ご存じですか。世界の企業のほぼ4分の1が、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の取り組みを進めることは、今後数年間の業績に大きな違いをもたらすと考えています。リスキリングやスキル向上が大きな影響を与えると答えた企業と同じ割合です。
つまり、組織は財務目標の達成にD&Iが不可欠だと考えており、リーダーの平均80%が、D&I全般への取り組みにコミットしていると述べています。したがって、D&Iの取り組みを成功させようとするリーダーは、それが人と事業の戦略に関わるものだと理解しています。
残念ながら、変革への決意や情熱だけでは、前進を持続させることはできません。1月にダボスで開催された2019年世界経済フォーラム年次総会の期間中、私はジェンダー格差の解消をテーマとする複数のパネルに参加し、登壇もしました。私が感じたのは、私たちが力を合わせ、善意を持ち、細部に注意を払ってきたにもかかわらず、前進はしていても、まだ道半ばだということです。成功例が見られる分野もありますが、全体としては、どうも足踏みしているようです。では、どうすれば勢いを高められるのでしょうか。
1. リーダーシップチームを評価する
多くのCEOがダイバーシティに関する誓約を掲げ、変革への意欲を誠実に示しています。しかし実際には、CEOのコミットメントだけでは足りません。私たちの調査や顧客との経験から、CEOのコミットメントは成果につながり得ますが、それを軸にプログラムやプロセスが明確に設計され、調整されている場合に限られることが分かっています。
すべてのリーダー、すべてのマネジャーは、行動を約束するだけでなく、その責任を問われる必要があります。他の事業目標と同様に、リーダーに説明責任を負わせることが、前進を促す鍵です。マーサー・ユーロパックの地域プレジデントを務めていた時、私は人材・インクルージョンのセンター・オブ・エクセレンスと緊密に連携し、ダイバーシティ目標を実行に移しました。
たとえば、営業提案にキャリア初期の女性社員を参加させる目標を導入しました。これは二つの成果をもたらしました。女性が顧客との商談機会に触れる機会が増え、マーサーの受注率も上がりました。営業チームに少なくとも一人の女性がいる場合、全体の受注率は28%上昇しました。
このようなコミットメントと説明責任を、どうすれば確かなものにできるでしょうか。適切なリーダーやマネジャーがいるか、自問してみてください。それを確実にするには、リーダーと後継者候補の育成にインクルーシブな行動を取り入れる必要があります。また、リーダーが中核的な価値観に沿って行動しない場合、厳しい決断を下す覚悟も必要です。
2. 偏見を見つけるために、偏りのない方法を用いる
データや分析を活用する企業は、どのプログラムやプロセスが均質な従業員構成を生む主な要因なのかを、より的確に評価できます。私たちの「2019年グローバル人材トレンド」調査では、経営幹部と人事リーダーの合計半数が、女性やその他の過小代表グループの人々が組織内で昇進できない理由を示すデータに基づいた知見を、事業に「最も価値をもたらす」上位3つの知見の一つとして挙げました。
人材分析は、こうした重要な知見をもたらします。さらに、進歩するテクノロジーにも目を向けてください。私たちは、テクノロジーの量と種類が急速に増えているのを目の当たりにしてきました。そうしたテクノロジーは、偏りのない企業文化の醸成、採用、後継者計画、業績評価などを支援します。
偏見の要因を探る際には、確実な前進を目指す姿勢を崩さないでください。手早くありきたりな答えで済ませれば、得られる結果もおそらくいつもどおりです。
3. D&Iプログラムを従業員一人ひとり全体を支えるものと捉える
私たちの「健康、経済的安定、そして賢く働く」調査では、女性はキャリアの継続性や機会、雇用主が提供する福利厚生制度へのアクセスにおいてジェンダー格差に直面しており、男性よりも大きなストレスを抱えていることが分かりました。
このストレスは、さまざまな形で表れます。たとえば、昇進や転職に挑戦する意欲は、経済面での自信と相関しています。女性は依然として経済的に不安定で、現在と将来の見通しに対するストレスも大きいため、キャリアでリスクを取ることをためらう状況が続くでしょう。
ジェンダー格差の問題は、直感に反するアプローチを示唆しています。ジェンダーの均衡を実現するには、違いを小さく見せるのではなく、違いを認め、尊重することが必要です。女性と男性で身体的な違いがあり、キャリアや仕事と生活の両立における課題、社会からの期待、経済的安定への向き合い方も異なるのであれば、それぞれの状況に合うように、福利厚生、教育、マネジメント、研修のプログラムを調整すべきではないでしょうか。
その状況を把握するうえで、データ分析は重要な役割を果たします。組織が賃金格差のある分野や、個別に話し合うべきライフステージを特定する助けになります。また、個別化された情報やツールに加え、コーチング、メンタリング、ジェンダーに特化したプログラムへの経営幹部の支援を通じて、女性が健康、経済的安定、キャリアを総合的に考えられるよう支援できます。
ダイバーシティと収益性をともに前進させる
従業員23,000人を擁するグローバル企業のリーダーとして、私は収益性とD&Iをゼロサムの関係とは考えていません。D&Iはより広く、リーダーシップや従業員のウェルビーイングにも関わる課題だと捉えています。しかし、CEOがそう信じているだけでは不十分です。適切なリーダーたちと力を合わせる必要があります。
私たち自身、リーダー、プロセス、プログラムを、定期的に厳しく偏りなく見直すことが大切です。そして、会社の歩みにすべての従業員を巻き込むだけでなく、仕事の未来へと続く道のり全体に参加してもらうため、革新的な変革を導入する必要があります。
マーサーも他の企業と同じく、ジェンダー平等への道を歩んでいます。積極的に耳を傾け、自社のデータに誠実に向き合い、従業員それぞれの状況に寄り添い、個人としてもリーダーシップチーム全体としても行動に移すと約束することで初めて、私たちは変革に向けて一丸となり、足踏みをやめ、すべての人にとって持続可能な未来へと前進できます。
