ラテンアメリカ・カリブ海地域は、太陽光、風力、水力発電に世界有数の潜在力を持ち、すでに電力の70%を再生可能エネルギーで賄っている。
こうした優位性は、まだ一貫した移行準備状況の向上につながっておらず、エネルギー安全保障や移行を可能にする条件の整備は遅れている。
2025年の白書「エネルギー移行への準備状況:ラテンアメリカ・カリブ海地域」は、潜在力を実績に結び付け、この地域全体で公正かつ強靱で包摂的なエネルギー移行を加速させるための5つの重要な優先課題を示している。
ラテンアメリカ・カリブ海(LAC)地域は、重要な転換点を迎えている。太陽光、風力、水力発電に世界有数の潜在力を誇り、再生可能エネルギーはすでに電力の約70%を供給している。さらに、ブラジルやウルグアイなどでは、その割合は一段と高い。
バイオ燃料の利用は世界平均の2倍に上り、クリーン技術を支える重要鉱物の供給において、ラテンアメリカは中心的な役割を担っている。
しかし、こうした優位性は、まだ一貫した移行準備状況の向上につながっていない。世界経済フォーラムがOLADEおよびAccentureと協力して作成した「エネルギー移行準備状況評価(ETRA)2025」によると、持続可能性と公平性のスコアは比較的高い水準を保つ一方、インフラ、資金調達、イノベーション、人的資本など、エネルギー安全保障や移行を可能にする条件の進展は、他地域に後れを取り続けている。
技術革新が加速し、ブラジルでのCOP30が本格化するなか、いま問われているのは、ラテンアメリカ・カリブ海地域が自然の強みを大規模で変革的な進展につなげられるかどうかだ。
構造的課題の克服
恵まれた条件にあるにもかかわらず、この地域のエネルギー移行には依然として大きな障壁がある。進展は緩やかで、LACは2025年エネルギー移行指数(ETI)で世界6地域中3位に位置するものの、世界平均を下回っている。
多くの国の経済は、化石燃料や鉱物を輸出する一方で、精製燃料やガスを輸入するという二重の依存状態にあり、価格変動やサプライチェーンの混乱に対して脆弱だ。
インフラは依然として重大な制約となっている。送配電損失率は平均13.5%で、世界平均の10.2%を上回る。老朽化した送電網と限られた相互接続も、再生可能エネルギーの統合を妨げている。
資金調達も障壁の一つだ。2025年のクリーンエネルギー投資額は約700億ドルに達したが、世界の移行資金のわずか4%にとどまる。地域には2030年までに年間1,500億ドルの動員が必要だが、高い資本コストとマクロ経済リスクが進展を遅らせている。
イノベーションと人的資本の不足も続いている。研究開発への資金不足に技術・エンジニアリング人材の不足が重なり、導入と拡大を制限している。その結果、この地域でエネルギー安全保障、公平性、持続可能性のすべてを同時に改善した国は4カ国に1カ国にすぎず、進展の分断と政策の乖離が浮き彫りになっている。
進展を加速する5つの優先課題
2025年の白書「エネルギー移行への準備状況:ラテンアメリカ・カリブ海地域」は、準備状況を成果につなげるための5つの重要な優先課題を示している。
第一に、政府は安定した統合的な政策枠組みを採用する必要がある。長期的なコミットメントは投資とイノベーションを呼び込む。明確なインセンティブと部門横断の連携が大きな成果を上げているウルグアイやコスタリカがその例だ。
第二に、この地域はエネルギーインフラを近代化する必要がある。送電網、蓄電設備、デジタルシステムのアップグレードは、再生可能エネルギーの導入可能量を引き出し、送電網の強靱性を高めるうえで不可欠だ。ブラジルの国家相互接続システムなど、地域間の相互接続は、再生可能エネルギーの供給と需要の均衡に中心的な役割を果たし得る。
第三に、各国は人材とイノベーションに投資する必要がある。公正な移行には、熟練労働者と強固な研究エコシステムが欠かせない。職業訓練の拡充、研究開発資金の増額、大学・政府・産業界の連携強化は、技能不足の解消とクリーン技術のイノベーション加速に役立つ。
第四に、エネルギーミックスを多様化し、将来にわたって競争力を保てる産業を築くことが重要だ。太陽光、風力、バイオ燃料、水素を拡大するとともに、重要鉱物やクリーン製造を基盤とする持続可能な産業を育成すれば、競争力と強靱性が高まる。
最後に、ラテンアメリカは大規模な資金を動員しなければならない。ブレンデッド・ファイナンス、ソブリン・グリーンボンド、地域投資プラットフォームなどの革新的な手段は民間資本の呼び込みに役立つ。また、開発金融機関との連携強化により、現在および将来の資金需要を補える。
実証された成功事例
こうした課題があるなか、ラテンアメリカの複数の国は、政策の一貫性、官民連携、イノベーションを適切に組み合わせれば何が可能かを示している。たとえばウルグアイは、20年足らずでエネルギーミックスを転換し、安定した規制と競争入札を通じて、電力の98%を再生可能エネルギーで賄うに至った。
チリは、中国以外で世界最大の電気バス車両群を整備し、賢明な規制と革新的な資金調達を組み合わせながら、グリーン水素の導入も急速に進めている。長年にわたり持続可能性を牽引してきたコスタリカは、長期間にわたり電力の100%を再生可能エネルギーで賄い、今年のETIでは世界上位5カ国に入った。
ブラジルは引き続き、大規模な再生可能エネルギー導入とイノベーションを組み合わせている。迅速審査のグリーン特許制度を活用し、承認期間を43カ月からわずか9カ月に短縮した。ドミニカ共和国では、規制手続きの簡素化により、10億ドルを超える投資を呼び込み、わずか3年で再生可能エネルギーの設備容量を倍増させた。
これらの事例は、安定した政策枠組み、効果的な資金調達の仕組み、強固なイノベーション・エコシステムが、志を行動に変えられることを示している。
行動を起こすべき時はいま
世界のエネルギー移行は加速しているが、その進展には偏りがある。クリーンエネルギー投資の大半は先進国に流れ続ける一方、ラテンアメリカなどの新興地域は、より高い資金調達コストとプロジェクト導入の遅れに直面している。
この不均衡はリスクと機会の両方をもたらす。断固たる行動を取らなければ、この地域は後れを取るおそれがある。しかし、改革、投資、地域協力を進めれば、クリーンエネルギー生産、産業イノベーション、気候変動対策を主導する世界的な拠点になり得る。
ラテンアメリカ・カリブ海地域には、エネルギー移行を主導する資源、人材、勢いがある。いまの課題は、効果のある取り組みを拡大し、根強い格差を縮め、公平で持続可能かつ競争力のあるエネルギーの未来を実現する条件を整えて、準備状況を成果につなげることだ。


