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フードバンクは新型コロナウイルス感染症の流行前からデジタル技術の活用を進めていたが、パンデミックによってその取り組みを加速させた。
より高度なデータ分析を活用することで、食料の需要と変化する供給源をより的確に結びつけられる。
また、より人を中心に据えた方法で活動できるようになる。周縁化された人々と関わる組織にとって、これは特に重要だ。
デジタル変革は、エネルギー利用の改善と自動化を通じて、グレーター・ボストン・フードバンクのカーボンフットプリント削減にも役立っている。
顧客のニーズに応えるため、自らをデジタル企業へと変革しているのは企業だけではない。新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起きたとき、フードバンクはデジタル変革の取り組みを加速させ、より多くの困窮する人々に、より多くの食料をより迅速に届けようとした。
その一つがグレーター・ボストン・フードバンク(GBFB)だ。パンデミックの影響で、2020年の食料配布量は前年より56%増加したと推計している。危機に関連する困難は和らぎ始めたものの、マサチューセッツ州東部のGBFBのサービス地域では、慈善による食料支援への需要が依然として大きい。これを受け、フードバンクの幹部は、テクノロジーを個別に導入してきた従来のやり方を見直した。代わりに「プロジェクト・エベレスト」と名付けた約3年間、500万ドルの計画を初期段階から進め、組織全体で一体となってデジタルを優先する組織を目指している。
目標は、デジタル技術を最適化してフードバンクの業務効率を高めるとともに、主要な4つのステークホルダーグループに、より良い体験と支援を提供することだ。なかでも重要なのは、十分な食料を得られない人々と、食料を届けるためにGBFBが協力する約600の食料配布パートナーである。GBFBは、デジタルを優先するアプローチによって、寄付者との関係も改善し、職員を支援できると期待している。
「最終的には、食事の不足を解消し、人々を食料不安の状態から食料が確保された状態へ移行させるという、私たちの戦略計画にすべてつながっています」と、GBFBの最高経営責任者(CEO)であるキャサリン・ダマート氏は述べた。
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危機によって深刻化した課題
フードバンクはデジタル化への歩みを始めていたが、他の多くの組織と同様、パンデミックの最中に、デジタル変革の取り組みを加速させた。主な動機は、食料支援への需要増に対応することと、対面でのやり取りを制限する厳格な安全対策を守ることだった。
フードバンクは、より高度なデータ分析を活用し、政府の食料箱配布プログラムなども含む、変化する食料供給源と需要を結びつけた。また、倉庫業務の改善や、医療や求職支援など食料支援以外のサービスを提供するために連携する地域団体のネットワーク拡大を目的に、新しいテクノロジーを導入した。なかには、地域の経済状況の変化が食料需要に及ぼす影響をより正確に予測するため、さらに高度な予測モデルを取り入れたところもある。
GBFBの幹部によると、同組織はデジタル技術の導入において早くから取り組んできた。老朽化したITシステムはすでに新しいシステムに置き換えていた。4年前にはNetSuiteの電子商取引プラットフォームを導入し、食料配布パートナーから注文を受けるとともに、寄贈品を補うために組織が購入する食料を発注できるようにした。さらに、寄付者やボランティアとのやり取りを管理し、フードパントリーが配送を予約できるよう、Salesforceの顧客関係管理システムに移行した。また、約100人いる事務職員の大半にはノートパソコンが支給されていた。
パンデミックが発生すると、GBFBは食料配布パートナーが、車に乗ったままでの受け取りやドライブスルー方式のイベントなど、非接触型配送の方法で食料を配布できるよう支援した。ノートパソコンのおかげで、事務職員はすぐにリモートワークへ移行できた。
しかし危機によって、不備が明らかになった。GBFBは、各部門や個別の業務プロセス向けにアプリケーションを追加していたが、全体をどのように連携させるべきかを考慮していなかった。他のアプリケーションも、すぐに使える、費用が安い、あるいは誰かが望んだからという理由で導入されていた。その結果、ある部門には「あらゆる便利な機能がそろっていた」一方で、手作業に頼り続ける部門もあったとダマート氏は言う。「組織横断的な知識基盤がありませんでした。部門同士が非常に分断されていたのです」と同氏は述べた。
