女性は「勤勉」、男性は「卓越」:経済学の就職市場

Woman standing in front of whiteboard with calculations on it.
Female candidates are significantly more likely to be associated with ‘grindstone’ terms, over ability terms.Image: UNSPLASH/Christina@wocintechchat.com
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  • 学界は、構造的なジェンダー不均衡をめぐり、厳しい目にさらされている。

  • ジェンダーによるパターンを理解するため、研究者らは機械学習の手法を用いて、経済学の初級職候補者に宛てて書かれた推薦状を分析した。

  • 研究者らは、無意識のバイアスにより、女性は能力よりも勤勉さを称賛される傾向が強いことを明らかにした。

学界はジェンダー不均衡をめぐり、厳しい目にさらされている(Valian 1999)。この傾向は経済学で特に顕著である(Lundberg 2020)。近年の実証研究は、女性のキャリア形成のパイプラインには「漏れ」があり、博士号取得から助教就任まで、あるいは助教から准教授への昇進までといった重要な段階で、女性が職業を離れていることを示している(Lundberg and Stearns 2019)。最近の論文(Eberhardt, Facchini, and Rueda 2022)では、経済学者のキャリアの第一歩である若手研究者の「就職市場」を研究した。この段階では、過去10年間にパイプラインの「漏れ」が最も拡大している(Lundberg and Stearns 2019)一方、これまで学術文献で体系的な注目をほとんど集めてこなかった(Lundberg 2020)。

経済学のアカデミック就職市場は、独特の構造を持ち、中央集約的である。毎年秋、大学が求人広告を掲載し、応募を検討する人々は「就職市場用応募書類一式」を準備する。これには、1本以上の学術論文、履歴書、候補者をよく知る研究者が書いた推薦状一式(以下「推薦者」)が含まれる。この市場では、候補者、推薦者、採用委員会が中央集約型のプラットフォームを介してやり取りする。同じ応募書類一式をほとんどの求人に使えるため、応募を1件追加する限界費用は非常に低い。推薦状は通常、特定の機関向けに書き分けられてはいない(Coles et al. 2010)。そのため、応募が多数寄せられる機関では、市場に出回る推薦状をおおむね代表する標本を観察できると考えられる。

推薦状に関する独自のデータセット

英国の研究集約型大学が2017年から2020年に受け取った、初級職へのすべての応募を網羅する独自のデータセットを使用する。自然言語処理ツールを用い、2,800人の候補者を推薦するために書かれた9,000通を超える推薦状の本文を分析した。標準的な推薦状では、候補者の就職市場用論文について詳しく論じ、追加の研究、教育活動、その他のスキルにも触れていることが分かった。最終段落では、候補者の学術的能力と採用見込みを要約している。本研究では主にこの最終段落に焦点を当てる。

この文章を「単語頻度・逆文書頻度(TF-IDF)表現」に変換したうえで、認知心理学と言語学の知見を取り入れ、女性候補者向けの推薦状が、男性候補者向けのものとは体系的に異なる特性を強調しているかどうかを定量化する。

方法

推薦状の分析には、相互に補完する2つの方法を用いる。まず、教師なしアプローチであるLASSO手法を使い、候補者の性別を最もよく予測する語句を選ぶ。予測因子には、研究関心に関する語句だけでなく、性格や特性に関する語句(「決断力がある」「勤勉な」「よく働く」など)も見られる。

次に、推薦状でよく強調される語句の辞書を構築し、教師あり手法を適用する。これらの辞書は、このテーマに関する既存研究に基づいて作成した。特にSchmader et al. (2007)は、学術的な推薦状によく見られる5つの言語カテゴリー(「評価」)を提案している。すなわち、能力特性、「勤勉さ」を示す特性、研究関連語、際立った形容詞、教育活動と学術コミュニティへの貢献に関する語句である。さらに、候補者の採用見込みを追加のカテゴリーとして加えた。

能力特性とは学生の知的能力を指し、「才能がある」「卓越した」「創造的な」などの語句が含まれる。「勤勉さ」を示す特性は、Trix and Psenka (2003)の言葉を借りれば「身を粉にして働く」ことに関わり、「よく働く」「誠実な」「勤勉な」などの語句が含まれる。研究関連語は、実施した研究の種類(例:「応用経済学」「ゲーム理論」「公共経済学」など)を表す。際立った語句は通常、「優れた」「傑出した」「稀有な」などの最上級表現である。教育活動と学術コミュニティへの貢献のカテゴリーは、候補者の教育スキルと同僚との交流の両方を指す。このグループには「優れた教師」「素晴らしい同僚」「親しみやすい」などの表現が含まれる。最後の採用見込みのカテゴリーは、若手経済学者をめぐる競争が激しくグローバル化した労働市場で、候補者がどのような職に就くと見込まれるかを広く表す語句を特定するために加えた。このグループには「強く推薦する」「トップクラスの学科」「テニュアトラック」などが含まれる。

