ダイバーシティは今や時代のキーワードだ。誰もが、ダイバーシティはビジネスにとって有益であることを認めており、こうした議論が新たなプログラムや研修につながり、企業全体の事業課題にダイバーシティを組み込む取り組みが進んでいることは間違いない。調査によると、ジェンダー・ダイバーシティの拡大は、意欲やエンゲージメントの向上、創造性とレジリエンスの強化、そしてより革新的な職場環境につながる。
明確な調査結果や見出しが広く取り上げられているにもかかわらず、世界各地での進展のペースは依然として心もとない。ジェンダー・ダイバーシティがもたらす恩恵がこれほど明白なのに、勝ち組に名を連ねる企業がもっと増えないのはなぜだろうか。取り組みが足りないわけではない。実際、私たちの調査に回答した女性の91%は、勤務先にダイバーシティ推進策があると答えた。しかし、そうしたプログラムの効果を実感した人はわずか27%だった。企業がダイバーシティの難題を解決し、変化を加速させるべき時だ。

最も効果的なアプローチは、必ずしも予想どおりとは限らない
企業のリーダーが、他の重要な事業課題と同じようにダイバーシティを捉えなければ、変化は起きない。ダイバーシティの取り組みは、人事部門やダイバーシティ&インクルージョン部門の中に孤立しがちだ。そうではなく、CEO自らが組織のダイバーシティ推進を担い、率先して行動しなければならない。
第一歩は、現状を把握し、適切な目標を定めることだ。リーダーは、ダイバーシティの面で競合他社と比べて自社がどの位置にいるのかを明確に把握し、意欲的な目標を掲げる必要がある。次に、採用率、定着率、昇進率という3つの先行指標に注目し、あらゆる段階の進捗を追跡する。
直感に反するように思えるかもしれないが、3つの指標のうち、採用は最も強力なレバーではない。むしろ、定着と昇進の改善が最も大きな効果をもたらす。多くの国では、すでに十分な数の女性が労働市場に入っている。問題は、昇進の階段を上る女性が少なすぎることだ。ガラスの天井を打ち破るには、なおさら足りていない。
効果のある取り組みに注力する
既存のダイバーシティ推進策の大半が成果を上げていないのは、企業が効果のないプログラムに投資しているためだ。こうした無駄な取り組みは、このテーマへの「疲れ」を招き、継続する意欲を損なうこともある。真の進展を促すには、企業は本当に効果のある取り組みに投資しなければならない。
• 「意欲が足りない」という思い込みを払拭する。 私たちの調査は、キャリアの初期段階では女性も男性と同じくらい意欲的であることを明確に示している。また、適切な企業文化のもとでは、女性(母親を含む)はその意欲を保ち、昇進していく。思い込みを持たないことが極めて重要だ。女性に挑戦的な職務や海外赴任の機会を与えないことも避けるべきだ。
• 女性にも男性にも柔軟な働き方を提供する。 データによると、柔軟な働き方は男女双方の定着率を高めるうえで最も重要な施策だ。ミレニアル世代の男性は特に、手厚い育児休業制度や職場内の保育施設を重視する傾向が強い。これは、ダイバーシティが誰にとっても利益になることを示すもう一つの好例であり、人材獲得競争において不可欠な取り組みだ。
• メンタリングではなく、スポンサーシップを推進する。少人数での気軽なコーヒー面談はあまり効果がないが、正式なスポンサーシップには効果がある。女性は、より上位の同僚が自分を後押しし、挑戦的な職務や海外での役割を得られるよう働きかけてくれることで恩恵を受ける。
• 見過ごされている有効策に目を向ける。女性の定着と昇進を改善する機会は、見過ごされていることが多く、費用面でも大きな負担にならない傾向がある。おそらく最も意外なのは、男性をダイバーシティ推進プログラムに巻き込むと大きな効果があることだ。上級管理職の85%を男性が占める。男性が参加すると、成功率は3倍になる。

粘り強く、取り組みを続ける
BCGでは、執行委員会の35%が女性だが、改善の余地はまだ大きい。出発点がどこであろうと、これまでの進展のペースがどうであろうと、変化を求め続けてほしい。私の拠点である日本でも、まだ道のりは長いが、これらの原則はすべて当てはまり、数字は改善している。
近ごろ、ニュースや調査、現場での議論に勢いが感じられ、このテーマをめぐる対話が世界的に広がっているのは心強い。しかし、すべての組織のリーダーがダイバーシティを強く推進しているわけではない。実際には、そうでないケースが多い。均質なリーダーシップチームのメンバーが、互いの考え方をよく知り、気兼ねなく意思疎通できるために自分たちのやり方がうまく機能していると感じていると、現状を変える動機はほとんど生まれないかもしれない。
ダイバーシティの必要性を理解し、口では賛同しながらも、進展が遅く、時間と資金の投入も重い一方で、将来の女性リーダー候補が少ないように見えるため、推進に熱心でなくなる人もいる。
しかし、これが現実だ。ダイバーシティがなければ、組織はいずれ行き詰まる。現状のバランスに満足している人は、一歩引いて優先事項を見直すべきだ。すべての企業リーダーが、これらの行動を呼びかける提言を実行し、誰にとっても活気があり健全な職場づくりに取り組む時だ。
