米連邦準備制度理事会は米経済の「ソフトランディング」を期待するが、歴史は景気後退を防げないことを示唆

Dollar bills overlapping each other.
In the US, inflation has surged to a new 40-year high and is continuing to accelerate.Image: Unsplash/ Blogging Guide
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  • 米連邦準備制度理事会は、利上げによって「よりソフトな着地」を実現し、米国の景気後退の影響を抑えようとしている。

  • 現在のインフレ率8.5%と失業率3.6%は、いずれも今後の展開を示す重要な指標だ。

  • ここでは2人の専門家が、米国が景気後退を回避できる可能性を考察する。

米連邦準備制度理事会は間もなく、体操選手なら誰もが知っていることを知ることになるだろう。着地を決めるのは難しい。

インフレ率が40年ぶりの高水準に急上昇し、さらに上昇が続くなか、FRBは2022年5月4日の次回会合終了時に金利を0.5%ポイント引き上げると予想されている。これは2022年に予定されている7回の利上げのうち2回目となり、3月の0.25%ポイントの引き上げに続くものだ。FRBは消費者需要を冷やし、物価上昇を抑えようとしている。

中央銀行は利上げによって、米国経済のいわゆる「ソフトランディング」を実現しようとしている。急速なインフレを抑えながら、失業率の上昇や景気後退を引き起こさずに済む状態だ。FRBと民間のエコノミストは、2023年にはインフレ率が3%を下回り、失業率は4%未満にとどまると予測している。

しかし、私たちの最近の研究は、ソフトランディングを実現するのは極めて難しく、それほど遠くない将来に景気後退が起きる可能性はかなり高いことを示唆している。

高インフレと低失業率は、どちらも将来の景気後退を強く予測する指標だからだ。実際、1950年代以降、インフレ率が4%を超え、失業率が5%を下回るたびに、米国経済は2年以内に景気後退に陥っている。

現在、インフレ率は8.5%で、失業率は3.6%だ。景気後退を回避するのは非常に難しいと考えられる。

後手に回る

インフレの根本的な原因は、少なすぎる商品を多すぎる資金が追いかけることだ。

短期的には、経済における商品の供給量はほぼ固定されており、財政政策や金融政策で変えることはできない。そのためFRBの役割は、経済全体の需要を管理し、供給可能な量と釣り合わせることだ。

需要が供給を大きく上回ると、経済は過熱し始め、物価が急上昇する。私たちの見立てでは、過熱の指標となる力強い需要の伸び、在庫の減少、賃金の上昇は、2021年を通じて経済に表れ始めていた。しかし、FRBが2020年8月に採用した新たな運営枠組みによって、持続的なインフレがすでに明らかになるまで、FRBは行動を起こせなかった。

その結果、FRBは現在、過熱する経済への対応で大きく後手に回っている。

ソフトランディングを成功させるのは難しい

急上昇するインフレを抑えるため、FRBは今後、消費者需要を抑制しようと利上げを試みる。

その結果、借入コストが上昇し、経済活動の減速に役立つ可能性がある。消費者や企業が新たな投資を控えるようになるためだ。しかし、それには大きな経済的混乱を招き、経済を景気後退に追い込むリスクが伴う。これがソフトランディングだ。金利が上昇して需要がインフレを抑える程度に減少する一方、経済は成長を続ける。

しかし、ソフトランディングを実現してきた歴史は心強いものではない。私たちの調査では、FRBがインフレを実質的に抑え込めるほど強くブレーキをかけた場合、毎回、経済は景気後退に陥っていた。

過去60年間には、ソフトランディングの例がいくつかあったと主張する人もいる。1965年、1984年、1994年などが挙げられるが、私たちの分析では、これらの時期は現在の状況とはほとんど似ていなかった。

この3つの事例すべてで、FRBが対応していた経済は、失業率が大幅に高く、インフレ率と賃金の伸びが低かった。また、これらの歴史的事例では、FRBはインフレ率を大きく上回る水準まで金利を引き上げていた。インフレ率が8.5%で、金利が2023年まで3%を下回ると予測されている現在とは異なる。さらに、インフレがすでに過度な水準になるまで待つのではなく、インフレの急加速を防ぐため早期に明確な行動を取っていた。

インフレを考えるうえで、労働市場が重要なのはなぜか?

FRBが今日直面する課題が特に難しい理由の一つは、労働市場がかつてないほど逼迫していることだ。労働者への需要が供給可能な人数を大幅に上回っている。労働市場が逼迫していると、企業は新たな労働者を引きつけるために賃金を上げる必要がある。

通常、労働市場の逼迫度を示す指標には失業率が用いられる。失業率は現在非常に低く、FRBはさらに低下すると予想している。しかし、私たちの研究によると、賃上げ圧力は失業率が示す以上に強い。求人件数は過去最高を記録しており、労働者の離職率も記録的な水準にある。どちらも賃金を押し上げる大きな要因だ。

ある意味で、賃金はコアインフレを測る究極の指標だ。企業コストの3分の2以上は労働に由来するため、賃金の上昇はインフレに大きな上昇圧力をもたらす。現在、賃金上昇率は歴史的な6.6%の水準で推移し、さらに加速している。

賃金がこれほど急速に上昇しているなか、インフレ率がFRBの目標とする2%台まで低下するとの楽観的な見方を支える根拠はほとんどない。私たちの分析では、現在の賃金上昇率は5%を超えるインフレが続くことを示唆している。また、歴史的に見て、失業率の大幅な上昇と景気後退を伴わずに賃金上昇が鈍化することはない。

景気後退の可能性

現在の米国経済は、次の要因による追加的なインフレ圧力に直面している。ウクライナ戦争による穀物とエネルギー価格の上昇に加え、新型コロナウイルス感染症により、さらにサプライチェーンが混乱している。中国で新たなロックダウンが実施されているためだ。これらの要因により、今後1年間でインフレがさらに悪化するおそれがある。

私たちの見立てでは、FRBが現在直面しているインフレ問題は深刻で、大幅な景気減速なしに解決する可能性は低い。全体として、過熱する経済、急上昇する賃金、FRBの政策対応の遅れ、最近の供給ショックが重なり、今後数年のうちに景気後退が起きる可能性は、起きない可能性を確実に上回っている。

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