AIとドローンがアジアの農業に変革をもたらす

Sayan Thongthep, 52, sets up his agriculture drone to spray pesticide in a rice farm in Ban Yai, Thailand.
Sayan Thongthep, 52, sets up his agriculture drone to spray pesticide in a rice farm in Ban Yai, Thailand.Image: Thomson Reuters Foundation/Rina Chandran
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  • アジア太平洋地域は農業技術、いわゆるアグリテックの市場として最も急速に成長している地域の一つで、技術コストの低下と労働力不足が導入を後押ししている。

  • この地域では、AIとビッグデータを活用したロボットやドローンが、農法の改善、作物の収量と収入の向上に役立っている。

  • しかし、アグリテックには雇用喪失から社会的不平等、データガバナンスへの懸念まで、リスクも伴う。

子どもの頃、マニット・ブンキウさんは、バンコク近郊の稲作農場を水牛で耕し、手作業で収穫する祖父母の姿を見ていた。両親の代にはトラクターや脱穀機が導入され、今では彼自身が機敏なドローンを使って田んぼに農薬を散布している。

米やラン、果樹を約40エーカー(16ヘクタール)の土地で栽培するマニットさんは、バンマイに暮らす。農業のデジタル化を目指すタイ政府のプログラムを通じ、最近ドローンを取得した地域企業の一員だ。

種まきや農薬・肥料の散布に使うドローンは、東南アジアのこの国で人気が高まっている。新型コロナウイルスのパンデミック中に労働者の移動が制限され、深刻化した労働力不足に同国が直面しているためだ。

「私たちにとって最大の課題は労働力です。人手を確保するのは難しく、費用もかかります」と、57人の会員が約400エーカーの農地を持つバンマイ・コミュニティ・ライスセンター農場の代表を務める56歳のマニットさんは語った。

「ドローンを使えば、人件費を節約できるだけでなく、より正確な作業ができます。作業も速く、安全です。薬剤にさらされずに済みますし、雨が少ないといった気候変動の影響にも、より容易に対処できます」と彼は話した。

バンマイの地域社会は、アジア太平洋地域の農業に起きている大きな変革の一端を担っている。同地域では人工知能(AI)とビッグデータを活用したスマートフォン、ロボット、ドローンが、農法の改善や作物の収量と収入の向上を支えている。

国連食糧農業機関(FAO)によると、データに基づく精密農業やその他のデジタルツールへの移行は、人口動態の変化、技術の進歩、そして気候変動によって促されている。

「こうした技術は、生物多様性を守り、炭素排出量を削減しながら、より少ない水、土地、投入資材、エネルギー、労働力でより多くを生産できるよう農家を支援します」と、FAOは今週開催された農業デジタル化に関する地域会議で、報告書の中で述べた。

「農家は収量を最適化し、大幅なコスト削減、効率の向上、収益性の改善を実現できます」と同機関は述べた。

タイのバンヤイで、農業のデジタル化を目的とした政府の制度を通じて受け取った農業用ドローンを、地元当局者とともに披露する農家のマニット・ブンキウさん。Image: トムソン・ロイター財団/リナ・チャンドラン

しかし、農業技術、いわゆるアグリテックには、雇用喪失から社会的不平等、データガバナンスへの懸念まで、リスクも伴う。専門家によると、こうした技術は費用がかかり、導入も難しい場合があり、とりわけ女性や高齢の農家にとって障壁となる。

「インドでは、政府が注目すべき、もっと差し迫った課題が数多くあります」と、持続可能で包括的な農業のための連合(Alliance for Sustainable and Holistic Agriculture)のナチケット・ウドゥパ氏は語った。

「私たちは、インドで大規模な農家の抗議活動を目にしてきました。最低支持価格や政府の支援不足といった問題をめぐるものです。ドローンは農家にとって最大の問題ではありません」と、同氏はトムソン・ロイター財団に語った。

より民主的に

世界的に、クラウドコンピューティングとAI技術の普及に伴い、さまざまな用途でビッグデータが活用されるようになった。その中には、農業も含まれ、灌漑コントローラーから、土壌、天候、作物の収量に関するデータを収集・分析するサービスまで、用途は幅広い。

