新著でラン・アブラミツキーと共著者は、何百万人もの移民の人生をたどり、彼らとその子どもたちが米国でどのように成功を収めたのかを探る。
本書は、移民が国を「乗っ取る」といった説や、犯罪率を上昇させるという説など、移民をめぐる一般的な神話を覆す。
著者は、この研究が米国の移民政策を形づくる人々に、移民を考える際には長期的な視点を持つよう促すことを願っている。
ニューヨーク市のエリス島博物館の壁には、名も知られていないイタリア人移民の言葉が記されている。「通りが金で舗装されていると聞き、私はアメリカに来た。ここに着いて三つのことが分かった。第一に、通りは金で舗装されていなかった。第二に、そもそも舗装すらされていなかった。そして第三に、舗装するのは私だと期待されていた。」
アメリカに来たばかりの人々の生活を見つめたこの厳しい観察から、スタンフォード大学の経済学者ラン・アブラミツキーの新著、『Streets of Gold: America’s Untold Story of Immigration Success』 (Public Affairs、2022年)は、かつての移民はすぐに富を築いた一方、今日の移民は後れを取っているという懐古的な見方を検証する。
「この引用にある移民は、移民がアメリカで繁栄するには自ら道を切り開かなければならないことを、よく分かっていました」と、経済学教授で、人文学・科学学部の社会科学担当上級副学部長でもあるアブラミツキーは語る。「これは、本書が覆す神話の一つ、つまり、かつての欧州移民は簡単に『無一文から大金持ち』になれたという考えを示す格好の例です。」
プリンストン大学の経済学教授リア・ブースタンとの共著である本書は、アメリカに渡った何百万人もの一般の移民とそのネットワークに関するデータを分析し、彼らとその子孫が米国で時を経てどのような道を歩んだかを明らかにする。
二人はまた、過去も現在も、移民はアメリカでの生活に適応しようと努めていることを見いだした。英語を学び、生活の基盤ができると移民の集住地域を離れることも多く、米国生まれの人と結婚することも多い。米国で暮らす期間が長くなるにつれて、子どもにアメリカ風の名前を付ける傾向もある。
「こうした知見は、今日の緊迫した移民論争に教訓をもたらします。多くの人が恐れるように、移民が永続的なよそ者の立場に甘んじるどころか、移民とその子孫は、広く共有されるアメリカ文化に参加し、アメリカ人としての強いアイデンティティーを身につけています」と、アブラミツキーとブースタンは本書で述べている。
世界経済フォーラムは、多様性、公平性、包摂性に向けて何をしているのでしょうか?
新経済・社会センターは、経済と技術の変化が雇用、スキル、機会をどのように変えているかを理解するため、リーダーたちをつなぐ。
知見の共有と協働を通じて、同センターは、移行期に人々と社会を支える包摂的な経済モデルをパートナーが探ることを可能にする。
ビッグデータで移民の動向を明らかにする
米国の移民に関する新たな知見は、アブラミツキーとブースタンが10年以上かけて集めた大規模なデータセットから得られた。そこには、米国国勢調査局や内国歳入庁など政府機関の歴史的記録が含まれる。また、エリス島オーラルヒストリー・プロジェクトの聞き取り記録も活用した。
二人の研究者は合計で、1880年から2020年にわたる何百万ものデータ項目を収集した。
移民がどこに定住し、どのような仕事に就き、誰と結婚し、子どもにどんな名前を付けたかをたどった。
コンピューター・アルゴリズムを開発し、現代のデータ分析ツールを使うことで、アブラミツキーとブースタンは移民とその子孫を結び付けることもできた。
これにより、移民の子どもは貧困の中で生まれ、貧しいままでいるという、もう一つの一般的な神話を覆すことができた。
移民は低賃金の仕事に就くことが多い一方、その子どもたちは経済的に大きく上昇しており、この傾向は今日まで続いていることが分かった。「移民の子どもたちはより貧しい世帯で育つにもかかわらず、中流階級、さらにはそれ以上に到達できます。これは今日、ほぼあらゆる出身国の家庭に当てはまり、エルサルバドル、メキシコ、ラオスのような比較的貧しい国の出身者も含まれます」と、アブラミツキーとブースタンは記している。
研究者たちは、この傾向を説明する二つの特徴を明らかにした。
