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核融合は長年、クリーンエネルギーの「聖杯」と呼ばれてきました。メルトダウンの危険がない原子力発電であり、核分裂とは正反対の仕組みです。
米エネルギー省がエネルギー分野の節目として発表した画期的な成果により、この技術の有効性が裏付けられました。
ヒートポンプと組み合わせれば、安価で豊富な核融合エネルギーは、導入された地域の家庭内エネルギー利用を一変させるでしょう。早ければ2030年代に利用可能になる可能性があります。
米エネルギー省は核融合に関する画期的な成果を発表し、レーザーを用いた核融合実験で初めて正味のエネルギー利得を達成しました。
このニュースは、温帯地域で広がるエネルギー危機のさなかにもたらされました。人々は冬を暖かく過ごす必要がありますが、金銭面でも排出量の面でもコストは増大しています。多くの人が木材や石炭など、炭素排出量の多い原始的な暖房燃料に頼り始めています。この冬を暖かく過ごすための安価な方法を人々が探すなか、価格競争力があり、安定したクリーンエネルギーへの長期的な投資が必要であることは明らかです。
過去10年間の再生可能エネルギーの拡大は期待を抱かせるものでしたが、核融合は商用化に向けて必要な認知と支援を得始めたばかりです。
2030年代に向けた核融合
核融合は太陽や星のエネルギーを生み出す過程です。地球上で生命が成り立つのも、核融合のおかげです。2つの軽い元素を結合させて新たな元素をつくる仕組みで、その総質量は元の2つの元素の質量の合計よりわずかに小さくなります。このごく小さな質量差によって、膨大なエネルギーが放出されます。
世界各地で核融合炉の建設が進められており、こうした反応のエネルギーを制御し、取り出す最善の方法が模索されています。
南カリフォルニアのTAE Technologiesをはじめとする先駆的な技術開発企業は、太陽を動かすこの自然の過程を地上で実現し、核融合発電所を建設しようと競っています。この構想は1950年代後半からありましたが、近年大きく進展しています。商用核融合発電は、2030年代に導入が始まると予想する人もいます。広範かつ迅速に導入されれば、国連の2050年気候目標の達成に向け、世界を大きく後押しする可能性があります。
COP27では、パリ協定で定めた目標を達成するため2030年までに排出量を半減させることや、気候変動の影響をすでに強く受けている貧しい国々を、より発展した国々が支援する責任について、多くの議論が交わされました。しかし、核融合は主要な議題にはなりませんでした。欧州の干ばつや熱波、パキスタンやナイジェリアの洪水、そして近年のあらゆる気候災害が示すように、大規模な変革が必要です。今後10年間で核融合へ移行すれば、それを実現できる可能性があります。
核融合発電はエネルギー部門に革命をもたらすでしょう。環境への影響が大きく、需要が増している分野の一つが、家庭の冷暖房です。核融合を動力源とする送電網から安価で豊富な電力を得られれば、この冬に見られるような暖房シーズンの混乱に終止符を打てるかもしれません。
米国では、北東部の暖房炉の燃料となる暖房用石油が不足しており、また原子力発電所の閉鎖が全米で電気料金の急騰を招いているため、多くの人々が寒く費用のかさむ冬のただ中にいます。家庭暖房の混乱は、非効率で汚染度の高い既存のシステムを過去のものにする必要性を明白に示しています。
電力を使う冷暖房の技術的解決策として、ヒートポンプが広く普及する機運が高まっています。
ヒートポンプはすでに普及が進みつつある
ヒートポンプは、屋外の空気に含まれるエネルギーを利用し、寒い日にも存在するそのエネルギーを熱として室内に移すことで、効率よく家を暖めます。夏にはこの過程を逆にし、熱を外へ逃がして家を冷やします。セントラルヒーティングと冷房の機能をすべて担いながら、ヒートポンプのエネルギー消費量は石油燃焼式暖房や空調システムよりはるかに少なくて済みます。
以前は、ヒートポンプを実際に導入するうえで最大の障壁は費用でした。住宅全体に設置するシステムは約10,000ドルかかります。しかし、米国では3690億ドル規模のインフレ抑制法の一環として8,000ドルの連邦税額控除が成立したことで、普及はさらに加速するでしょう。
ヒートポンプは本格的な冬を迎える地域では使えないという、よくある誤解を払拭する必要はまだあります。しかし、過去10~15年間にスカンジナビアで広く普及したことが示すように、ヒートポンプは厳しい寒さの中でも稼働できます。北極圏に接するノルウェーでは、住宅のほぼ3分の2が暖房にヒートポンプを利用しており、スウェーデンとフィンランドでは40%をわずかに上回る住宅が導入しています。
ニューヨーク市では新しい開発地区でヒートポンプが一般的になりつつあり、暖房炉の故障や暖房不足が長年の問題となっている市営住宅にも、この冬から新たなプログラムで導入が始まります。北東部の農村地域では、屋上太陽光発電と組み合わせたヒートポンプが普及し、住民は燃料や薪を燃やす暖房から移行しつつあります。サンフランシスコやサンノゼに続き、新築建物へのガス接続を禁止する都市が増えれば、ヒートポンプが事実上の代替システムとなるでしょう。
次世代のために今、核融合に投資する
社会として家庭暖房やその他の家電を電化するのであれば、それらを動かす手頃な価格の炭素排出ゼロ電力が必要です。
今日、核融合エネルギーの開発に投資すれば、これからの世代に恩恵をもたらす可能性があります。
安価で極めて豊富な核融合電力があれば、ヒートポンプの効率を最大限に生かせます。家庭の冷暖房費は、北東部で暖房用石油に支払われている金額や、供給の不安定さと地政学的要因で異常な高騰を招いている電気料金に比べれば、取るに足らない額になるでしょう。
そうならなければ、将来の冬も、今年すでに起きているのと同じように、社会と気候の両面で混乱と被害をもたらし、さらに悪化する可能性さえあります。