システムが寄せ集め状態で、データの統一的な枠組みもなかったため、GBFBのIT部門にはプロジェクトの優先順位を決める方法がなかった。これまでシステムの刷新に取り組んできたにもかかわらず、フードバンクは最終的に支援すべき人々、すなわち困窮する人々のニーズに応えきれないことが多かった。食料不安を抱える人々や食料配布を利用する人々を対象にした調査では、訪問先の場所や開所時間が分からず、食料を受け取れないことがあると分かった。また、希望する種類の食料を受け取れなかったり、配布担当者と十分に意思疎通できるほど英語を話せなかったりする場合もあった。配布団体から求められる個人情報を提供することに不安を感じる人もいた。
食料配布パートナーにも課題があった。たとえば、食料受給者のデータをGBFBに送る必要がある一方で、その情報がどのように使われるのか、見返りにどのようなメリットが得られるのか分からなかった。
顧客体験の向上に向けたデジタル導入
パンデミックによって生じた前例のない食料需要の急増に十分対応できているとGBFBの幹部が感じた後、将来について考え始めた。それは、既存のシステムを「良い」から「優れた」ものへと高める方法を見つけることを意味した。効率の向上に加え、食料不安を抱える人々、フードパントリーや地域機関、寄付者が組織と関わる際の体験を改善することが目標だった。
顧客体験の改善は、GBFBが活動する190の町や市のすべての人が、健康的な食事を1日3回とるのに十分な質の高い食料を安定して入手できるようにするという戦略ビジョンに沿ったものだ(図表1)。
この取り組みにおいて、GBFBは、顧客体験をより人中心のものに見直してきた他の公的機関や民間組織に続いている。顧客体験を創出することは、新たな消費者ニーズや期待に応えるものであり、パンデミック後の今、あらゆる組織の成功にとって重要になっている。Amazonなどの企業によって消費者の期待が急速に高まるなか、顧客体験と人間中心のデザインは大きな差別化要因となった。McKinseyの調査によれば、優れたデザインは、優れた業績と密接に結びついている。フードバンクのように物理的な商品を提供する組織でも、デジタル製品やサービスを提供する組織でも、またその両方を提供する組織でも同様だ。
食料不安を抱える人々のように、資源を求めるかどうか、またどのように求めるかに影響するスティグマにしばしば直面する、周縁化された人々と関わる組織にとって、人を中心に据えた活動は特に重要だ。そのため、前向きで便利な顧客体験を提供すれば、食料不安を抱える人々が必要な支援を受けられる可能性が高まる。
GBFBはMcKinseyと協力し、既存のテクノロジー環境を見直してデジタル戦略計画を策定した。このプロセスの一環として、食料配布パートナーと食料不安を抱える人々を対象に調査を行った。運営、ITなどの各部門のGBFB職員にも聞き取りを実施した。職員は、デジタルを導入して業務を効率化すれば解消できる内部の課題を特定した。そうした改善は、最終的に、必要とする人々により多くの食料支援を届けるというプロジェクト・エベレストの使命を前進させる可能性がある。
変革チームは、サービスの質、コスト、リスクなど、組織のどの側面に影響するかに応じて課題を洗い出し、整理した。チームは、フードバンクがすでに持つ能力をどこで強化できるか、またどこで解決策を一から構築する必要があるかを含め、改善策を検討した。その後、短期、中期、長期の目標を定め、どのプロジェクトから着手するかを決めるため費用対効果を分析した(図表2)。
業務効率の向上に加え、デジタル変革の目標として、次のようなものが考えられた。
州全体の情報ハブやショッピングアプリなどの革新的な取り組みを通じて、食料支援や関連情報を人々がより簡単に得られるようにする。この取り組みの一環として、食料支援を受ける人々のニーズや視点を、顧客ジャーニー(人々が組織と関わるさまざまな経路)により多く反映させることを目指す。
食料配布パートナーとのコミュニケーションを改善する。これには、必要に応じてオンラインで担当者にすぐ相談できる注文プロセスや、フードパントリーが食料受給者から必要な情報を集めるためのチェックインツールが含まれる。
