世界人口の増加に伴い世界の食料需要も拡大していますが、食品ロスと食品廃棄は依然として大きな課題です。
食品ロスを防ぐには、循環型の食料システムへの移行が必要であり、トレーサビリティはこの変革を実現する重要な要素です。
「循環型経済に向けたトレーサビリティ・チャレンジ」の受賞者2社による実証プロジェクトは、トレーサビリティとテクノロジーが、生産現場から食卓までの食品管理をどう変革できるかを示しています。
世界人口が増えるにつれて食料需要も高まり、食品ロスと食品廃棄は依然として大きな課題です。実際、世界の食料のおよそ13%は収穫から小売までの間に失われています。消費者に届く前の段階でのことです。
果物や野菜など、傷みやすく温度変化に敏感な商品では、この割合はさらに高いと考えられます。これらの商品は、特に腐敗や損傷を受けやすいためです。食品の品質は、生産現場から店頭までの価値を左右する重要な要因であり、サプライチェーン全体を通じて品質を保つことが不可欠です。
食品ロスを防ぐには、廃棄が起きてから対応するのではなく、事前に最小限に抑える、より効率的な循環型の食料システムへの移行が必要です。トレーサビリティ、すなわちバリューチェーンのあらゆる段階で食品や原材料を追跡する能力は、この変革を実現する重要な要素です。
現在、非破壊検査、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)などの新興技術が、トレーサビリティの向上を後押ししています。リアルタイムのデータを収集し、実行可能な知見を生み出すことで、これらのツールは食品の状態を監視し、非効率な点を迅速に特定し、高度な分析によって腐敗の発生を予測するのに役立ちます。
トレーサビリティとテクノロジーの融合により、生産現場から食卓までの食品管理が変わりつつあります。サプライチェーンのあらゆる関係者に、より高い可視性と、より的確な意思決定を支えるツールを提供することで、食品ロスをより効果的に防ぎ、より強靱で持続可能な食料システムへの移行を加速できます。
AIを活用した食品品質検査
従来、食品の品質評価は主に主観的で、労働集約的であり、しばしば破壊検査を伴うものでした。しかし、データに基づく近年の非破壊検査技術の革新により、ハイパースペクトル画像分光法や電子センサーなどを用いて、食品の品質を迅速かつ確実に、客観的に測定できるようになりました。
こうした技術で生成されたデータをAIで分析すれば、品質評価の精度と適用規模が向上し、賞味期間の予測も改善します。これにより食品の安全性が高まり、廃棄が減り、サプライチェーンの効率が最適化されます。
農業テクノロジーのスタートアップ企業Neolithicsは、人工知能(AI)を活用した非破壊技術で、生鮮農産物の品質管理を自動化しています。同社の食品品質検査技術は、ハイパースペクトル光学センシングと通常のカラー画像を組み合わせています。栄養価、ブリックス値による甘さ、乾物率、成熟度、異常、成分の分布など、内部と外部の特性を分析します。統合ソフトウェアにより、より正確な等級判定や賞味期間の予測、包括的なデータ管理が可能になります。
品質管理プロセスをデジタル化することで、Neolithicsは手作業による検査時間を最大90%削減し、精度を15%超向上させます。このイノベーションにより、在庫ロスと廃棄物管理コストも約65%削減され、生鮮農産物のサプライチェーンにおける効率性と持続可能性に大きな効果をもたらします。
コールドチェーン物流におけるIoTとAIを活用した物流モニタリング
食品品質の検査に加え、コールドチェーン物流におけるIoTやAIなどのイノベーションも、関係者が食品の品質を一定に保ち、食品ロスを減らすのに役立っています。IoT技術は、輸送中の温度変動、湿度、エチレン濃度など、製品の品質と賞味期間に直接影響する重要な要素を追跡し、輸送状況を監視するために使われます。
これらの技術がもたらすリアルタイムの可視性によって、サプライチェーン管理の機動性と対応力が高まります。輸送ルートや保管条件を柔軟に調整し、鮮度を保ちながら廃棄を減らせます。
テクノロジー系スタートアップ企業のDockflowは、地理的位置情報と、輸送中の温度や湿度を監視するIoTセンサーからデータを集約し、コンテナをリアルタイムで追跡する物流支援プラットフォームを提供しています。
非効率なコールドチェーン物流は相当量の食品ロスを招くため、同社のAI搭載システムは温度の逸脱を即時に通知し、迅速な是正措置を可能にします。シームレスでスマートかつ持続可能な物流エコシステムの構築を目指すDockflowは、意思決定とサプライチェーンの対応力を高め、パートナーによる食品ロスの防止を支援しています。
