過去12日間、極度の貧困と人権に関する国連特別報告者のフィリップ・オールストン氏は、2018年のある国の貧困状況を調査してきた。
しかし、彼が調査しているのは新興経済国ではない。英国、つまり世界第5位の経済大国だ。
雇用水準が上昇し、経済が成長し、莫大な富を持つ人々がいる一方で、英国民の5人に1人は依然として貧困状態にある。
今年初めに公表されたデータによると、英国では現在、親が働いている家庭の子ども310万人が貧困状態にある。2010年以降、貧困状態にある子どもはさらに100万人増えた。同じ期間に経済は2,200億ドルを超える規模で成長した。
オールストン氏は12日間の英国訪問で9つの町を回り、グラスゴーの子どもの貧困からニューカッスルのフードバンク、オックスフォード大学でのデジタル排除をめぐる討論まで、幅広いテーマを取り上げた。
今回の訪問は、西欧の国が国連の貧困調査を受ける2例目となる。1例目は2011年のアイルランドだった。

金曜日にロンドンで開かれた記者会見で、調査の初期結果を発表したオールストン氏は、給付金の削減と制度改革、公共施設の閉鎖が1,400万人を貧困に追い込んだと述べた。
調査結果には、次の点が含まれる。
-英国では1,400万人、人口の5分の1が貧困状態にある
-このうち400万人は貧困ラインを50%以上下回り、150万人は基本的な必需品を買う余裕もない極貧状態にある
-子どもの貧困は2015年から2022年の間に7%増加すると予測されている
-ホームレスの人々は2010年以降60%増加した
-2010年以降、地方自治体への実質ベースの資金拠出は49%減少した
「訪問中、次の食事をフードバンクや慈善団体に頼る人々、ホームレスで子どもたちが安心して眠れる場所がないため友人のソファで寝ている人々、金や寝場所を得るために性を売った人々、貧困のなかで育ち、自分の将来に不安を抱える子どもたちと話をしました」とオールストン氏は述べた。
貧困はどのように定義されるのか?
国連は貧困の定義を大きく2つのカテゴリーに分けている。1日1ドル未満しか利用できない「極度の貧困」と、家族の所得が各国政府の定める基準を満たさない「所得貧困」だ。基準は国によって異なる。
現在、英国政府には貧困ラインが設けられていない。そのため、英国における新たな貧困測定基準の策定を目的に、独立した社会指標委員会が設立された。
オールストン氏は「相対的貧困」を基準に用い、保育、住居、債務、障害などにかかる費用を考慮したうえで、所得中央値の55%未満で暮らす人々の割合を調べている。
フードバンク大国、英国
国の相対的な豊かさや貧困を測る方法は数多くあるが、過去10年間に英国で貧困が拡大していることを最も端的に示す指標は、全国の教会の集会所や地域センターに設置されるフードバンクの数だ。

フードバンクは慈善団体が運営し、一般の人々から食品や、洗面用品などの必需品の寄付を受け付ける。寄付品は仕分けされ、医師やソーシャルワーカーなどの関係者から紹介された支援を必要とする人々に配布される。
英国最大のフードバンク慈善団体であるトラッセル・トラストは、オールストン氏の英国訪問中に同氏と面会した。
同団体によると、この1年間で130万人を超える人々が、緊急食料支援を受けるため同団体のフードバンクを紹介された。わずか5年間で、ほぼ50%の増加となる。
「毎週、緊急支援を紹介された人々がフードバンクを訪れます。収入がごくわずかな人も、まったくない人もいます。私たちのネットワークから得た知見をフィリップ・オールストン氏と共有できたことをうれしく思います」と、トラッセル・トラストの運営部長サマンサ・ステイプリー氏は述べた。
「今日の英国では、あまりにも多くの人にとって、生活をなんとか維持することが日々の苦闘になっています。その結果として、誰かがフードバンクに頼らざるを得ない状況は、まったく受け入れられません。」
給付金の影響
オールストン氏とトラストの話し合いで主な議題の一つとなったのは、英国政府による就労給付と失業給付の削減がもたらす影響だった。

同団体のデータによれば、フードバンクへの紹介のほぼ4分の3は、給付金の削減や支給の遅れが原因だった。
トラッセル・トラストの広報担当者によると、英国政府の新しい給付制度「ユニバーサル・クレジット」が特に深刻な影響を及ぼしていることが、訪問中にオールストン氏に伝えられた。
ユニバーサル・クレジットが全面導入された地域にある同慈善団体のフードバンクでは、各地域での全面導入後12か月間に、需要が平均52%増加した。
ユニバーサル・クレジットの全面導入地域ではないか、全面導入から3か月以内の地域にある247のプロジェクトからフードバンクを無作為に抽出して比較分析したところ、需要の平均増加率は13%だった。
6種類の給付を毎月1回の給付に一本化するユニバーサル・クレジットの受給者の多くは、給付額の不足や最長6週間の支給遅延などの問題に直面している。英国政府はこうした問題を認め、先月の予算案に移行を円滑にするための一連の措置を盛り込んだ。
オールストン氏は、給付制度改革には「顕著なジェンダー面の影響」があると述べた。
「もし女性蔑視の人たちを部屋に集めて、『みなさん、この制度を女性ではなく男性に有利にするにはどうすればいいでしょう』と尋ねたとしても、すでに導入されているもの以上の案は、あまり出てこなかったでしょう」と同氏は述べた。
「ひとり親の90%は女性です。給付制度全体で最もひどい状況に置かれているのはどの人たちだと思いますか。ひとり親です。」
包摂的な成長
オールストン氏の訪問によって、英国の貧困だけでなく、経済成長で生まれた富の分配をめぐる格差の拡大も明らかになった。
包摂的な成長に関する英国の低い評価は、世界経済フォーラムの2018年包摂的開発指数で示された。同指数で英国は総合21位だった。
1人当たりGDP、健康寿命、富の格差など、指数を構成する12指標のうち8指標で、英国はランキングの下位半分に位置する。
「数値からは、包摂的な成長の多くの側面で、英国が同等の国々に後れを取っていることがうかがえる」と指数の報告書は述べている。
「とりわけ、富の格差は過去5年間で拡大している。」
オールストン氏は、この格差の拡大によって英国社会の広範な層が疎外されるおそれがあると述べた。
