ニュースを細かく追っていなくても、BBCの上級記者キャリー・グレイシーのことは耳にしたことがあるだろう。彼女は、自身が「秘密主義で違法」だと考える賃金慣行を理由に辞職した。その後、ゴールデングローブ賞授賞式では、オプラが性暴力と、「時代は終わった」とされた「圧倒的な権力を持つ男性たち」を非難する、心に響くスピーチを行った。
2014年、世界経済フォーラム(WEF)が発表した『ジェンダー・ギャップ報告書』は、世界が2095年までにジェンダー平等を達成すると予測した。しかし現在、その見通しは後退し、格差が解消するのは早くても2133年と予想されている。今から117年後、何世代も先のことだ。世界を変えるであろう3人の娘を持つ母親であり、せっかちな楽観主義者でもある私は、子どもたちも孫たちもジェンダー平等を目にすることがないと思うと、もどかしく感じる。
ダボスで開催される世界経済フォーラム年次総会が、「分断された世界に共通の未来を築く」をテーマに、女性のみのパネルによって議長を務められるのは、今回が初めてだ。
議題には、これまでフォーラムで取り上げられたことのないテーマも含まれる。「ジェンダー、権力、セクシュアルハラスメントの撲滅」や「セクシュアルハラスメントをなくすには」といったテーマだ。
民間セクターのパートナーは、「女性リーダー夕食会―次なる変革の波」や「平等への加速―女性の前進を妨げる神話」など、数十件のサイドイベントを企画している。セクシュアルハラスメントから不公正な賃金まで、女性が直面する問題は、この分断された世界の一因となっている。
第4次産業革命がジェンダー格差に与える影響を考えることは極めて重要だ。技術変化の加速は、経済、政治、社会において女性が担える役割にどのような影響を及ぼすのだろうか。私が特に気にかけているのは、第4次産業革命が不平等を悪化させるのか、そして、とりわけ女性にその影響が及ぶのかという問いだ。
だからこそ、女子を対象とした科学・技術・工学・数学(STEM)教育の文化を育て始めなければならない。私たちの活動の一つであるユース・フォー・テクノロジー財団(YTF)は、若者や女性がテクノロジーと起業を活用して経済的機会を生み出すことを後押しするとともに、より安定し、自動化される可能性の低い職業を目指すよう女子を鼓舞することに力を注いでいる。
製造業や建設業のように、男性が大半を占める産業は、自動化の影響を最も受ける可能性が高い。一方、心理学、医療、看護のように自動化されにくい分野では、競争が激しくなるだろう。
こうした変化に対応するために女性が必要とする手段は、すでにある。世界全体で見ると、一般に女性は男性より多くの学位を取得している。大学院の学位も博士号も法学の学位も、女性のほうが多い。MBAの取得数ではまだ遅れを取っているが、追いつきつつある。
かつて「ソフトスキル」と呼ばれていた、女性が職場にもたらすスキルは、今や収益性があり重要なものとして認識されている。相手のボディーランゲージから状況を理解する力、感情知能、合意を形成する力、人々を指導する力などだ。
女性に公正な機会が与えられ、男性の同僚に近い賃金が支払われる、多様性に富んだ人材構成の企業では、誰もが恩恵を受ける。
ミシガン大学の研究によると、複雑なビジネス上の課題を解決する男女混合のグループは、男性だけのグループより常に優れた解決策を導き出す。たとえ男性だけのグループの各メンバーが、男女混合グループのメンバーより平均して個人の能力が高くても、結果は変わらない。
現在、消費者の購買の約80%を女性が担っている。数年前、フォードは男女が車に何を求めているかを調査した。男性は車の外観、馬力、エンジンの回転数と出力、運転席に注目した。