辞書の妥当性を確認するため、英国の研究集約型大学に所属する経済学者を対象に、独自の包括的な調査を実施した。図1に示す調査結果からは、研究者らの分類と、この分野の専門家による分類との間に幅広い合意があることが分かる。

「図1:著者のカテゴリーと『集合知』の対応」Image: Vox EU

結果

推薦状における各評価の重要度と候補者の性別との相関を推定し、推薦状全体の長さと候補者および推薦者の特性を調整した。基本分析の結果は図2に示す。合計672種類のモデルを実行し、女性ダミー変数の推定係数をプロットしている。記号の色が濃いほど、関心のあるパラメーターについて統計的に有意な推定値が得られた仕様の数が多い。塗りつぶされた記号は、考え得るすべてのクラスター化において有意水準1%で有意であることを示す。白抜きの記号は、いずれの水準でも統計的有意性が確認できなかったことを示す。

「図2:基本回帰分析の結果」Image: Vox EU

この図が示す主な点は、機関のランキングにかかわらず、女性候補者はすべての仕様で「勤勉さ」を示す語句と関連付けられる可能性が有意に高いということである(標準偏差の6%から10%)。この結果は、教師なしLASSO分析の解釈を裏付ける。また、女性候補者を推薦する書簡では、研究に関連する語句の使用が少ないことも分かった。どちらの結果も、他分野の知見と一致する(Trix and Psenka 2003, Valian 2005)。結果は仕様を変えても非常に安定しており、観察されていない交絡要因が結果を変える可能性は低いと考えられる。

女性候補者がどの機関に進むか、また誰が推薦状を書くかという選別が、使われる言葉の違いを説明するうえで重要な役割を果たしている可能性がある。例えばBoustan and Langan (2019)は、女性の割合が経済学部門における持続的な特徴であり、女性のキャリアを後押しするうえで重要だと報告している。学科間の選別に対処するため、候補者の所属機関の固定効果を含むモデルを実行した。図3に示す結果は、同じコホートに属し、同じ機関を卒業した学生(例えば、入学基準がほぼ同じと考えられる博士課程に入学した学生)の間でも、女性は「勤勉さ」を示す語句で表現される可能性が依然として有意に高いことを示唆している。

推薦状の書き手の選別も、依然として結果を説明する可能性がある。この懸念に対処するため、書き手の固定効果を含む一連の仕様を実行した。ただし、推薦状を2通以上書いており、そのうち少なくとも1通が女性候補者向けである推薦者だけを含めている。これらの結果も図3に示しており、概ね上記のパターンと一致している。

「図3:固定効果を含む回帰分析」Image: Vox EU

同じ図では、女性候補者を推薦した経験が少ない推薦者と多い推薦者(推薦状のうち女性向けが50%未満か、50%を超えるか)を分けて、標本をさらに分析している。「経験の少ない」グループが「勤勉さ」の結果をもたらしているようだ。

経験が重要となる理由は主に2つ考えられる。一方では、推薦者によって女性に対する見方が異なり、女性候補者は固定観念にとらわれない推薦者を見つけている可能性がある。他方では、当初は推薦者間に違いがなくても、女性候補者と接することで、従来の固定観念を更新する可能性がある。この2つの仕組みを切り分けるには、さらなる研究が必要である。

固定効果の分析では、「能力」に関する新たなパターンも明らかになった。女性候補者は、能力に関する語句と結び付けられる頻度が明らかに低いものの、その差は統計的に有意ではない。「経験の少ない」グループでは、より明確なパターンが見られる。追加分析では、このグループの男性の書き手について、このパターンが有意であることを示す。

得られた教訓

研究者であれば誰もが、就職市場に臨む候補者の推薦状を書くことや、文章を練り上げることにどれほど時間を費やすかを知っている。これは学生を後押しするために最善を尽くす機会である。そのため、平均的に見て、女性学生に望ましい特性をあまり強調せず、意図的に不利な扱いをしているとは考えにくい。明るい材料として、近年の研究は、バイアスの存在を示す証拠を関係者に提示することで、無意識のバイアスに対処できることを示している(Boring and Philippe 2021)。ジェンダーによって異なる言葉遣いのパターンを明らかにすることで、私たちのバイアスへの認識を高め、ひいては就職市場における固定観念を減らす第一歩となることを期待する。

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