ジョージ・フロイドさんの殺害以来、世界各地のビジネスリーダーが人種差別と闘うことを約束してきた。
BBCクリエイティブ・ダイバーシティ担当ディレクターで、『Diversify』の著者でもあるジューン・サーポンが、進展が見られるかを問いかける。
彼女は、包摂的なリーダーが優先すべき6項目を示す。
2020年夏、ミネアポリスでジョージ・フロイドさんが警察によって残忍に殺害されたことを受け、米国をはじめ世界各地のビジネスリーダーから、企業内やより広い社会で人種差別と闘うという前例のない数の誓約が寄せられた(多額の資金拠出を伴うものも多かった)。しかし、2022年を迎えたいま、ビジネスリーダーが約束を果たすと信頼できるのか、大きな疑念が残っている。
懐疑的な見方は資金の話から始まる。フロイドさんの死から1年後の2021年夏、人種間の公平性に取り組むために誓約されたとされる500億ドルのうち、支出または確約済みだったのはわずか2億5,000万ドルだった。クリエイティブ・インベストメント・リサーチの分析による。とはいえ、人種差別や人種間格差に取り組まないことのより大きな代償は、支出額や未支出額よりも、進展の欠如から膨らみ続ける信頼の欠如に表れている。誓約や約束が最高潮に達した時でさえ、私たちの多く(特に包摂を長年訴えてきた人々)は、人種的正義への突然の、表向きは圧倒的な支持を目の当たりにし、それがいつまで続くのかと考えていた。
人種的不正義を受けてきた人々は、自らの経験や歴史から、言葉だけを信じてはならないと学んできたため、不信感を抱き続ける傾向がある。行動が伴わない言辞は懐疑心を強め、信頼の欠如を広げる。信頼が薄れれば、最も誠実でよく練られた包摂と人種的正義の取り組みでさえ、成功に必要な関与を得ることがいっそう難しくなる。そうなると「包摂疲れ」が生じ、支持が失われる危険がある。
この憂うつな悪循環を断つには、リーダーは大胆で、居心地の悪さを伴う一歩を踏み出すと決意しなければならない。制度がもたらす恩恵は分かち合う必要があり、多くの場合、制度そのものを根本から変えなければならないと理解する必要がある。そして、その理解に基づいて迅速に行動しなければならない。届けたい相手にとって、聞くことは誤解を招くことがあっても、目にすることは信じることにつながる。信頼の欠如を修復するには、意義ある行動が必要だ。
私は著書『Diversify — Six Degrees of Integration』で、こうした課題について書いた。2017年の出版以来、確実に変わったことが一つある。
当時、私は多くの場合、多様性がビジネスにとって有益だと企業のリーダーに説明しなければならなかった。この特別な4年間で、私たちはその「なぜ?」という問いをほぼ乗り越え、「どうすればよいか?」へと進んだと言えることをうれしく思う。また、2019年から英国放送協会(BBC)のクリエイティブ・ダイバーシティ担当ディレクターを務める中で、個人的な経験から、「どうすればよいか」を実践するのは決して容易ではないものの、進展は可能だと知った。意思決定の最上層にマイノリティのリーダーを加えることから、コンテンツ制作への取り組みを見直し、マイノリティの才能を発掘して後押しすることまで、あらゆる面で前進できる。
それでも、2022年が、2年前の夏に世界各地で交わされた誓約が示す規模で包摂を実現し、真の進展を遂げる年となるかどうかは、リーダーが古い習慣を断ち切れるかどうかに大きくかかっている。
肌の色にかかわらず、リーダーも人間であり、人間は習慣に縛られやすいことで知られている。人種的包摂の改善となると、特に企業社会の多くのリーダーは、いつものやり方に戻る。目標を掲げ、数値目標を設定するのだ。しかし、人種間格差は、数値上の代表性だけの問題ではない。白人が標準とされる状況で、白人以外の人々が職場で自分たちを大切にされていると感じられるかどうかにも表れる。
人々の心や考えを真に変えるには、数値目標を達成するために必要なものとは異なる資質がリーダーに求められる。リーダーは大胆であると同時に、自らの弱さをさらけ出せなければならない。包摂しようとしている人々を自ら信頼し、その信頼を通じて、多様な従業員や顧客からの信頼を得る必要がある。信頼の構築は、包摂的なリーダーシップの基盤だ。
その考えのもと、包摂的なビジネスリーダーを目指す人々に向けて、これからの1年で優先すべき6つの項目を示したい。
1. 思いやりを持つ。互いの現実を理解する。人種差別的な暴力や差別によるトラウマに、沈黙で応じることはできない。沈黙は、よくても無関心という印象を与えるからだ。たとえば、チームで唯一の黒人である人にとって、そうした無関心と受け取られる態度は、孤立感を強めることがある。異なる民族的背景を持つ人々の経験に向き合い、耳を傾ける姿勢を持とう。特に、自社で採用され、昇進するうえでの障壁を見極めることが大切だ。
