高品質なコーヒーの販売を支援することは、紛争や気候変動の深刻な影響を受けた地域で、人々の生計を取り戻す助けとなります。
研修は、農家が持続可能な農法を最大限に実践し、コーヒーの品質と生産性を高めるうえで重要な役割を果たします。
過去10年間で、世界のコーヒー産業の価値はほぼ倍増し、900億ドルに達しました。20億杯以上のコーヒーが現在、世界で毎日消費されており、市場は年平均成長率5.32%で2020年から2024年にかけて成長すると予測されています。特に若い世代が、高品質なコーヒーへの需要を牽引しており、独自性のあるプレミアムなコーヒー体験により多くのお金を払うことをいといません。
コーヒーの世界的な需要が引き続き高まるなか、消費者はコーヒーづくりの技と、新たな極上ブレンドを求めています。今こそ、コーヒー農家にとって理想的な時期のはずです。しかし実際には、高品質なコーヒーの豊かな歴史を持つ世界各地の地域社会が苦境に立たされています。高品質なコーヒーの生産と販売を支える方法を見つけることは、人々の生計と地域経済の回復につながります。
コーヒー農家の地域社会が苦境に立たされている理由
現在、約2,500万人の小規模農家が世界のコーヒーの80%を生産し、さらに、1億2,500万人を超える人々がコーヒーを生計の糧としています。しかし、多くの地域で、コーヒー栽培はさまざまな課題に脅かされています。
ジンバブエでは、コーヒーの生産量が1980年代後半の1万5,000トンから、2017年にはわずか500トンにまで減少しました。数十年にわたる政情不安と経済的打撃により、同国のコーヒー産業はほぼ壊滅しました。国家経済の崩壊に加え、高品質なコーヒーの収量低下も波及し、農家の経済的な収益は限られました。
世界有数のコーヒー生産・輸出国であるウガンダ(ルウェンゾリ山地)とコロンビア(カケタ県)の地域では、それぞれ気候変動と紛争の影響を受け、近年コーヒー栽培が縮小しています。ルウェンゾリ地域では、農家が木1本当たり毎年収穫するコーヒーチェリーは1.5キログラムで、全国平均の2キログラム、モデル農園の5キログラムを下回ります。一方、カケタ県では、約50年に及ぶ紛争により、多くの農家が土地を放棄し、この地域からコーヒーがほぼ姿を消しました。
さらに、専門家は、気候変動によってアラビカ種コーヒーの栽培に適した土地が2050年までに半減すると予測しており、コーヒーと人々の生計の両方が失われかねません。
新たな研修
政府、NGO、コーヒーブランド、消費者が協力して支援すれば、産業の再生は可能です。ネスプレッソのReviving Originsプログラムは、苦境にある地域経済をコーヒーがどう回復させられるかを示しています。ネスプレッソと現地パートナーが提供する研修や技術支援は、世界各地の農家が持続可能な農法を取り入れ、コーヒーの品質と生産性を高める助けとなってきました。パートナーには、ウガンダの新興農業ビジネス企業Agri Evolve、コロンビアのコロンビア全国コーヒー生産者連盟(FNC)、ジンバブエの国際非営利団体TechnoServeが含まれます。

この3地域だけでも、ネスプレッソは3,500人を超える農家と協働しています。Reviving Originsプログラムは、コーヒー生産国における当社の持続可能な調達モデルであるネスプレッソAAA Sustainable Quality™プログラムの重要な一部です。このプログラムには、世界各地の11万人を超える農家が参加しています。
こうした取り組みにより、これらの地域の高品質なコーヒーが世界で流通する可能性が高まります。研修と教育によって農家は高品質なコーヒーの収量を増やすことができ、毎年収入が増加し、地域経済が活性化します。その結果、農家はコーヒーにプレミアム価格を付け、生活の質を高められます。さらに、こうした支援は高品質なコーヒーの市場拡大にも役立ち、持続的な成長と成功に向けた長期的な機会を生み出します。
ジンバブエのムタサ地区でコーヒーを栽培するジェスカ・カンガイさんにとって、ネスプレッソAAA Sustainable Quality™プログラムへの参加により、5人の子どもを学校に通わせられるようになり、家族の食料を確保するための牛1頭とヤギ数頭も購入できました。同地域の別の農家、ザカリア・ムクウィンヤさんは、自宅の敷地を広げ、農場の灌漑を改善し、車を購入する計画を立てています。

