アフリカの食料レジリエンス構築に向けた取り組みは、改良種子をめぐる誤情報と混乱によって妨げられている。
農家は、改良種子やハイブリッド種子を遺伝子組み換え生物と混同することが多い。
農業開発に必要なのは、種子システムの改善だけでなく、農家や消費者との明確なコミュニケーションでもある。
アフリカ全域で、バリューチェーンの関係者が飢餓、栄養不良、食料格差の解消に取り組むなか、食料をめぐる議論と科学をめぐる議論はますます密接に結びついている。気候変動、土壌肥沃度の低下、新たな病害虫、変化する市場の需要に対応するため、農家には改良品種の種子の導入が促されている。一方、各国政府や開発パートナーは農業研究に多額の投資を続けている。
国連経済社会局によると、アフリカの人口は2050年までに25億人に達すると予測されており、こうした取り組みは持続可能な食料の未来を確保するうえで欠かせない。また、急速な都市化を背景に人口が大幅に増えることで、食料需要も増加すると見込まれている。
人口の増加に伴い、ますます予測しにくくなる気候条件のもとで、急増する人口を養えるレジリエントな食料システムを構築する準備が大陸に整っているのかという問いが浮上する。だからこそ、科学を活用した農業イノベーションについて、十分な情報に基づく社会的な議論がこれまで以上に重要になっている。しかし、こうした議論のなかで、ある課題が繰り返し表面化している。誤解である。
ソルガムとミレットの生産システムを評価するDev-Afriqueの活動の一環として、ナイジェリアとセネガルで最近実施した現地調査では、関係者への聞き取りを通じて顕著な傾向が明らかになった。農家、農業資材販売業者、地域住民は、「改良種子」「ハイブリッド種子」「遺伝子組み換え生物(GMO)」という言葉をしばしば同じ意味で使っていた。多くの人は、科学者が開発した種子や、正式な種子流通システムを通じて販売される種子を、単にGMOと見なしていた。
この混乱は重大な影響を及ぼす。リスクに対する認識を形づくり、改良品種の導入を大きく左右し、最終的には農業生産性の強化を目的とするイノベーションの普及にも影響するからだ。今回の訪問で明らかになったのは、改良品種、ハイブリッド、GMOが何であり、それぞれが何を意味するのかについての不確かさだった。こうした違いを明確にすることは、それぞれのイノベーションがもたらす機会と限界を理解する土台となる。
3種類の種子
おそらく最も重要なのは、すべての改良種子がGMOとは限らず、すべてのハイブリッドが遺伝子組み換えとは限らないという点だ。
改良品種は通常、従来の植物育種によって開発される。育種家は、干ばつ耐性、病害抵抗性、早生性、収量の高さなど、望ましい特性を持つ植物を選び、その特性が安定するまで何世代にもわたり慎重に交配する。今日の育種方法は数十年前より高度になっているが、根本的な原則は変わらない。優れた植物を選び、時間をかけて改良することだ。
ハイブリッド品種は、慎重に選定した2つの親系統を交配して作る改良品種の一種で、第一世代(F1)の種子を生み出し、両親の望ましい特性を組み合わせる。
GMOはこれとは異なる。GMOは現代のバイオテクノロジーを用い、通常の育種だけでは実現できない方法で生物の遺伝物質を改変して開発される。作物や目的に応じて、科学者は特定の遺伝子を導入、除去、または改変し、害虫抵抗性や除草剤耐性などの特性を実現することがある。遺伝子組み換え作物の開発、承認、栽培は、国によって異なるバイオセーフティ規制の対象となる。
これらは作物を改良するための明確に異なる3つの方法だが、しばしば同じものとして扱われている。
混同がもたらす問題
すべての改良品種が自動的にGMOと見なされると、農家は誤解から、干ばつへの耐性を高め、作物の損失を減らし、世帯収入を増やすのに役立つ種子品種まで拒んでしまう可能性がある。
普及指導員(訓練を受けた農業アドバイザー)は、実践的な農学指導を行う代わりに、誤解を正すために貴重な時間を費やす。種子企業は、本当に有益なイノベーションへの信頼を築くのに苦労する。研究者は、数十年にわたる植物育種への投資が必ずしも広範な普及につながらないことを実感している。一方、政策立案者は、事実よりも恐れに左右されがちな世論の議論に対処せざるを得ない。最終的に、誤情報は農業生産性を妨げる新たな障壁となる。
これは、気候へのレジリエンスと栄養価がますます評価されているソルガムやミレットのような作物にとって、特に重要だ。アフリカの多くの地域では、育種プログラムが長年にわたり、農家が変化する気象パターンに対応しながら生産性を高められるよう、改良品種の開発に取り組んできた。こうした品種の多くは遺伝子組み換えではなく、従来の育種によって生み出されたものだが、しばしば誤解されている。
なぜこうしたことが起きたのか。
この混乱は、さほど意外ではないのかもしれない。科学用語が、理解しやすい言葉で農村の人々に伝わることはめったにない。メディア報道は植物育種全般を見過ごし、GMOに焦点を当てることが多い。ソーシャルメディアは、正確な情報も誤情報も、かつてない速さで拡散させてきた。多くの場合、「改良された」という言葉は、それ以上の区別もなく、単に「科学者が手を加えた」と同じ意味で使われる。
さらに、農業技術をめぐる議論は、しばしば二極化する。技術とは何かを説明する話し合いが、すぐに導入すべきかどうかの議論へと移ってしまう。その結果、多くの人はそもそも科学について明確な説明を受ける機会を得られない。
より良い種子には、より良い対話が必要
ソルガムとミレットの分野での私たちの活動から得た重要な教訓は、種子システムだけでなく、コミュニケーションも重要だということだ。農業生産性の向上に必要なのは、より優れた技術の開発だけではない。社会の理解と信頼を築くことも同じように重要である。
農家には、利用可能な品種について、開発方法、期待できる利点、限界、トレードオフを含め、透明性が高く、根拠に基づく情報が提供されるべきだ。消費者には、誤情報や恐れに基づく判断ではなく、十分な情報を得たうえで選択できる明確な説明が必要だ。普及指導機関、研究者、政府、種子企業、大学、開発機関はいずれも役割を担っている。農業コミュニケーションは、イノベーションそのものの中核的な要素と捉えなければならない。
科学の進歩は、その恩恵を受けるはずの人々に理解も信頼もされなければ、成果をもたらせない。アフリカ農業の生産性とレジリエンスを高め、食料安全保障を実現するには、科学研究への投資にとどまらず、科学リテラシーにも投資しなければならない。
農家に新技術の導入を、消費者に受け入れを求める前に、私たちは彼らに欠かせないものを提供する責任がある。すなわち、その技術が実際に何であるのかについて、明確で誠実な、根拠に基づく対話である。そうして初めて、アフリカはレッテルにとらわれず、本当に重要な議論を交わせる。