2. 白人以外の人々が皆同じではないと認識する。歴史的に、人種差別は世界各地で民族集団ごとに異なる形で作用し、今日、さまざまな非白人集団が直面する課題や状況にも違いをもたらしている。白人以外の人々を「黒人、アジア人、少数民族(B.A.M.E)」や「有色人種」といった単一の集団として扱い、一律の対応を取れば、格差はさらに広がる。チームや部門で特定の人口集団の代表性が低い場合は、それを公に認めよう。そうしなければ何も変わらない。変更が必要なプロセスや手続きについて、該当する従業員ネットワークやダイバーシティ&インクルージョン担当チームに助言を求めよう。
3. ネットワークを活用してマイノリティの人材にアクセスする。従来からの手続きや組織構造は、民族的多様性の実現や文化的包摂の確立を妨げる制度的障壁を生み出すことが多い。若手やキャリア初期の人材から、より多様な人材層にアクセスできるよう、他組織の人脈と協力しよう。黒人やマイノリティの同僚が、あなたのネットワーク内でメンターやスポンサーに出会えるよう支援しよう(自分自身の目標を設定することも含む)。
4. 構造上・手続き上の障壁を取り除く。革新や変化を制約する構造を変えよう。見習い制度や就業体験など、マイノリティ向けの新たな参入経路を設けよう。多様性の高い他チームの同僚を自分のチームに迎え、新たなスキルや視点を取り入れる取り組みに前向きになろう。こうした取り組みは、部門間の壁を取り払い、新たなキャリアの機会を生み出すことにもつながる。
5. 社内外でアライになる。自社の黒人やマイノリティの従業員とそのネットワークを支援するため、黒人・マイノリティを支えるアライのネットワークに参加するか、立ち上げを手伝おう。自分のグローバルなネットワークを活用し、異なる地域の黒人・マイノリティのアフィニティ・グループやアライをつなぐ協力者をさらに探そう。人種差別は昔から、そして今も世界的な問題であり、効果的な世界規模の対応が必要だ。
6. 長期的な視点を持つ。社会のあらゆる側面に浸透する構造的人種差別は、何世紀もかけて形作られてきたものであり、解消には長期にわたる継続的な取り組みが必要となる。構造的な変化を実現するには、この課題に専任で取り組むスタッフと継続的なプログラムが必要だ。限られた介入をいくつか行うだけでは足りない。
BBCで最近導入した長期的な変革の一つに、多様性アドバイザー・プログラムがある。迅速な進展をもたらし、私たちが目指す方向を明確に示した取り組みだ。BBCの主要な各リーダーシップ・グループには現在、社内の多様なアドバイザーが2人ずつおり、少なくとも1人は人種に関する課題の知識と理解を備えている。これにより、最上位の意思決定委員会におけるマイノリティの代表性を急速に高めることができた。人種の問題に取り組む際、変革のプロセスに、関連する経験を持つ人々が関与するようにすることの重要性は、いくら強調してもしすぎることはない。リーダーシップ・グループの多様性を高めることは、多様な従業員の賛同を保ち、多様な顧客層に心から応えるうえで欠かせない。
また、世界を代表するメディア組織の一つとしての中核的な使命を再び活性化させるため、歴史的な責任を捉え直し、物語を共有し、そうでなければ触れることのなかったかもしれない人々に経験を届ける取り組みを進めた。その中心となったのが、クリエイティブ・ダイバーシティ・コミットメントだ。2022年には、これについてさらに多くのことを耳にするだろう。
この誓約では、3年間で多様なコンテンツに1億1,200万ポンドを発注することを目標としている。マイノリティの作家やその他のコンテンツ制作者は、私たちや他の大手メディア企業から、リスクが高すぎると見なされることがあまりにも多かった。今では、多様な背景を持つストーリーテラーを積極的に支援し、これまで語られてこなかった物語や十分に伝えられてこなかった物語を、テレビやラジオで実現しようとしている。
この取り組みに先立つ作品ではあるが、こうしたアプローチが大きな変化をもたらしうることを示す心強い例の一つが、ミカエラ・コールによる、彼女自身が受けた性的暴行を題材にしたフィクション作品『I May Destroy You』の世界的な大成功だ。BBCと米国のHBOが共同発注した先駆的なミニシリーズで、ガーナ系の英国生まれの作家・俳優が手がけたこの作品は、パンデミックの第一波と人種的不正義への怒りが高まる中、2020年夏に放送された。ニューヨーク・タイムズ紙は「不安に満ちた世界にぴったりの番組」と評した。BBCが新たにクリエイティブ・ダイバーシティに取り組むことで、マイノリティの人材が執筆・制作・出演する、時宜にかなった社会的意義のあるヒット作がさらに数多く生まれると期待している。
2022年には、あなたの業界や企業も含め、さまざまな業界や企業から、同じように人々を勇気づける物語が数多く語られることを願っている。
ジューン・サーポンOBEは、BBCのクリエイティブ・ダイバーシティ担当ディレクターであり、『Diversify – Six Degrees of Integration』および『The Power of Privilege — How White People Can Challenge Racism』の著者。いずれもハーパーコリンズから出版されている。
