賃金に焦点を当てても、男女間賃金格差を解消できない理由

A woman passes a closed entrance to the Piccadilly underground line at King's Cross station in London April 29, 2014. Millions of commuters faced transport chaos on Tuesday after eleventh-hour talks failed to avert a two-day strike on the London Underground train network over plans to cut jobs and close ticket offices. REUTERS/Neil Hall (BRITAIN - Tags: BUSINESS EMPLOYMENT TRANSPORT POLITICS) - LM1EA4T13W301
Despite attempts in many countries, progress towards closing the gender pay gap remains slow.Image: REUTERS/Neil Hall
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世界全体で、男女間賃金格差の縮小に向けた進展はあまりにも遅い。努力が足りないわけではない。多くの企業や政府がジェンダー平等を重要課題に掲げ、解決に向けた具体的な取り組みを進めている。賃金の調査を始め、方針を導入している。それでも、あまりうまくいっていない。

たとえば英国では2017年以降、従業員が250人を超える企業に賃金格差の報告が義務付けられている。これは性別による賃金格差を抑止するはずのものだ。しかし、報告が2年目を迎えるなか、HSBCの一部門やヴァージン・アトランティック航空を含む複数の企業で、状況が後退したことがすでに分かっている。

しかし、男女間賃金格差の問題を解決しようとする私たちのやり方こそ、本当に後退しているのだとしたらどうだろうか。

カティカ・ロイは、PipelineのCEOだ。デンバーを拠点とするこのスタートアップは、企業がジェンダー平等に関する指標を追跡できるソフトウェアを開発している。ロイは職場におけるジェンダー格差の解消について深く考えてきた。そして、賃金は問題の症状にすぎず、その問題は年俸を決める場よりもずっと前から始まっているという。「病巣は、上流の段階で人材にどれだけの価値を置くかです」と彼女は言う。誰に可能性があると判断するか、誰を昇進させるか、各従業員の価値をどう定めるかを決める段階のことだ。こうした判断には、企業文化や社会に根深く染み付いている可能性があり、必ずしも簡単に見つけられない偏見が影響している。「賃金から着手するのは、いわば後回しにするようなものです」とロイは言う。

ロイが開発したツールは企業の人事プラットフォームと連携し、バックグラウンドで動作して、別の職務に適任か、昇進の準備ができている可能性のある従業員の情報を社内データベースから検索する。たとえば社内採用を行う場合、システムは各候補者のスキルや経験、人事評価の文面、配属予定チームの構成に基づいてスコアを付ける。

Pipelineは人工知能のツールを活用し、企業がジェンダー平等の格差を縮小できるよう支援している。ロイによると、候補者が性別だけを理由に優先される「逆選択」を防ぐため、アルゴリズムにはチェックと均衡の仕組みが設けられている。彼女によれば、このツールは独自の偏見を持ち込まずに、無意識の偏見に対処するよう設計されている。

女性をより多く経営幹部の職に就かせるうえで、人材育成の流れが課題だと指摘したのは、ロイが初めてではない。近年、男性が多数を占める業界で女性従業員を育成する必要性が世界的に認識されるようになった。育児を機に離職しないよう支援し、男性と同等に昇進させ、キャリアを中断した後に職場へ戻れるよう促すためだ。さらに、キャリアが始まる前から、工学や数学などの分野で学ぶ女性が少ないことを受け、将来の仕事に必要な力を女子生徒が身につけられるよう、そうした科目の学習を促す呼びかけやプログラムが行われている。だがロイの見方が興味深いのは、この問題の解決に取り組んできた起業家として、何が有効で何が有効でないかを自ら経験しているからだ。

ロイによると、Pipelineも他のスタートアップと同様にさまざまな方法を試し、初期の顧客企業ではまず賃金に焦点を当てた。しかし、うまくいかなかった。「実際にはすでに価値を決めていたのに、数値に基づく価値の議論をしていたのです」と彼女は言う。

では、賃金格差を解消する答えは何だろうか。

多くの企業がテクノロジーによる解決策を提案しており、その多くは人工知能を活用している。Plumは、調査や組織心理学の手法にAIを組み合わせ、企業が適切な人材を採用できるよう支援するとしている。別のスタートアップであるPymetricsは、神経科学に基づくツールと機械学習を組み合わせ、アルゴリズムを検証していると述べている。過去の候補者プロフィール5万件のデータセットを使い、システム自体に偏見がないことを確かめるためだ。システムの偏見は、Amazonのような企業が採用向けの高度なツールを開発しようとする取り組みを妨げてきた問題である。

人を対象とした無意識の偏見に関する研修は、解決に向けた重要な要素だ。しかし、テクノロジーによる解決策の必要性に利害関係を持つロイは、それだけでは不十分だと言う。AIのツールの一つである自然言語処理は、その好例だ。ロイのチームは従業員の人事評価の文面をコンピューターで分析した(具体的な数は明かしたくないとしながら、このプロセスを「1,000件を超える」評価に実施したと述べた)。同じ文面でも、女性より男性従業員のほうが高い数値評価を受けることが分かった。これは、不公平な扱いに注意を払っている人間でさえ見抜くのが非常に難しい偏見の一種だ。

「無意識の偏見に関する研修があるのは素晴らしいし、プログラムがあるのも素晴らしい。でも、それで問題が解決するのなら、すでに解決していたはずです」と彼女は言う。ロイはGoogleを例に挙げる。同社は2015年だけで1億5,000万ドルを費やした偏見に関する研修を実施したが、それでも組織的な問題を抱えている。その証拠として、2018年11月のGoogle社員による一斉抗議がある。

ロイにとって、そこに至るまでのあらゆる判断が重要だ。「人材育成のパイプラインは、ごく早い段階で漏れ始めます。CEOや役員会の段階だけで漏れるのではありません。そこに至る25年前から漏れているのです」と彼女は言う。AIを活用したテクノロジーによる解決策は数ある手段の一つにすぎないかもしれない。しかし、これほど根深い問題には、あらゆる手段が必要だという見方が強まっている。

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