女性は車内、助手席、トランクに注目する傾向があった。フォードは、男性より女性のほうが多く車を購入していると気づき、女性のほうが男性より爪が長いことを踏まえて、ドアハンドルをくぼませた。フォードが女性のマニキュアを気にかけるようになれば、女性にはそれだけの影響力があるということだ。女性には力がある。それを使い、その力を信じればよい。
企業は30代の有能な女性を失いつつある。多くの女性が子どもを持ち、「子どもかキャリアか」の選択を迫られるのがこの年代だからだ。多くは子どもを選ぶ。第4次産業革命は、短期的にはこうした女性に有利に働く可能性がある。
家事の自動化がさらに進めば、ケアを担う人であり家計を支える人でもあるという二重の負担が、いくらか軽減されるかもしれない。同時に、リモートワークの機会の増加など、働き方の変化によって、両親が仕事と家庭をより両立しやすくなる。
複数の世界的な調査は、女性の上級職登用が進んでいる企業は、主要な収益性指標のすべてで競合他社を上回ることを示している。そうした成果を望まない人がいるだろうか。経営委員会にデータを示すとき、これは政治的な正しさや多様性の問題ではなく、収益に関わる話だ。こうした企業は、女性人材を育成し、定着させることで、生産性と収益性を高めている。
多くの企業にとって、それは働き方を調整することを意味する。女性にとっては、勤務時間を調整してほしいと求めることを意味する。女性が柔軟な勤務時間を得られない主な理由は、私たち自身がそれを求めないからだ。
自信は成功に欠かせない。コロンビア大学の研究は、男性が自分の能力を約30%過大評価する傾向がある一方で、女性は自分のスキルを日常的に過小評価する傾向があると指摘している。必要なのは、自分の実力に対する認識を、実際の実力に見合うものにすることだ。
女性はありのままで、正直である必要がある。そうすれば、柔軟な勤務時間や昇進、勤務予定をより自分で管理すること、あるいは賃上げを求められる。女性が昇給を求める頻度は男性の4分の1で、求めた場合でも、要求額は男性より3分の1少ない。この状況は変えられるが、まず自分たちには価値があると認識しなければならない。
女性は、黙々と働き、規則を守り、努力すれば、生まれ持った才能が報われると考えがちだ。誰かが肩をたたいて、「経営幹部への鍵をどうぞ」と言ってくれる、と。
ところが、周囲の男性が昇進していくのを目にする。彼らのほうが能力は低いと分かっていても、自信があるのだ。成功においては、自信は能力と同じくらい重要だ。自信が、考えを行動に変える。
では、分断された世界に共通の未来を築くことと、これはどう結びつくのだろうか。
今から2020年までに生まれる仕事の大半には、テクノロジーが関わる。女性がそうした仕事で力を発揮するために必要なスキルを理解することが重要だ。これは女性が新たなキャリアを切り開き、自らの強みを際立たせる機会となる。
新たなデジタル環境は、女性起業家が比較的少ない投資で事業を始め、世界中で商品やサービスを販売する柔軟性ももたらす。昨年8月、eBayはアフリカ6カ国の出品者の商品を自社プラットフォームに掲載すると発表した。それまで存在しなかった機会だ。
特に、まだ生まれていない産業では、必要とされるスキルを正確に見通すのは容易ではない。しかし、高度な技能を持つ労働者への需要は高まると考えられる。女性には、技術システムの中で働き、技術の進歩によって生まれる不足を補うためのスキルが必要になる。
機械にはできない仕事への需要も高まる可能性がある。共感、思いやり、チームを越えた協働といった、人間に本来備わる特性や能力に頼る仕事だ。これらは、女性に多く見られるとされるスキルである。
第4次産業革命の影響を受けないとしても、現在女性が多くを占める仕事が低く評価されたままになるリスクは依然としてある。それはジェンダー格差をさらに広げ、全体的な不平等を拡大させ、将来の労働市場で女性が才能を発揮することをより難しくする。
この課題を克服するには、政府、民間セクター、市民社会を含むすべての部門の連携と参加が必要だ。

