韓思遠(ハン・スーユエン)さんが2008年、パイロット候補生への応募を初めて決めたとき、中国の女性クラスメート400人とともに、英語力から脚の長さまでを測る試験に臨んだ。
最終的に、上海を拠点とする春秋航空は、その年の訓練生として彼女の大学から唯一の女性を選んだ。現在、彼女は中国の格安航空会社で機長を務めるが、後に続く女性パイロットにとって状況はさほど容易になっていない。
2017年末時点で中国の民間航空機を操縦する免許を持つ女性はわずか713人で、韓さんもその一人だった。男性は5万5,052人だった。春秋航空のパイロット800人のうち、女性はわずか6人だ。
「男性の世界で生きることには慣れました」と彼女は話した。
中国で女性パイロットが少ない理由
中国の女性パイロットの割合は1.3%で、世界最低水準の一つだ。アナリストやパイロットは、その背景に社会的な認識と、中国の航空会社による男性中心の採用慣行があると指摘する。
一方、中国の航空会社は旅行需要の急増を受けて深刻なパイロット不足に直面しており、女性パイロットが男女間の不均衡に注目を集めている。
航空機メーカーのボーイング社の予測によると、中国の航空会社は今後20年間で新たに12万8,000人のパイロットを必要とする。不足を受け、各社は外国人機長の採用を積極化してきたほか、中国の規制当局は候補生の身体要件を緩和した。
「私たちの使命は、この道を覆ういばらを取り除き始め、後に続く人たちが進みやすくすることです」と話すのは、上海を拠点とする弁護士の陳静嫻(チェン・ジンシエン)さんだ。米国で飛行を学び、変革を求める人々の一人でもある。

女性パイロットへの「形だけの取り組み」女性パイロット
こうした問題は中国に限らない。韓国や日本でも、こうした職業が広く見られるジェンダーの固定観念にそぐわないとされ、女性パイロットの割合は3%未満だ。
しかし、航空市場が急成長する中国と同じ状況にあるインドとは大きく異なる。積極的な採用や保育支援などのおかげで、インドは女性の民間パイロットの割合が12%と、世界で最も高い。
中国の航空会社は、大学または軍から候補生を直接採用する。募集を男性に限ることも多く、女性の採用枠を設けることは非常にまれだ。
さらに米国など他の市場とは異なり、中国では自家用操縦士免許を、旅客機を操縦するための事業用免許に切り替えることが認められていない。
中国民用航空飛行学院の総合航空部門で副部長を務める李海鵬氏は、手厚い産休制度も多くの航空会社が女性の採用をためらう理由になっていると述べた。さらに、2015年に北京が一人っ子政策を変更したことで、この状況は一段と悪化したという。
「男性パイロットは出産後2年間飛べなくなる問題がありません。二人っ子政策の導入後、航空会社はパイロットを採用して訓練しても、その女性が約5年間飛べなくなるのであれば、採用する気になれません」と同氏は話した。
同氏によると、中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空は女性パイロットの採用に一定の努力をしてきたが、「それ以外のほぼすべての会社はそうしていない」という。
中国東方航空と中国南方航空はコメントを控えた。中国国際航空はロイターのコメント要請に回答しなかった。
パイロットらによると、採用の判断は通常、各航空会社に委ねられており、国の規制当局である中国民用航空局の方針によるものとは見られていない。同局の採用要件に性別への言及はない。
中国南方航空傘下の厦門航空はロイターに対し、最長540日の産休を提供していると述べた。同社は2008年に女性パイロットの採用を始め、数年間中断した後、前年に再開した。パイロット2,700人のうち女性は18人で、さらに18人が訓練中だ。
「より多くの女性がパイロットになれるようにすることは、(航空会社の)運航能力を補ううえで間違いなく有効な方法です」と同社の広報担当者は述べた。
説得と広報活動
変革を求める声は主に中国人女性パイロットから上がっている。米国など海外で暮らしながら飛行を学んだ人々が続々と帰国したことも、その後押しとなっている。
メディア報道によると、中国航空機長協会(ChALPA)は3月、中国人民解放軍空軍や地元航空会社のパイロットが出席したイベントで、女性部会を設立した。
弁護士で、ChALPA女性部会の副会長も務める陳さんは、自身や仲間たちが中国の航空ショーで女性パイロットが直面する問題について話し、認知を広げようとしていると述べた。
最終的には、中国の航空会社に採用方針や産休制度の見直しを促したいと、同団体は考えているという。
女性パイロット不足の解消を妨げるもう一つの大きな障壁は、一般航空のパイロットが商業航空部門に移れないことだと、陳さんは付け加えた。
「これは制度全体に関わる問題です」と彼女は話した。「3~5年で変化が起きることを願っていますが、私たちだけで決められることではありません」
ここ数カ月、春秋航空の宣伝動画に出演している韓さんらは、女性パイロットに関する広報活動が広がることで、認知度が高まることを期待していると述べた。
「私自身が人々に機会を与えることはできません」と彼女は話した。「でも、(広報活動によって)企業や、飛ぶ夢を持つ女の子たちに向けて、少しずつ扉が開くことを願っています」
(取材:ブレンダ・ゴー。追加取材:ソウルのヤン・ヒギョン、東京の安藤律子、シンガポールのジェイミー・フリード、上海ニュースルーム。編集:ジェリー・ドイル)
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