GCC諸国は食料の85%を輸入――イノベーションで食料安全保障を強化する取り組み

A 400-hectare wheat farm in the desert in Sharjah, United Arab Emirates.
A 400-hectare wheat farm in the desert in Sharjah, United Arab Emirates.Image: Reuters/Rula Rouhana
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  • 湾岸協力会議(GCC)諸国は食料の85%を輸入しており、サプライチェーンの混乱に対して脆弱だ。

  • 食料安全保障と持続可能性への投資は、湾岸経済に305億ドルをもたらす可能性がある。

  • 政府の取り組み、官民連携、テクノロジーやイノベーション、起業家の挑戦を支援することが、GCCの食料安全保障に向けた多角的な戦略を形づくる。

世界でも食料安全保障が高い国々である一方、湾岸協力会議(GCC)諸国は食料の最大85%を輸入している。2022年世界食料安全保障指数では、相対的な豊かさと戦略的な輸入政策を背景に、GCC加盟6カ国――バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)――すべてが食料安全保障の上位50カ国に入った。しかし、各国は食料安全保障のジレンマに直面している。食料の大半を輸入に頼っているためだ。米や穀類などの主食に加え、一定程度、肉や野菜も輸入している。

世界のサプライチェーンの混乱が続き、湾岸地域にも影響が及ぶなか、この地域は水不足、耕作可能な土地の制約、気温上昇に対処しながら、国内の食料生産に目を向けなければならない。GCC諸国は意欲的な国内生産戦略を通じて、こうした課題を機会へと変えつつある。輸入への依存を減らし、農業テクノロジー分野で数千人分の雇用を生み出している。

食料安全保障に向けた投資と連携

GCC諸国の政府は、国内および地域内の食料供給を増やし、海外の食料供給源への依存を減らすため、迅速に行動している。新型コロナウイルス感染症のパンデミック時には、サプライチェーンを強化するため、農家、労働者、農業関連企業に対する緊急措置を講じた。しかし、この地域では、将来の混乱に備えて食料供給を守るため、長期的で持続可能な措置によって取り組みを強化する必要性が認識されている。

その中核となるのが、新たに策定されたGCC共通の地域食料安全保障戦略だ。食料安全保障と持続可能性を実現する農業、畜産、水産プロジェクトを開発し、湾岸経済に約305億ドルをもたらすことを目指す。GCC諸国全体での食料テクノロジーへの38億ドルの投資が、これを後押しする。農業・漁業部門は現在、国内総生産の1.8%を占め、湾岸地域の農業・畜産分野の企業数は20%増加した。

一方、GCC諸国の政府は民間部門との連携も進めている。政府の取り組みと成果を上げる官民連携プロジェクトが、農業、食品産業、関連部門にさらなる価値をもたらす。例えばサウジアラビアは、2030年までに国内11カ所の「クラスター」で食品加工の85%を国内化することを目指す。サウジアラビアの公共投資基金(PIF)も民間部門と積極的に協力しており、米国の農業企業エアロファームズと合弁事業を設立する契約を締結した。中東・北アフリカ各地で屋内垂直農場を建設、運営する計画だ。

オマーンでは42億ドルを投じてサハム農業都市を建設中だ。65平方キロメートルの敷地は農業と都市開発に充てられ、地域の農家3万人を支援し、年間2万5,000人分の食料を供給する。

2010年、バーレーン王国は農業開発国家イニシアチブ(NIAD)を立ち上げた。その目的の一つは、持続可能な農業開発に向けて、官民両部門の取り組みと投資を一つにまとめることだ。そのために農業研修・啓発プログラムを実施し、農業データベース「Agro BH」を開発した。データを一元管理し、投資を促進するとともに、バーレーンの農業部門における研究開発を支援する。

農家が気候変動に配慮した農業に投資するのを支援する4つの方法
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農業テクノロジーと湾岸地域の食の未来

テクノロジーとイノベーションは農業でますます大きな役割を果たしており、持続可能な食料供給に不可欠だ。2050年までに世界人口は100億人に達すると予測されている。台頭するフードテックの6つの主要トレンドが、フランスを拠点とするDigital Food Labによって特定された。これには、強靭な農場、持続可能なタンパク質、スマートなサプライチェーン、食品の自動化が含まれる。

GCC地域では農業テクノロジーへの投資が拡大している。ドバイのFood Tech Valleyは、UAEの食料生産を3倍にし、農業の強靭性を高める取り組みの一環として、クリーンでテクノロジーを活用した食品・農産物を育成するために設計されたテクノロジー拠点だ。2024年にはReFarmと契約を結び、廃棄物を価値に変えるハイテク巨大農場を建設することになった。施設では、敷地内で食品廃棄物をリサイクルしながら、年間300万キログラムを超える農産物を生産できる。2024年に着工し、2025年の稼働を目指す。スマートなAI駆動型垂直農業技術を用い、わずか8万平方メートル強の敷地で、UAEの食料輸入の1%を代替できる可能性がある。

バーレーンでは、エダマの戦略的パートナーであるBadia Farmsが、5万平方メートルの土地を借り受け、先進的な水耕栽培技術を用いて新鮮な果物や野菜を生産する。オマーンのサハム農業都市も、先進的な自動化農業技術を活用する。水耕栽培や霧耕栽培、灌漑、冷却システム、日よけなどを取り入れ、暑い気候でも強靭な農業を支える。

GCCのその他のフードテックの取り組みとして、カタールは代替タンパク質の持続可能な技術に多額を投じており、昆虫養殖から培養肉の研究・生産まで幅広く取り組んでいる。また、サウジアラビアの新たなイノベーション都市NEOMは、2030年までに持続可能な食料を60万メートルトン生産することを目指す。同市は、自動化やロボット工学などの革新的な農業技術の実証の場であり、農業テクノロジーの加速拠点でもある。果物や野菜、代替肉、乳製品の生産に加え、水産養殖や穀物栽培を進めることで、サウジアラビアの食料自給を後押しする。

農業分野の起業家を支援

農業テクノロジーとイノベーションの発展には、活気ある起業家コミュニティが必要だ。Tracxnによると、現在GCCには食品・農業テクノロジーのスタートアップが1,301社ある。

GCC諸国は、このエコシステムを支えるプログラムやプロジェクトを整備してきた。バーレーンでは、NIADがハマド国王農業開発賞を設立した。一方、起業家や企業を支援するTamkeenは、農業部門の成長に向けて民間部門向けプログラムを開発した。特別プロジェクトや戦略的パートナーシップなどが含まれる。

UAEでは、気候変動・環境省が食品・農業起業家プログラムを開始した。このプログラムにより、若手農家や農業起業家は、持続可能な農業・畜産プロジェクトの運営に関する研修を受け、民間部門の戦略的パートナーとつながることができる。同様に、エミレーツ開発銀行(EDB)はAGRIXアクセラレーターを開始した。小規模農家の力を高め、先進的な農業技術、戦略的な事業知見、持続可能な農法へのアクセスを提供する。

これらの取り組みは、資金援助、技術革新の促進、政策改革の実施を通じて、GCC地域に持続可能で強靭な農業エコシステムを築き、同地域の農業部門を総合的に強化することを目指している。

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