世界の食料システムは、物価の上昇、不安定な気象パターン、深刻化するサプライチェーンの混乱により、圧力が強まっています。
気候変動の影響が深刻化するなか、農業の変動がインフレを招き、生計に影響を及ぼし、金融市場にも波及しています。
世界経済フォーラムの「食料システム変革に向けた資金調達ソリューションのプレイブック」は、金融機関が食料システムの変革にどのように資金を供給できるかを示しています。
食料価格の上昇、ますます不安定になる気象パターン、深刻化するサプライチェーンの混乱によって、食料システムが圧力の高まりに直面し、金融リスクも広がっているという事実を、もはや無視できません。
気候変動の影響がより頻繁かつ深刻になるにつれ、農業の変動がインフレを招き、生計に影響を及ぼし、金融市場にも波及しています。
世界のGDPの10%を占め、雇用の40%を生み出す食料システムは、気候ショックに対して非常に脆弱です。この分野はすでに、世界の森林減少の90%と世界の温室効果ガス排出量の30%を占める一方、気候関連の混乱による被害も不釣り合いに大きく受けています。
異常気象は現在、農業総生産の5%の損失をもたらしており、気候変動に伴いこの割合は上昇すると予想されています。世界人口は2050年までに20億人増加すると予測され、食料システムへの圧力がさらに強まるため、これは特に懸念されます。
問題の規模と、金融機関および市場への影響を過小評価してはなりません。
食料システムは気候ショックに対して特に脆弱
食料システムは依然として気候ショックに非常に脆弱であり、その結果、金融機関はポートフォリオ全体にわたって重大なリスクにさらされています。食料システムの気候脆弱性は金融リスクにつながります。融資の履行状況や資産価値、保険金請求に直接影響を及ぼし得るためです。
さらに、食料システムの関係者がサプライチェーンの混乱や価格ショック、生産性の低下に直面すると、環境の変動性が金融リスクに影響を及ぼすことがあります。そのため、食料分野にエクスポージャーを持つ資金提供者には、顧客が気候や事業運営上のショックに対するレジリエンスを高められるよう支援する強い利害があります。これは長期的な信用力の向上にもつながります。
食料システムへの資金供給には、この分野の複雑さ、分断性、リスク特性に起因する特有の課題があります。金融機関は、的を絞った融資戦略や投資方針を通じて、重要な推進役を担うことができます。
運転資金ソリューション、サステナビリティ連動型金融商品、移行金融などを通じた融資は、バリューチェーン全体の成果に影響を与える重要な手段です。一方、食料システムは非常に多様であり、資金は農場への直接融資から、下流へ資金を供給する企業向け融資まで、複数の段階で活用できます。
食料バリューチェーン全体に効果をもたらす、状況に応じた資金調達の選択肢
あらゆる状況に通用する単一のアプローチはありません。しかし、この複雑さは、システム全体に効果をもたらすよう調整可能な、幅広い革新的な資金調達手法や仕組みの可能性も広げます。世界経済フォーラムのブリーフィングペーパー、「食料を金融機関のバランスシートに載せる」は、ベイン・アンド・カンパニーとの協力により作成され、投資障壁を引き下げ、新たな民間資本を呼び込む6種類の革新的な資金調達モデルを詳しく掘り下げています。
明らかになったのは、この複雑さに対応するため、食料関連企業を介した間接融資から、ブレンデッド・ファイナンスの仕組み、農家や農業関連企業への直接支援まで、多様な資金調達モデルが次々と登場していることです。
上記の枠組みは、的を絞ったリスク低減策、触媒的資本、バリューチェーンの連携によって、投資に対する構造的な障壁を克服できることを示す、いくつかのモデルを紹介しています。
銀行などの金融機関は、リスクが高いと見なされる可能性はあるものの、農家や農業関連企業に対して直接バランスシート・ファイナンスを提供できます。例えば、次のような方法があります。
農家が低炭素型の農業慣行を導入するよう促す直接融資商品は、直接融資の好例です。例えば、イタウBBAは、農家がオフシーズンに被覆作物を使用し、不耕起農法を実践することを約束した場合、優遇金利を適用しています。
農家への直接融資は、アセリ・アフリカが実施しているように、触媒的資本によってリスクを低減することもできます。2025年3月時点で、アセリ・アフリカは寄付者資金による3,100万ドルのインセンティブを提供し、3,500件の融資を通じて3億ドルの民間資本を動員(レバレッジ倍率9.4倍)し、150万人の小規模農家に届けています。
低リスクでの融資を望む民間資本の提供者は、食料関連企業に融資し(企業はその資金をサプライチェーンに提供)、あるいは食料関連企業を活用して農家や農業関連企業への融資のリスクを低減できます。例を挙げます。
資金提供者は、例えばサステナビリティ連動型融資を発行し、食料・農業企業であるCOFCOインターナショナルに融資できます。企業は環境管理や人権などのパフォーマンス目標を達成する責任を負います。COFCOの信用力がより高いことで、農家への直接融資より有利な融資条件が可能になります。