生鮮農産物のサプライチェーンにおける食品品質トレーサビリティの実証プロジェクト
生鮮農産物は傷みやすいため、サプライチェーンで特にロスが生じやすいものです。国際生鮮農産物協会(IFPA)の最近のサプライチェーン・プロジェクトによると、関係者の78%が、非効率で透明性に欠けるデータの流れによって食品ロスが大きな課題になっていると回答しました。この結果は、連携とシームレスなデータ交換の必要性を浮き彫りにしています。
こうした課題に対処するため、Circulars Accelerator Networkは、アクセンチュア、UpLink、世界経済フォーラムのパートナーシップとして、「循環型経済に向けたトレーサビリティ・チャレンジ」の受賞者であるNeolithicsおよびDockflowと協力し、食品品質のトレーサビリティ向上とサプライチェーン全体でのリアルタイムのデータ共有を目指す実証プロジェクトを実施しました。
この実証では、NeolithicsのAI搭載検査と、Dockflowのリアルタイムのコンテナ追跡およびIoTモニタリング(温度、湿度など)を組み合わせ、データをDockflowの共有プラットフォームに統合して可視化しました。目的は、アボカドの品質監視を強化し、商品減耗と食品ロスを減らすことでした。ここで商品減耗とは、小売向けに供給できるアボカドの量または品質の低下を指し、食品ロスとは、堆肥化または嫌気性消化に回されるアボカドを指します。
専門家諮問委員会の指導のもと、国際生鮮農産物協会、世界資源研究所、Avery Dennison、消費財フォーラム、Sensitech、Foodcareplus、Food Waste Free Unitedなどが参加し、世界的な生鮮果物サプライヤーであるWestfalia FruitとそのサプライヤーであるGranot Freshのアボカド・サプライチェーンで技術が試されました。
前年の1週間分の出荷と比較し、アボカドのコンテナ1個のみを追跡した初期段階の試験でしたが、実証では有望な結果が得られました。検査の自動化とデジタル化により、アボカドを手作業で切り開く必要性が大幅に減り、商品減耗はGranotで最大100%、Westfaliaで67%減少しました。また、Westfaliaでは検査時間が15%短縮しました。全体として、Westfaliaでは食品ロスとそれに伴う温室効果ガス(GHG)排出量が17%減少しました。食品ロスの減少により、アボカドがより多く小売業者に届き、収益も1.15%増加しました。
ただし、これらの結果はコンテナ1個のみに当てはまり、広く一般化できるものではありません。ばらつきを考慮するには、複数のコンテナを対象とした、より長期の試験が必要です。それでも、この調査結果は、AIとIoTを活用した技術が食品ロスを減らし、品質管理を改善する可能性を示しています。
食品ロスの削減にはトレーサビリティと対応力の高いサプライチェーン管理が鍵
食品ロスはサプライチェーンにおける根強い課題であり、特に傷みやすい製品では深刻です。この課題への対応には、より意欲的でシステム全体を見据えたアプローチが必要です。個別に分断された取り組みを越え、効率を高め、より迅速に対応できるサプライチェーン管理を可能にする、統合的でデータに基づく戦略へ移行することを意味します。
トレーサビリティとデジタル技術はすでに、関係者が食品とその品質をより効果的に監視するのに役立っています。こうした解決策を拡大し、効果を最大化するには、生産者、小売業者、物流事業者、技術イノベーターの間で業界を越えた連携が不可欠です。
ロスや廃棄を事前に防ぐ食料システムへの移行は、バリューチェーンにおける緊密なパートナーシップとシームレスなデータ交換にかかっています。それにより、問題への迅速な対応と是正措置が可能になり、製品価値を維持できます。
食品品質トレーサビリティの実証プロジェクトを受けて、The Circulars Acceleration Networkは、食品ロス防止プレイブックを発表しました。トレーサビリティ、デジタルソリューション、新興技術が食品ロスと商品減耗をどう減らせるかについて重要な知見をまとめるとともに、業界が同様の取り組みを設計できるよう、実証から得た重要な学びを段階ごとに紹介しています。
Food Innovators Networkは、世界経済フォーラムのFood Innovation Hubs Global Initiativeの一環として、専門家、起業家、農業従事者を含む世界各地の200人を超えるイノベーターをつないでいます。ネットワーキングと知識交換のための活気ある場を育み、現在は食料システムのタンパク質イノベーションとデータ対応力に重点を置いています。