配布パートナー向けのコミュニケーションチャネルを設け、それぞれのニーズに合わせたリソースを共有して連携を強化する。
ステークホルダーとの関係や寄付プロセスの管理を改善する。
予測分析を活用し、フードバンクの食料品目構成を改善する。
デジタルによるチェックイン、予約、順序管理を活用し、GBFBの倉庫での受け取りをより迅速かつ簡単にする。
寄付の一連の手続きをデジタルで完結できる体験を創出する。
GBFB職員の反復作業や日々の業務を減らす。
アイデアを評価し、テクノロジーによってフードバンクの使命をより効率的に達成する方法を見極める「イノベーションラボ」を設ける。
GBFBは、組織のデジタル変革を統括するデジタル戦略担当副社長のポストを新設した。企業戦略とデジタル変革の経験を持つ、ソフトウェアアーキテクトから経営アドバイザーに転身したアンメシュ・ガンジー氏を採用した。「最終的な目標は、迅速に意思決定し、コストとリスクを下げることです」とガンジー氏は述べた。「もう一つの目標は継続的に改善することです」。そうすれば、ニーズの変化に応じてシステムを進化させられるという。
フードバンクのデジタル変革にかかる費用は、途方もなく感じられるかもしれない。500万ドルは、フードバンクが通常、3年間にリソース、テクノロジー、エンジニアリングに費やす額の2~3倍に相当する。しかし、費用は大きいものの、変更の多くは必ずしも難しいものではない。これまでフードバンクが取り組んでこなかった、新しい方法で働くことを必要とする段階にすぎないとダマート氏は述べた。そのため、変革の大きな部分を占めるのは、GBFB職員が変化に順応できるよう支援することになる。「最大の課題は、文化を変え、チームが異なるやり方で仕事をすることによる影響でしょう」と同氏は語った。
その他の革新的な取り組み
GBFBは、フードバンクとパートナー、そして最終的には困窮する人々との間にある、比喩的な距離を縮めることで、アクセスを拡大する計画だ。革新への意欲はさらに広がり、さまざまな外部パートナーと協力して新しいアイデアを試し、提供できる支援の幅を広げている。
6月初旬、GBFBはAmazonとの提携を発表した。Amazonは大型トレーラーと運転手を週1回無償で提供し、ボストンにあるフードバンクの117,000平方フィートの配送倉庫から、地域の約45の食料配布パートナーにサービスを提供するニューベッドフォードの中継拠点まで食料を運ぶ。GBFBの広報担当者によると、Amazonは期間をまだ特定せずに100万ポンドの食料を輸送することを約束している。
この夏、GBFBはマサチューセッツ工科大学と協力し、フードバンクの配送倉庫で倉庫消毒ロボットの試作品を試験した。同大学のコンピューター科学・人工知能研究所とAva Roboticsが開発したこのロボットシステムは、新型コロナウイルスに接触した可能性のある表面を消毒し、空気中に浮遊するウイルス粒子を除去すると、同研究所は説明している。
2020年2月、GBFBはメドフォードのミスティック・バレーYMCAと提携し、地域住民への支援と食料配布モデルの試験を目的に、ミスティック・コミュニティ・マーケットのフードパントリーを開設した。たとえばパンデミックの発生後、同施設は困窮する人々が新鮮な農産物、タンパク質食品、乳製品などを注文し、車に乗ったまま受け取れるモバイルアプリを導入した。これとは別に、GBFBはYMCAサウスコーストと提携してフル・プレート・プロジェクトを立ち上げ、資金を提供した。この食料拠点は、系列のYMCA 5支部にサービスを提供し、2021年に100万ポンドの食料を配布することを目指している。
GBFBはデジタル変革プロジェクトを活用し、エネルギー利用の改善、デジタル監視、自動化などを通じてカーボンフットプリントの削減に取り組んでいる。その一環として、燃料を節約するためにトラックのルートを最適化し、倉庫ではLEEDシルバー認証を維持している。
今後のステップ
GBFBは計画実施の初期段階にある。これまでのところ、組織はMcKinseyの提言と、変革プロジェクトの初期調査・評価段階で得られた知見を検討している。取り組みを開始するにあたり、フードバンクの幹部は、革新や実験に前向きな姿勢を保ちながら、データを基に変化の測定可能な効果を追跡していくと述べている。
「私たちは創造性を大切にしています」とダマート氏は述べた。「新しいことに挑戦する意欲があります。」





