肉税を考える
肉の食べ過ぎも喫煙も、環境と健康の両面で社会に影響を及ぼす。食肉生産は、温室効果ガスを排出し、不釣り合いなほど多くの土地とタンパク質1単位あたりの水を消費することで環境を損なう一方、喫煙によって莫大な医療費が生じ、その多くを社会が負担することになる。
ある新たな報告書で、投資アナリストらは、喫煙者への課税と同じように、食肉産業がもたらす影響のコストを、その責任を直接負う人々に転嫁することを提案している。いわゆる「肉税」の考え方は単純だ。ハンバーガーがキャビア一皿と同じ値段になれば、ベジタリアン向けの選択肢を試してみようと思うかもしれない。
「肉の消費も、環境問題と健康問題の両方が重なる分野です」と、Farm Animal Investment Risk and Return(FAIRR)イニシアチブで投資家エンゲージメント責任者を務めるロージー・ウォードル氏は、Futurismに語った。

「誰もが健康的で栄養のある食事をとる権利を持つべきだと考えています」と同氏は述べ、「理想的には、それによって植物性タンパク質をより多く食べる方向への転換を促せるでしょう。植物性タンパク質は、健康にも地球にもより良いものです」と語った。
この分析では、政府がさまざまな税制を通じて有害な慣行への対策に成功した3つの分野を取り上げ、肉が4つ目となり得るかを問うている。すでに180を超える国がたばこ税を課し、60の管轄区域で炭素税制度が導入され、少なくとも25カ国で砂糖に課税されている。
新たな肉税は「医療に充てられる財源を生み出すでしょう」とウォーラー氏は説明した。まだ何も実行に移されてはいないものの、「こうした提案がますます頻繁に出てきているのを目にしています。議論のテーマになりつつあります」と付け加えた。
増え続ける肉食人口
デンマークやスウェーデンなどの北欧諸国は、急増する世界人口を背景に、歯止めのない肉の消費がもたらす脅威の高まりをいち早く認識した国々の一つだった。2016年、デンマーク倫理評議会は気候への影響に基づく赤身肉への課税を提案した。スウェーデンでは緑の党も、食品への気候税を求めるとともに、食の選択が環境に与える負荷を消費者が理解できるよう、気候ラベルの導入を要請した。
「オックスフォード大学のプロジェクト「Our World in Data」によると、世界の食肉生産量は1961年以降、ほぼ5倍に増加した。世界の食肉の40~45%はアジアだけで生産されている。アジアでは生産量が1961年以降15倍に増え、今後も増加が続くと予測されている。
この傾向に伴う脅威は、たばこ、炭素、砂糖がもたらすものより複雑だ。食肉産業は炭素排出の大きな発生源であるだけでなく、赤身肉の過剰摂取は糖尿病やがんのリスク上昇、さらに抗生物質耐性の拡大とも関連づけられている。
しかし、適度に食べるのであれば、肉が必ずしも健康に悪いわけではない。さらに、飢餓や栄養不良が依然として広がっている地域では、牛肉、豚肉、鶏肉をより多くの食卓に取り入れることで、明らかな健康上の利点が得られるだろう。
肉を遠ざければ、格差が広がる?
「消費者の価格変動への反応はさまざまです」と、国連食糧農業機関(FAO)貿易・市場部門の副部門長、ヨーゼフ・シュミットフーバー氏はFuturismに語った。「価格が変わるとすぐに行動を変える人もいれば、以前の習慣を続ける人もいます」
一般に、所得の低い人ほど価格変動にすばやく適応する。この傾向を経済学者は「需要の価格弾力性」と呼ぶ。
「牛肉税を導入したら、市場から締め出されるのは誰でしょうか。所得の低い人たちです」とシュミットフーバー氏は説明した。「それはよくありません。肉の消費を増やす必要がある人たちに不利益を与えるからです。この仕組みを『逆進税』と呼びます」
一方、シュミットフーバー氏は、肉税を導入しても、肉を食べ過ぎる人々への影響は小さいと主張する。この層は高価な肉を買う余裕があることが多いためだ。そのため、この税は問題に最も大きく寄与している層を対象にできないことになる。
この問題へのより穏やかなアプローチとして提案されているのが、ナッジ理論だ。この理論を提唱した経済学者リチャード・セイラー氏は、2017年にノーベル賞を受賞した。誤った選択をした人を罰するのではなく、正しい選択をしやすくすればよいという考え方だ。
肉の消費については、組織培養によって、動物由来の製品に十分近い代替品を近いうちに提供できれば、これを実現できるかもしれない。多くの人が後悔することなく切り替えられるからだ。大豆を使った主菜はすでにほとんどのスーパーマーケットの棚に並んでいるが、先見性のある人々は、野菜を使った代替肉を開発している。牛肉にそっくりで、グリルの上でジュージューと焼け、血のような液体まで出る様子が見えるほどだ。
しかし、この問題に万能の解決策はない。より持続可能な食品の開発に資金が注がれる一方で、肉税という考えは、特に富裕国で依然として魅力的だ。「私たちの調査結果と、ほかの製品が課税に至った道筋を踏まえると、今後5~10年以内に、具体的な提案が出てくるかもしれないと考えています」とウォードル氏は述べた。



