世界経済フォーラムの年次総会である「ダボス2024」の一環として毎年開催される一連のセッション、オープンフォーラムは、世界各地の活動家、アーティスト、学者、公共部門やビジネス界のリーダーが主導する議論に、幅広い人々が参加することを促すことを目指しています。
今年、パネリストは希望の必要性について語り、参加者は多様な声と、気候変動や医療におけるジェンダー平等といったテーマの議論に参加できる機会を歓迎しました。
科学などの分野で多様性と代表性を高めることは、環境などの重要課題について、より幅広い議論を促す助けになります。
誤情報があふれ、懐疑論や恐怖をあおる言説が広がる現代、科学は疑念の嵐の中心に置かれています。かつて事実とみなされていた、証拠に基づく真実の根幹さえ、その信頼性が問われています。
オープンフォーラムは20年以上前に創設されました。ソーシャルメディアやライブ配信が普及する前、ダボスでの対話をより広い人々に届けることを目指していました。年次総会のセッションの大半がライブ配信されるようになった現在も、オープンフォーラムは世界各地のパネリストと一般の人々が交流できる場であり続けています。年次総会の開催期間後も対話を続け、人々(特に若い参加者)が変革を起こす活動により深く関わるよう促すことが目標です。
2024年のオープンフォーラムのセッションでは、気候科学からサイバーセキュリティ、高齢化、医療におけるジェンダー平等まで、重要なテーマを科学的な視点から掘り下げました。各セッションの映像はすべて、オンラインで視聴できます。テーマの狙いは、科学への信頼を取り戻す必要性への認識を高めることです。テーマは、「研究室から暮らしへ:行動する科学」です。
希望のメッセージ
オープンフォーラム2024の各セッションを通じて中心となったメッセージは、希望でした。パネリストは、紛争や気候危機、生活費の上昇など、現在直面する多岐にわたる世界的課題を前に、圧倒され、社会から取り残されたと感じやすいことに同意しました。一方で、どんなに小さな行動でも変化を生み出せること、希望を失えば前向きな影響が生まれるのを妨げてしまうことも、参加者に伝えました。また、将来に悲観的になったり落胆したりする人々の気持ちを、特に若い人々について、私たちは理解し、思いやるべきだと呼びかけました。
あるオープンフォーラムのセッションで、霊長類学者・人類学者のジェーン・グドールは、戦後の英国で育った際に直面した困難について参加者に語りました。そうした経験が人生への備えとなり、彼女をより強くし、困難な時期を乗り越える支えとなる、より良い未来への希望を抱かせてくれたといいます。特に若い人々の間で、将来への苦悩や悲観が広がっていることも認めたうえで、善いことを行い、影響をもたらすには楽観的であることが欠かせないと訴えました。

同様に、「テクノロジーとともに深呼吸を」のセッションで、アーティストで活動家のベンジャミン・フォン・ウォンは、参加者に自分自身にもっと優しくするよう呼びかけました。特に気候変動について、世界に大きな変化をもたらすにはどうすればよいか、時間をかけて考えるよう提案しました。「実現できることに十分な希望を抱き、明るい未来を思い描ければ、誰もが行動に加わるでしょう」と説明しました。
先住民の活動家シエ・バスティダも、希望と許しについて同様の思いを語りました。気候変動対策の活動を休むことで、燃え尽きを防げると参加者に話しました。燃え尽きれば目標を達成できなくなるからです。参加者は彼女の言葉に共感している様子でした。実際、会場にいた高校生の中には、自分たちと同じように若く、気候問題に熱心に取り組む彼女が登壇する姿を見られたことを、前向きな経験として語る人もいました。
気候変動などの世界的課題を解決するには、より良い未来への希望が欠かせません。同時に、行動も必要です。一人ひとりの小さな変化も役立ちます。世界的課題が人々に及ぼす影響は、その人によって、また程度によって異なりますが、気候危機は誰もが何らかの形で影響を受けます。「薄氷の上で」のセッションでは、北極の夏季海氷の崩壊とその波及影響を取り上げました。スイスを拠点とする科学者のルジツァ・ダディッチはこう語りました。「10年前、スキーをしていると、山の雪が少なくなっていることに気づき始めました。今では年々減っていて、それが怖いのです。」
多様性と代表性:科学への信頼を取り戻す
オープンフォーラムは、世界各地のマイノリティが参加し、あらゆる角度から議論できるよう促しました。11のパネルのうち9つに若者の声が含まれ、パネル全体の登壇者55人のうち33人が女性でした。年次総会の開催国を反映し、7つのセッションにはスイスからの登壇者が参加した一方、アジア、アフリカ、中東、南米からの代表者も加わりました。
包摂を通じて科学への信頼を取り戻すには、多様性と代表性が欠かせません。世界的な危機の時代には、楽観のメッセージも重要です。科学分野の多様な声を中心に据えることで、オープンフォーラムはそれらの声に光を当て、参加者を鼓舞する場を提供しています。さまざまな背景を持つ学者、CEO、活動家、アーティスト、公共部門の代表者、その他の変革を担う人々を集め、批判的な対話を促すとともに、多面的で包摂的な議論を実現します。
各セッションの最後には、参加者が加われる双方向の質疑応答も設けられています。登壇者も対話を双方向に進めました。例えば、クリーンテック企業の創業者であるピーター・ベンハー・ニェコは、希望を持ち、自分の能力を信じることの大切さを伝えるため、東アフリカに起源を持つ言語ルオ語で「やり遂げるまでは不可能に思える」ということわざを参加者に教えました。
科学は多分野にまたがる複雑なものですが、希望と包摂は科学への不信に立ち向かう助けになります。多様な声に耳を傾けることで、科学的な議論にあらゆる立場が反映され、より多面的な議論が生まれます。希望、包摂、多様な視点を育むことで、科学の複雑さに向き合い、平等だけでなく気候保全などの課題においても、変革をもたらす道を切り開くことができます。