こうした支援は、ほかの面でも明確な成果を上げています。ネスプレッソのデータによると、2018年から2019年にかけて、高品質なコーヒーの生産量はジンバブエのマニカランド州で9%、コロンビアのカケタ県で10%増加しました。
新たな解決策
ルウェンゾリでは、この地域に自生するアラビカ種の品質の可能性を引き出すため、自然乾燥式の伝統的かつ持続可能な未洗浄アラビカの製法を再構築し、農家を支援してきました。この製法はDRUGAR(Dried Uganda Arabica)として知られています。
従来、DRUGARコーヒーは品質が低いと見なされ、農家は熟した豆と未熟な豆を一緒に収穫し、地域の仲買業者に販売していました。市場インフラが整っていなかったため、農家は作物をすべて安値で売らざるを得ないことが多く、小規模農地に再投資できませんでした。
Reviving Originsプログラムの一環として、ネスプレッソはウガンダのパートナーであるAgri Evolve、Kyagalanyi、持続可能な貿易イニシアチブ(IDH)と協力し、解決策を実施してきました。たとえば、農家の乾燥・加工能力を高めるコーヒーステーションの設置や、コーヒーと在来樹種の苗木を農家に再配布する苗木園の設立です。これにより農家は作物の品質を高め、生物多様性を向上させ、土壌浸食を抑制できます。こうしたステーションの設置により、ブソンゴレ北部とブコンゾ東部に新たなサプライチェーンが生まれ、コーヒー農園の生産性と品質向上につながる可能性があります。
「農家に今日最良の農法と適切なインフラを提供することで、産業と地域社会に新たな活力を吹き込み、重要な経済発展を促すことができます。」
ギヨーム・ル・カンフ、ネスレ ネスプレッソS.A. CEO
すでに大きな成果が表れています。ウガンダのルウェンゾリ山地でコーヒーを栽培し、ネスプレッソAAA Sustainable Quality™プログラムに参加するジョセフ・キリンブワさんは、次のように話します。「研修を受けてから、コーヒーの摘み方を変えました。その結果、品質の良いコーヒーが得られ、収入も増えました。収穫方法を改善したことで、家を建て始めるだけの収入を得ることができました。」

今後の展望
インフラの大幅な変更や、長年続いてきた慣行の見直しは簡単でも単純でもありません。しかし、コーヒー産業の再生への投資が、苦境にある地域の今日の課題への対処だけでなく、将来の成長にも役立つことは明らかです。
私たちは力を合わせ、脆弱な地域社会がコーヒーの大きな可能性を引き出せるよう支援できますし、そうすべきです。地域経済と持続可能な生計を回復させながら、世界でも特に希少なブレンドの未来を守るのです。たとえば、ネスプレッソは、当社のReviving Originsプログラムを通じて、成果を生み出すため、5年間(2019~2023年)で1,000万スイスフランを投資しています。
さらにできることはあります。私たちは、ネスプレッソの支援と、現地の専門パートナーによる協力の双方が役立つ新たな国やコーヒー生産地域を常に探しています。農家に今日最良の農法と適切なインフラを提供することで、産業と地域社会に新たな活力を吹き込み、重要な経済発展を促すことができます。
コーヒーなしで一日を始めることなど想像できない人は多いでしょう。しかし、コーヒーの未来と、それを生産する人々を大切に思うなら、農家が新たな機会をつかみ、新しい潮流に乗り、地域社会に永続的な安定をもたらせるよう支援しなければなりません。


