米国では近年、賃金の伸びが鈍い一方、失業率は数十年ぶりの低水準にまで下がっている。これは不可解だ。経済理論や常識からすれば、労働市場が逼迫するにつれ、限られた労働者を奪い合う企業は賃金を引き上げざるを得ないはずだ。
では、賃金上昇の停滞は何によって説明できるのだろうか。新たな研究を基にした今週のチャートは、妥当な答えを示している。労働生産性(1時間の労働で生み出される財やサービスの量)の伸びが鈍化したこと、そして労働者に分配される所得の割合が低下したことだ。この2つが賃金を抑え、失業率低下によるプラスの影響を上回った。
このチャートによると、大不況以降、労働者報酬(赤線)の伸びは平均で年2%程度にとどまり、それ以前の8年間の3.5%から低下した。失業率、つまり「労働市場の余剰」は黒い棒が示すように縮小しているにもかかわらず、青い棒で示される予想インフレ率にかろうじて追いつく程度だ。
「労働者の生産性は、企業が報酬を決める際の重要な要素です。」
重要な要因の一つは、オレンジ色の棒が示す労働生産性の伸びの鈍化だ。労働者の生産性は、企業が報酬を決める際の重要な要素である。労働者が生み出すものが減れば、企業は収益性を維持するために賃金の伸びを抑える必要がある。
賃金上昇を抑えてきたもう一つの要因は、労働者に支払われる所得の割合(緑色の棒)の低下だ。以前の研究では、この低下の理由を検証し、その影響の大部分は、定型業務の自動化に関連する技術変化によるもので、次いで輸入浸透が影響していることを明らかにした。
生産性の伸びの鈍化は、投資とイノベーションを促すとともに、資本と労働力が最も生産的に活用される分野へ移動しやすくする政策の重要性を浮き彫りにしている。
政策には、労働者が継続的に技能を習得し、向上させる仕組みを整えることも求められる。教育・訓練プログラムは、影響を受ける労働者が直面する短期的な調整コストにすぐ対処できるわけではないが、長期的には雇用の安定性と労働生産性を高める可能性がある。従来の枠組みにとらわれない教育・訓練プログラムへの投資は、将来の労働者が技術の進歩や世界的な競争に対応できるよう備えることにつながる。

