私は女性エンジニアです。自己紹介をすると、今でも驚きの声が上がったり、意外そうな顔をされたりします。建築・エンジニアリング分野の従業員に占める女性の割合はわずか11%なので、私にとっては驚くことではありません。
その理由はいくつもあります。その一つが「パイプラインの課題」と呼ばれるものです。つまり、エンジニア人材の育成過程のあらゆる段階で、女性や少女が取りこぼされているのです。
パイプラインの入り口では、少女たちはエンジニアという職業を知りません。今でも、エンジニアリングは男の子向けの仕事だという見方があります。土木エンジニアである私は、体格が小さいことに人々が驚くのを見てきました。巨大インフラの建設には力仕事が必要だと思われているからです。私は、頭を使う力仕事だと捉えるのが好きです。
まったくの幸運
私が知る女性エンジニアの多くは、次の三つの経緯のいずれかでこの職業に就きました。父親や叔父など身近な男性がエンジニアで、ロールモデルになった。教師から数学や理科が得意で、エンジニアはそうした仕事をすると言われ、工学を学びに進んだ。そして三つ目は、私自身がそうだったように、「まったくの幸運」に恵まれたことです。
私は運よくエンジニアになり、人類が直面する最も大きな課題を解決する仕事に心からやりがいを感じました。それが、STEM(科学、技術、工学、数学)の普及に取り組み、女性エンジニアを育成するために共同設立したWomEng理由です。私たちの最新キャンペーンでは、100万人の少女を支援することを目指し、GirlEng STEM教育プログラムを通じて取り組んでいます。
私はこれまで、第四次産業革命は、テクノロジーを開発課題の克服に活用するだけでなく、女性がジェンダーの壁を乗り越え、テクノロジーの消費者にとどまらず、創造者や所有者となるためのまたとない機会をもたらすと主張してきました。私たちのプログラムには、エンジニアの職業や未来の働き方についての認知を高めること、少女たちに専門知識を持つメンターをつけること、地域のロールモデルとつながる機会や工学分野の奨学金を提供すること、そしてエンジニアリングは誰にでも開かれているという自信と理解を育むことなど、さまざまな要素があります。
ピンクのヘルメット
最後の要素には、ヘルメットをピンクに変える取り組みがあります。多くの建設現場で見かける典型的なヘルメットを鮮やかなピンク色にし、固定観念には固定観念で対抗しました。この取り組みは少女たちを鼓舞するうえで非常に効果的で、人気のアイテムとなりました。支持者の多くが着用しており、2016年にダボスで開かれた世界経済フォーラムでは、カナダのジャスティン・トルドー首相もかぶりました。

私たちは2009年からGirlEngプログラムを実施しており、2014年には、高校生として参加した少女たちがエンジニアとして卒業する姿を見届けました。ささやかな働きかけが長期的な影響をもたらすことを示しています。
「中間層の欠落」をなくす
しかし、パイプラインについて考えるとき、入り口で人材の裾野を広げても、その後すぐに細ってしまうのでは十分ではありません。多くの女性が3~5年以内に業界を去り、「中間層の欠落」が生じています。業界では女性人材の一定層が失われ、リーダーシップの空白が生まれるとともに、上級職に就く女性の少なさが固定化されています。
女性が家庭を持つなど別のライフスタイルを選ぶために退職する、という見方がありました。一方で、もう一つの課題は、私たちが「一人きりの世界」と呼ぶ状況です。社内で唯一の女性エンジニアであると、孤立を感じ、退職することにつながりかねません。
「中間層の欠落」のもう一つのよくある理由は、経済的なものです。STEMのスキルは需要が高く、エンジニアはより高い報酬を得られるさまざまな業界から引く手あまたです。さらに、この業界は概して変革への歩みが遅く、多様性の受け入れも進んでいません。多くの女性は、日々障壁と闘うよりも退職を選びます。
女性エンジニアの定着率を高めるには、心と知性の両方に働きかけることが重要です。心に響くのは、変化をもたらす仕事です。エンジニアリングの多くはまさにそれであり、より良い都市や世界の創造にもつながります。知性に働きかけるには、女性のキャリア形成を後押しし、企業や業界で活躍する機会を開くことが必要です。
業界は、より充実した経済的インセンティブと同一賃金の実現、包摂的で敬意ある職場文化の醸成、そして男性リーダーが女性エンジニアのキャリアを後押しすることなど、ほかの制度的な変革も受け入れる必要があります。第四次産業革命が始まるなか、STEMのスキルは読み書きと同じくらい重要になります。さらに、共感力、チームワーク、優れたコミュニケーション能力など、しばしば「より女性的」と見なされるスキルも同様に重要です。こうした能力を備えた女性エンジニアは、エンジニアリングに変革をもたらすうえで大きな力を発揮できます。
ジェンダーとスキルの格差を縮める取り組みについては、『第四次産業革命におけるジェンダー平等の加速』――世界経済フォーラムの新たな白書をご覧ください。
