低所得国では、1990年代半ばより債務比率が低いにもかかわらず、債務がこの10年間、緩やかに増加している
新型コロナウイルス感染症とウクライナでの戦争が債務問題に拍車をかけるなか、中央銀行は今、金利の引き上げを始めている。
従来、貧しい国々は主に民間銀行とパリクラブとして知られる富裕国グループから借り入れていたが、今日では中国と民間債券保有者の役割がはるかに大きくなっている。
債務再編の手順をより明確にし、交渉中の支払いを一時停止するとともに、G20共通枠組みを改善することが、いずれも役立つ可能性がある。
特に重債務貧困国イニシアティブのおかげで、低所得国が直面する債務問題は25年前より少なくなっている。同イニシアティブは、サハラ以南アフリカなどの地域で、返済不能な債務負担を大幅に軽減した。しかし、債務比率は低下しているものの、債務はこの10年間、じわじわと増えており、債権者の構成の変化によって債務再編はより複雑になる。
G20共通債務処理枠組みの改善は、2020~21年にG20債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)の対象となった73カ国が現在利用できるものであり、債権者構成の複雑化が進むなかで道筋を開く可能性がある。
2020年11月に開始された共通枠組みの利用を要請した国は、これまでのところごくわずかだ。重債務を抱える低所得国にとって極めて重要なこの局面で、信頼を築き、参加を促すための改革が必要であることが浮き彫りになっている。
債務危機リスクの高まり
低金利、多額の投資需要、国内歳入の追加的な確保に向けた進展の乏しさ、そして逼迫した公的財政管理体制を背景に、DSSI対象国の債務比率は上昇し、2000年代初頭に見られた低下傾向が部分的に逆転した。
新型コロナウイルス感染症とウクライナでの戦争による経済ショックが、低所得国の債務問題に拍車をかけている。中央銀行が金利の引き上げを始めるなかでのことだ。
DSSI対象国の約60%は、債務危機に陥るリスクが高いか、すでに債務危機にある。債務危機とは、債務再編を開始した、または開始しようとしている場合、あるいは延滞債務が積み上がっている場合を指す。
債務危機に陥るリスクが高い、またはすでに危機にあるDSSI対象41カ国のうち、チャド、エチオピア、ソマリア(HIPC枠組みの対象)、ザンビアはすでに債務処理を要請している。ほかの約20カ国では、適用される高リスク基準を大幅に超えており、その半数は2022年に外貨準備が少なく、総資金調達需要が増加しているか、またはその両方に該当する。
国内面では、場合によっては国内銀行が保有するソブリン債務を再編する必要性と、そうした再編が金融セクターの安定性や、国内銀行の成長資金供給能力に及ぼす影響との間で、難しい選択を迫られる。
DSSI対象国の中央値における自国通貨建て債務は、2010年の国内総生産比7%から2021年には15%へと倍増した。市場アクセスのあるDSSI対象国では、その割合は2021年に8%から28%へと3倍以上になった。
こうしたDSSI対象国の多くでは、国内銀行が保有する国内ソブリン債務が増え、ソブリンと銀行の結びつきも強まっている。
調整をめぐる課題
対外面では、債権者の多様化が重要な調整上の課題を生んでいる。
過去数十年間、DSSI対象国は主にパリクラブの公的債権国や民間銀行から借り入れ、多国間機関からも融資を受けていた。今日では、中国と民間債券保有者が融資においてはるかに大きな役割を担っている。
DSSI対象国の対外債務のうちパリクラブ債権国に対する割合は、2006年の28%から2020年には11%に低下した。同じ期間に、中国に対する割合は2%から18%に上昇し、民間債権者に販売されたユーロ債の割合は3%から11%に増加した。
ただし、状況は国によって大きく異なる。平均値では、二国間、多国間、民間債権者の割合から、公的二国間債権者そのものの構成に至るまで、債務構成の多様性が見えにくくなる。
パリクラブの22カ国すべてを一つのグループと数えた場合も含め、DSSI対象国の半数以上で、中国が現在、最大の公的二国間債権者となっている。そのため、公的二国間債権者が関与するDSSI対象国の債務再編の大半で、中国が重要な役割を担うことになる。
債権者構成の多様性を踏まえ、各国固有の事情に一層配慮する必要がある一方、適切な調整メカニズムはどのケースでも重要となる。
共通枠組み
債権者と債務国の間の調整と信頼を確保するメカニズムの整備が急務となっている。G20共通枠組みを改善すれば、より公平な負担分担のもとで債権者の幅広い参加を確保し、重要な役割を果たせる可能性がある。
これまでの経験から、再編手順の明確化、債務国および民間債権者との公的債権者の早期協議、交渉中の債務返済の一時停止、そして処遇の比較可能性を確保する具体的な仕組みの明示が、なお必要であることが分かる。
債務管理と債務の透明性の強化も優先課題とすべきだ。これにより、各国は債務リスクを管理し、債務再編の必要性を減らし、債務が持続不可能になった場合には、より効率的で持続的な解決を促進できる。
必要な場合に債務再編を迅速かつ円滑、効率的に実施することは、債務国と債権者双方の利益となる。それは世界の安定と繁栄にもつながる。