インテーザ・サンパオロは一方で、「Sviluppo Filiereモデル」において企業のバリューチェーンを活用し、融資を拡大するとともにリスクを低減しました。
食料システム変革への資金供給プレイブック
金融機関が食料システムの変革に資金を供給する方法について、さらに事例を紹介するため、私たちは「食料システム変革に向けた資金調達ソリューションのプレイブック」を作成しました。このプレイブックは、気候に配慮した投資を支援し、世界的な議論を促すため、実践例と革新的なモデルをまとめています。
多様な地域や農産物に適用できる事例を基に、食料生産の変革を支える資金提供者の役割を紹介しています。ファーストロス保証、オフテイク契約、生態系サービスの収益化などの手段は、すでに大規模な資金を呼び込み、よりレジリエンスが高く投資可能な食料システムを築くために活用されています。
食料システムを大規模に変革するには、資本だけでは不十分であり、公共部門、民間部門、慈善活動の担い手の間で意図的な連携が求められます。
ファースト・ムーバーズ・コアリション・フォー・フード(FMC for Food)は、需要を集約する力を活用し、農産物の持続可能でレジリエンスの高い生産方法や技術の大規模導入を加速させることを目指しています。需要主導型のこの連合は、低排出の農産物・食品のリスクを低減し、幅広い公共投資と民間投資を呼び込むことを意図しています。また、農家をはじめ食料バリューチェーンに関わる人々が、生産性と持続可能性を高める慣行へ移行するための市場の信頼感を醸成します。
農業バリューチェーンは複雑で分断されているため、単独で資金ギャップに対処できる機関はありません。効果的な官民連携やマルチステークホルダー・プラットフォームは、多様な利害の調整、能力の不足を補うこと、農家や農業関連企業を支えるために必要な商業資本から触媒的資本まで、幅広い資本の動員に重要な役割を果たします。
こうした連携は、影響力の大きいプロジェクトの案件群を整え、技術的な専門知識を集約し、目的に適した金融手段を導入することで、投資を円滑化できます。取引コストの削減、デューデリジェンスの標準化、共同ガバナンスの促進を通じて、資本調整の仕組みは大規模な資金動員を後押しし、より持続可能で包摂的かつレジリエンスの高い食料システムへの移行を加速できます。
金融機関が次に取るべき行動
金融機関は、新たな市場を開拓し、収益源を多様化し、ポートフォリオを将来の変化に備えさせるうえで、独自の立場にあります。しかし、商業的に持続可能なインパクトを拡大するには、資本だけでは足りません。明確な目標、新たな能力、大胆で戦略的な決断を受け入れる姿勢が必要です。すべてに通用するプレイブックはありません。投資の重点は、各機関の強み、リスク許容度、持続可能性への意欲に合わせる必要があります。
今後は、触媒的資本の提供者との共同投資から、農家や農業食品企業との長期的な関係構築まで、バリューチェーン全体で戦略的パートナーシップを築くことが求められます。
オフテイク契約やサステナビリティ連動型の調達など、需要のシグナルに支えられた革新的な資金調達の仕組みは、投資リスクの低減と画期的な解決策の創出に役立ちます。
世界の金融システムの変化をリーダーが理解できるよう、フォーラムが果たす役割
金融・通貨システムセンターは、持続可能性とレジリエンスからイノベーション、デジタル化に至るまで、世界の金融システム全体にわたる変革の意味を捉えるため、リーダーを招集します。
協力と知見の共有を促すことで、同センターはパートナーが金融システムを長期的な経済の安定と共通の繁栄に沿わせることを支援します。
同時に、金融機関は新たなデータセットや信頼性の高い気候影響データを活用して信用リスク評価を見直し、将来を見据えた意思決定に役立てる必要があります。透明性と比較可能性を確保するには、当初から明確な報告基準と手法を定めることが重要です。
最終的に、意欲的な目標を設定し、エコシステム全体で連携し、イノベーションを推進することで、金融機関は食料システムに体系的な変化をもたらし、株主と社会双方に長期的な価値を生み出すことができます。
したがって、持続可能性とレジリエンスに向けた食料システムの変革への投資は、金融機関にとって最優先課題であるべきです。金融機関がどのような商品を提供し、どのような金融モデルを構築するかは、食料システムの変革を促進する大きな原動力となり得ます。
本稿の作成に貢献した、ベイン・アンド・カンパニーの金融サービスにおけるサステナビリティ&責任部門のEMEA実践責任者兼パートナーであるクリスチャン・グラーフ氏、同社の経済開発部門グローバル責任者であり、EMEAの金融サービスおよびプライベートエクイティ部門のリーダーを務めるパートナーのイウォナ・ステクリク氏、ならびにサステナビリティ&責任部門の中核メンバーであるシニアマネージャーのジュリア・ボルツ氏に感謝します。




