多様性を推進するビジネス上の意義が明らかになり、企業界では職場におけるLGBTの平等に向けて着実な進展が見られます。
現在、米国企業の75%が性自認を明示的に含む差別禁止方針を定め、93%が性的指向を対象とする方針を設けています。フォーチュン500企業のうち、ドメスティック・パートナー向け福利厚生を提供する企業の割合は、1999年の14%から2015年には64%に増加しました。フォーチュン500企業の40%はトランスジェンダーを対象とする医療保険を提供しており、2002年にはゼロでした。
過去数十年にわたる多くの研究から、多様性は生産性、協働、イノベーション、創造性だけでなく、評判、人材採用、従業員の定着にも良い影響をもたらすことが分かっています。企業は今、多様化が進む労働力を認識し、すべての従業員にとって安全で生産的な環境をつくる方針を実施するため、継続的に取り組んでいます。

LGBTを支援する方針は、差別の減少や、より開かれた企業文化と関連しています。さらに、そうした環境は、LGBT従業員の仕事への意欲、職場での人間関係、メンタルヘルス、生産性の向上とも結び付いています。包摂性を促進することは、企業にとって道義的な責務であるだけでなく、賢明な経営判断でもあります。
世界銀行グループでも、LGBTに関する方針は大きく進展してきました。ここ数年で、この課題を前進させる中から得た教訓は何でしょうか。
1.「初めから多様」であるだけでは不十分
120カ国以上で働き、140以上の言語を話す職員を擁する世界銀行グループは、常に「初めから多様」でした。しかし、多様な人材の確保や包摂的な職場づくりに取り組んできたにもかかわらず、この国際金融機関が公平な職場を実現するには、なお距離があります。LGBT職員を全面的に受け入れるという点では、組織文化が方針に追いついていません。
多様な職員の力を最大限に生かすうえで、最大の課題は人数を増やすことではなく、包摂的な職場とは何かについて理解を深めることです。単に「多様である」ことではなく、人種、ジェンダー、民族性にとどまらない多様性を生かし、さまざまな声が歓迎され、耳を傾けられる職場環境をつくることが重要です。
2. 数字を示す
経済学者が大半を占める組織では、数字は千の言葉に値します。2011年、世界銀行のLGBT職員ネットワークであるGLOBEは、ヒューマン・ライツ・キャンペーンの企業平等指数などの先例を踏まえ、初の職場環境調査に着手しました。当時、世界銀行グループで働くLGBT職員が直面する課題について、利用できるデータはありませんでした。この調査は、見過ごされていた問題を明らかにし、すべての人にとって包摂的な職場をつくるための提案づくりを可能にしました。また、多様性をめぐる議論にGLOBEが参加するための基盤にもなりました。
3. リーダーの支援を得る
2011年から2016年にかけて、LGBT課題に対する組織的な支援は極めて限られており、LGBT職員に関する組織上の問題に対応する取り組みも同様でした。しかし、上級職員の支援が大きく寄与し、この1年で議論の雰囲気は大きく改善しました。特に次の2分野で、リーダーシップの支援が役立ちました。
2016年、職員ネットワークが正式に認定され(GLOBEもその一つ)、各ネットワークに会計年度の予算として1万米ドルが割り当てられました。
世界銀行の雇用価値をさらに高める解決策を検討・実施する取り組みの一環として、育児関連の福利厚生が改定され、新たに子どもを迎えるための計画を支援する給付が加わりました。この給付は、自然妊娠または適法な養子縁組によって子どもを迎える予定の職員に、経済的な支援を提供します。
LGBTの包摂をめぐる議論がこうした重要な進展を遂げ、とりわけ家族のあり方が変化していると認識されたからといって、根深い課題が残っている事実を覆い隠してはなりません。調査によると、カミングアウトしていない職員は依然として多く(特に女性、若年層、不安定な雇用契約の職員)、LGBT職員の存在が見えにくい状態も続いています。職場環境は依然として安全ではないと受け止められており(特に女性ではその傾向が強く、ジェンダーと性的指向の双方に基づく「二重のよそ者」という立場の存在をさらに裏付けています)。国別事務所のLGBT職員は 反LGBT法のある国を中心に、今も孤立感を抱いています。トランスジェンダー職員の代表性は、その固有の状況を明らかにするには依然として低すぎます。差別を経験する職員は今も多く、侮辱的な発言や同性愛嫌悪の冗談は増加しているにもかかわらず、対処されていません。これは説明責任が果たされていないことを示しています。
GLOBEが次に大きく取り組むべきなのはこの点です。世界各地の事務所でLGBT職員が直面する多くの課題に対応できるよう、組織全体の管理職に必要なツールと研修を提供し、差別やハラスメントに対するゼロトレランス方針をついに厳格に実施する必要があります。