第一は、場所、場所、そして場所だ。移民は子どもにより多くの機会をもたらす地域へ移り住む傾向がある。歴史的には、北東部、中西部北部、西部の一部がそうした地域だった。いずれも産業の見通しがより良く、公立学校制度も広く整っている。移民は南部にはあまり移り住まなかった。20世紀半ばまで、南部の大半は農業地域で、経済的な見通しが乏しかった。
研究者たちによると、第二の説明は、移民はしばしば本来の能力に見合う収入を得ていないため、成功の基準が人為的に低くなり、その子どもたちがそれを上回りやすいということだ。「ロシア人科学者が結局ウーバーの運転手になる、という典型的な例を考えてみてください。その収入は、本来の才能や能力を十分に反映していません。しかし、その子どもたちが米国の学校を卒業し、訛りのない英語を話すようになると、同程度の収入の家庭で育った同世代の人々にすぐ追いつき、追い越すことができます。おそらく親が、お金では買えない価値観やスキルを伝えたからでしょう」と、アブラミツキーとブースタンは本書で述べている。
移民家族の物語
アブラミツキーとブースタンのデータ分析には、自分たち自身のものも含め、個人的な物語が随所に織り込まれている。
アブラミツキー自身も移民だ。1999年にノースウェスタン大学で経済学の博士号を取得するため米国へ移住した。また、移民家族の出身でもある。1930年代から1940年代にかけて、祖父母はポーランドからイスラエルへ逃れた(悲しいことに、ポーランドに残った家族のうち、曾祖父母や祖父母のきょうだいを含む人々はホロコーストで殺害された)。
アブラミツキーの他の親族の一部はそれよりずっと早くポーランドを離れ、新著で取り上げるエリス島への大量移民の時期に米国へ渡った。
本書の調査中、アブラミツキーは古い国勢調査記録から自分の親族を見つけることができた。ランの米国在住の親族の一人、メンデルは「廃品運搬人」と記録されていた。もう一人のジェイコブは、女性用の絹の衣服の欠陥を探す「検品係」と記されていた。ジェイコブの子どもの一人、レスターは弁護士になった。もう一人の息子メルビンは現在、医師であり医学教授でもある。メルビンと妻のシェリーは、ランが初めて米国に移住したとき、第二の親のような存在になった。
「彼らの物語は、本書の主要な知見をいくつか体現しています。移民の第一世代は低賃金の仕事や技能を必要としない仕事に就くことが多い一方、その子どもたちは中流階級、さらにはそれ以上へと上昇します」とアブラミツキーは語った。
移民をめぐる神話を覆す
研究者たちの調査は、米国の移民をめぐる幅広い言説にも異議を唱えている。
例えば、一部の人が恐れるように、移民が国を「乗っ取っている」わけではないことが分かった。研究者たちによると、今日、米国の人口に占める移民の割合は14%で、1世紀前と同じだ。
さらに、移民は暴力的な犯罪者とはほど遠い。実際、アブラミツキーとブースタンのデータ分析によれば、逆の傾向が見られる。「あらゆる種類の犯罪について、移民は米国生まれの人より逮捕・収監される可能性が低い」と二人は述べる。「これは過去にも当てはまり、今日ではさらに顕著だ。」
移民が米国生まれの人々の仕事を「奪っている」という考えも事実ではない。むしろ研究者たちは、雇用主が米国生まれの労働者で埋められない職を移民が担う傾向が強いことを見いだした。
「今日、移民は米国生まれの労働者が少ない職に就く傾向があります。技術や科学分野のように高度な教育を要する職もあれば、手作業での作物収穫、皿洗い、高齢者の介護のようにほとんど教育を要しない仕事もあります」と研究者たちは記している。
アブラミツキーとブースタンはまた、移民に対する世論では反移民の考え方は少数派であることも見いだした。政党間の意見の分極化はかつてないほど進んでいるものの、少数派である点は変わらない。昨年、ギャラップが米国人に「全体として、今日のこの国にとって移民は良いことだと思いますか、それとも悪いことだと思いますか」と尋ねたところ、75%が「良いこと」と答えた。
移民政策を長期的な視点で考える
また、アブラミツキーはスタンフォード経済政策研究所(SIEPR)の研究員でもあり、この研究が人々、特に米国の移民政策を形づくる人々に、移民を考える際には長期的な視点を持つよう促すことを願っている。
「政治家が次の選挙を考える際によくするように、米国に到着したばかりの移民の働きぶりや社会への同化について考える短期的な視点は、移民の成功を損ないます」とアブラミツキーは語った。「長期的な視点に立ち、移民の子どもたちに目を向ければ、米国の移民は大いに成功しています。」
