火星の株式と金星の預金口座?女性の経済的エンパワーメントを加速するには

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  • 新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験したことで、高所得国と中低所得国の双方において、女性の経済的見通しは大きく損なわれた。

  • 世界のジェンダー格差の解消は、段階的な波及効果をもたらす。将来を見据えると、富の格差と自信の格差を縮小することは、女性の経済的エンパワーメントをさらに前進させるための実践的な道筋となる。

  • 「クオータ制」の先を見据え、先見性のある政策立案者、投資家、経営幹部は、ESGにおける「次の大きなテーマ」に取り組むとともに、世界中の女性の地位向上に注力すべきだ。

介護の負担は女性に偏ってのしかかることが多く、パンデミック中、多くの働く女性が主たる介護者となることを余儀なくされ、労働市場からの退出を強いられた。女性の労働参加率の低下は、IMFが「シーセッション」と呼ぶ事態を引き起こした。国連は、推定4,700万人の女性が極度の貧困に追い込まれたとしている。

米国などの先進国経済が力強く回復し、2022年には女性の賃金上昇率も高まったにもかかわらず、男女間の賃金格差は依然として大きく、米国の女性の賃金は男性の所得の83.1%にとどまっている。

日本、イタリア、米国などの政策立案者は、女性の労働参加率(LFP)を高める施策を発表するとともに、賃金のジェンダー平等の実現、取締役会に占める女性の割合の拡大、女性のデジタルスキル向上に向けた施策も導入している。

ESG投資は女性の経済的エンパワーメントにどう貢献できるか

ESGへの注目が急速に高まるなか、投資家、経営幹部、業界団体は、取締役会におけるジェンダー平等の改善に改めて注力している。また、経営幹部チームに占める女性の割合を高める取り組みも強化している。

では、女性の経済的エンパワーメント、ひいてはESG政策と投資における次の「大きなテーマ」とは何だろうか。男女間の富の格差を解消する必要性は高まり、同時に機会も拡大していくと考えられる。労働市場に参入する女性が増え、経営幹部チームや取締役会により多くの女性を含めるための規定やクオータ制が拡充され、賃金の平等を目指す取り組みが進むなか、女性は時間の経過とともに、より多くの富を蓄積していく可能性が高い。

こうした富をどのように確保し、時間をかけて増やすかは、各国の社会や組織の規範、そして女性自身にとっても課題となる。信用へのアクセスの不均衡、女性の起業を阻む障壁、ベンチャーキャピタル資金の偏り、事業資産の所有機会の不足、年金格差などの関連要因が、女性にとってより公平な競争環境をつくる妨げとなってきた。ジェンダーによる富の格差を緩和することは、政府が状況を実質的に改善する大きな機会となる。また、組織や投資家がESGの「S」と「G」の要素に関する責務を果たし、社会と経済が長期にわたり持続的かつ安定的に成長する機会にもなる。

世界のジェンダー格差の解消:段階的な波及効果

世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ・レポート」の基礎データを詳しく見ると、世界各地で女性の地位が段階的に向上する波及効果が明らかになる。ジェンダー平等に向けた取り組みでは、健康と生存が基盤となり、それによって教育へのアクセスが可能になる。教育機会の拡大は政治的エンパワーメントを促し、女性の政治的エンパワーメントは経済参加の機会にも波及し得る。しかし、この進歩は直線的ではない。2020年には世界各地の経済で女性の状況が後退した一方、各国は政治的エンパワーメントや経済参加における過去の成果を後退させることもある。

女性の経済的エンパワーメントを構成するさまざまな要素を分解して考えると、女性の労働参加率(LFP)の向上、管理職チームや取締役会における女性のクオータ制拡充、賃金のジェンダー平等に向けた一層の取り組みが、女性が富を保有する機会を広げ、賃金所得と賃金以外の所得の双方を生み出す基盤となることが分かる。

富の不平等:資産構成の違い

男女間の富の不平等は、女性が金融サービスや相続、土地やその他の資産へのアクセスに障壁を抱える可能性のある途上国だけの問題ではない。ヨーロッパの中心にあるドイツでも、男性の平均的な富は女性より45%高く、フランスでは女性より15%、イタリアでは18%高い。エストニアの行政データを用いた最近の調査によると、世帯内にも大きな富の不平等が存在する。既婚者世帯では「男性の富は平均して女性より89%多い」。

この富の格差は所得分布の上位で大きく広がる。エストニアのデータは、資産構成の違いがこの格差の根底にあることを示している。所得分布の下位では、女性も男性と同様に預金を保有する傾向があるが、上位では男性のほうが女性より多くの事業資産を保有する傾向がある。実際、研究者は男女間の事業資産の「顕著な」違いを指摘しており、エストニアでは男性の事業資産が女性の「9倍」に上る。ドイツでは男性の事業資産は女性の5.5倍だ。総じて女性は、保有する投資の種類についてより保守的な傾向がある。そのため、古い格言を言い換えて、女性は金星で預金口座を持ち、男性は火星で株式を持つと言われる。

自信の格差を解消する:彼女にもできる

実証データはまた、女性が男性と比べて自分の成果を評価する際、自信の格差に悩まされることが多いと示している。研究者は「自己アピールにおける大きなジェンダー格差」を発見した。この格差は「根強く」、早ければ小学6年生(11~12歳)で現れる。女性が数学と科学のテストを受けた場合、自分の成績をどう説明するかには、男性との間に「顕著な」格差がある。対照的に、より「女性的」とされる言語課題では、格差が縮まる。驚くべきことに、数学と科学のテストで男性を上回った場合でさえ、女性は一貫して自分を過小評価する。

こうした自信の低さが富の不平等に波及することは明らかだ。研究によると、女性の金融リテラシーのスコアが低いことと、株式市場への参加率が低いことには相関関係がある。英国の最近の報告書は、女性が「世代を超えて」「一貫して」男性より金融リテラシーで遅れを取っていることを示している。こうした格差への対応として、女性同士が協力し、金融リテラシーの向上や投資に関する知見の提供を目的としたサービスを提供する取り組みが行われている。また、女性が所有する投資サービスの提供や、女性のウェルスマネジャーの顕著な増加も見られる。

女性の起業を再考する

ビジネスの世界における男女間の不均衡な競争環境は、スタートアップとベンチャーキャピタルのエコシステムに存在する不公平を明らかにした。米国では、ベンチャーキャピタル企業の75%に女性パートナーが一人もいない。米国の政策立案者は最近、税額控除を通じて女性起業家の資金へのアクセスを改善する法案を起草した。

とはいえ、女性の起業は、女性が経営する企業やスタートアップに限られない点も指摘しておくべきだ。女性は大規模な組織のなかでも起業家として活躍できる。企業内で女性の所有持分を拡大するためのインセンティブが必要だ。女性が事業資産を築く機会の拡大は、女性の労働参加率の上昇、女性管理職の増加、賃金格差の緩和に向けた取り組みという大きな傾向に自然と続く。経営慣行もこれに追いつく必要がある。こうしたインセンティブを導入するには、「クオータ制」の発想から脱却しなければならない。

総じて、先見性のある政策立案者、投資家、経営幹部は、女性の経済的エンパワーメントにおける「次の大きなテーマ」に取り組むべきだ。富の格差の緩和は、持続可能な経済成長と発展の見通しに好循環をもたらす可能性がある。さらに、これは全体的な富の不平等を解消する取り組みに向けた実質的な施策となる。

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