再生可能エネルギーの立地面での柔軟性を生かし、地理的に供給を分散させる。
火力発電所の水利用性能に関する基準を強化する。 冷却方式と水への影響について、透明性のある報告を義務づける。改修や新設では、水使用量の少ない解決策を促す。
調達、規制、金融を連携させ、水を賢く利用する成果を促す。入札、デューデリジェンス、計画承認に加え、プロジェクトの事業計画や資金調達の判断にも水リスク基準を組み込む。
電力部門の選択によって、水ストレスを軽減することも、何十年にもわたって固定化することもできます。再生可能エネルギーを基盤とする移行は、脱炭素化への道筋であるだけでなく、気温が上昇し水の制約が強まる状況下でも安定運用を続けるための、実践的なリスク管理策でもあります。政策上の主なメッセージは、水を賢く利用する電力は実現可能だということです。ただし、そのためには、電力システムの計画、技術の選定、投資ルールに、水への配慮を早い段階から組み込まなければなりません。
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