米国政府は最近、メキシコとの南部国境に壁を建設するための予算をめぐる党派間の対立により、1カ月にわたる一部政府機関の閉鎖を余儀なくされました。この問題をめぐり双方が譲らずに対立するなか、私はアジアの移住動向について考えるようになりました。
ADBの最新刊である『アジア経済統合報告書』によると、アジアは今なお、国際移民の出身地として世界最大の地域です。実際、世界の移民の3人に1人はこの地域の出身です。
アジア出身の移民は着実に増加し、約8,700万人に達しています。報告書によると、アジアへの移民の主な出身国は、中華人民共和国(PRC)が520万人、ロシア連邦が380万人、バングラデシュが370万人です。
これほど多くの人々が移動する主な要因には、紛争や、より良い教育・経済機会を求める願いがあります。近年、移住の新たな要因として注目が高まっているのが気候変動です。このテーマは、ADBの画期的な研究の対象にもなっています。
アジアからの移民の大半は、メイドや介護職員、建設現場で働く人々を含む肉体労働者など、半熟練・低技能労働者です。一方、アジアの熟練労働者は、域外の先進工業経済へ移住する傾向があります。
しかし、アジア諸国がより豊かになり、重要性を増す経済の中心地を抱えるようになるにつれ、今後は熟練したアジア出身の移民が、より故郷に近い場所にとどまるようになることも考えられます。
域内移住の拡大につながる動きはいくつかあります。例えば、ASEAN経済共同体(AEC)は、東南アジア諸国連合の10加盟国間で熟練労働者が自由に移動する構想を掲げています。ビザや就労許可の発給、また工学、看護、建築、医療、歯科、観光などの分野における相互承認協定(MRA)の交渉を通じて、この目標は徐々に実現しつつあります。
しかし、AECにおける技能移動に関するADBの研究は、各国および地域レベルの技術的・政治的な障壁が、専門職従事者の他のASEAN諸国への移動や、現地での専門業務の実践を妨げていると結論づけました。こうした障壁を取り除けば、実質的な利益がもたらされる可能性があります。
エコノミストのミタ・アディスティ氏は、試算しました。加盟国が労働市場情報の改善、語学・技能研修の提供、行政手続きの簡素化、半熟練労働者へのMRAの拡大など、移住を支援する措置を講じれば、ASEAN全体の経済成長率は2025年までに7.1%上昇する可能性があるとしています。
高所得経済では、人口動態に起因する労働力不足が、域内の途上国から来る移民に新たな機会を生み出しています。
オーストラリアの太平洋労働計画は2018年7月に始まり、キリバス、ナウル、サモア、ソロモン諸島、ツバル、バヌアツの国民が、最長3年間、オーストラリアの地方部や地域で低技能・半熟練の仕事に就けるようにするものです。オーストラリアは町や農場の労働力不足を補うことを目指しており、計画はさらに多くの太平洋島嶼国へ拡大される予定です。それにより、主要な沿岸人口集中地から離れた地域で、経済活動の活性化も図られます。
日本は2019年から、介護、建設、農業、造船など深刻な労働力不足に直面する14分野で、25万人を超える労働者に5年間のビザを発給する計画です。高度人材向けには別の新たな在留資格を設け、長期滞在と家族の帯同を認めます。
より多くの労働者を必要とする地域の国は、オーストラリアと日本だけではありません。
『エコノミスト』はと報じています。東アジア諸国が生産年齢人口の割合を維持するには、2030年までに15~64歳の人々を2億7,500万人受け入れる必要があるといいます。マレーシア、ベトナム、シンガポール、タイ、中国は労働者を必要としています。労働者が余剰となっている国には、バングラデシュ、インド、インドネシア、ミャンマー、フィリピンが含まれます。
貿易、株式、直接投資などの分野でアジアの地域統合が進む傾向は、大陸の労働市場にも広がるのでしょうか。答えは間もなく明らかになるでしょう。