アジア太平洋地域は、デジタル農業情報や市場、フィンテックソリューション、食品のトレーサビリティを実現するブロックチェーン技術の市場として、最も急速に成長している地域の一つだ。

FAOによると、アジアの小規模農家が主に利用しているのは、デジタル土壌検査キットや、天気予報を提供するアプリ・テキストベースのサービスといった低コストのツールに限られている。費用の壁、スキル不足、規制上のボトルネックがその理由だ。

女性も、技術へのアクセスにおいて、より多くの制約に直面している。

インドの平均的な農地の保有面積は2ヘクタール未満であり、機械化やデジタル化には向かないうえ、どちらも多くの農家にとって費用がかかるとウドゥパ氏は述べた。

インドでは、何らかの技術を利用する農家は約2,000万人にとどまり、国内の農家約5億人のごく一部だと、リアルタイムで作物を分析するAI搭載モバイルアプリを提供するDataVal Analyticsの共同創業者、M・ハリダス氏は語った。

タイのバンヤイにある稲作農場で、農薬を散布する農業用ドローン。Image: トムソン・ロイター財団/リナ・チャンドラン

「データによって農業はより民主的になります。小規模農家でさえ、AIや機械学習を利用して収量や収益を改善できます」と同氏は語った。

「最大の課題は、機器の不足、インターネット接続の不足、そして研修の不足です」と同氏は付け加えた。

農村部のインターネット接続を改善するため、FAOの「デジタル・ビレッジ」構想は、MicrosoftやIBMなどのテクノロジー企業と連携し、ネパール、バングラデシュ、フィジー、インドネシア、パプアニューギニア、ベトナムを含む世界1,000カ所で取り組みを進めている。

「この構想の目的は、技術を活用して農業、栄養、健康、市民の幸福を、特に農村部の人々のために向上させることです」と、FAOの食品安全・栄養担当上級職員、スリダール・ダルマプリ氏は語った。新型コロナウイルス感染症による混乱の後、これは特に重要だと指摘した。

「4Gサービスが拡大し、5Gサービスが展開されるなか、スマートフォンやデータ通信の費用低下が、小規模農家や家族経営農家を含め、デジタルツールの導入を加速させ、さらなる包摂を後押ししています」と同氏は付け加えた。

若者を引きつける

規制上の障壁や農地の細分化があるにもかかわらず、FAOによると、アジア太平洋地域は農業用ドローンの市場として最も急速に成長している。地元企業の参入、価格の低下、労働コストの上昇が成長を後押ししている。

この地域の政府は、衛星画像と組み合わせてドローンを活用し、天気予報、災害対策、農作物保険に役立てている。また、主に米など、食料安全保障上重要な作物の監視や地図作成にも利用している。

インドでは、いわゆるキサン・ドローン(農家のドローン)が、作物被害の評価や土地台帳のデジタル化に使われる予定だ。しかし、通常は土地台帳に名前が記載されない女性や耕作者が排除される恐れがあると、ウドゥパ氏は述べた。

「インドの土地台帳はひどい状態です。だから、ドローンを使っても問題は解決しません」と同氏は語った。

タイのバンヤイにある稲作農場で、農業用ドローンを設置する農家のマニット・ブンキウさんとサヤン・トンテープさん。Image: トムソン・ロイター財団/リナ・チャンドラン

「ドローンは、農業労働の費用が相対的に高くなっているという認識から、機械化を進める手段として広く推進されています。しかし、平均的な小規模農家や零細農家には、こうした技術はまったく手が届きません。」

タイでは、国のデジタル経済振興機関が2020年以降、個々の農家にアグリテック向けの1万バーツ(306ドル)の助成金を支給している一方、地域企業には30万バーツの助成金を支給している。

バンマイでは、同機関から提供された鮮やかなオレンジ色の10リットル農業用ドローンが黒い箱に入ったまま置かれ、一部の農家が操縦免許を取得するのを待っている。

その間、地域の人々は会員の一人からドローンを借りている。この会員は稲作農場で絶え間ない人手不足に苦しんだ末、貯金で30リットルのドローンを購入した。

「効率がよく、費用対効果も高いと分かって、多くの人が農場への散布を頼みに来ます」と、52歳のサヤン・トンテープさんは語った。

「娘にもドローンの操縦を教えるつもりです。若者に農業への関心を持ってもらう良い方法です。」

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