世界はいま、加速するエネルギー転換のただ中にある。これは、世界経済フォーラムが発表した第5回年次エネルギー・アーキテクチャ・パフォーマンス指数報告書(EAPI)でも示されている。同報告書はアクセンチュア・ストラテジーとの協力により作成された。エネルギーの生産、消費、供給のあり方は劇的に変化している。将来は、情報の完全な透明性によって力を得た消費者が、エネルギーシステムの中心にいっそう位置づけられる。消費者は、コスト、持続可能性、利便性について自らの優先事項のバランスを取りながら、リアルタイムでどのエネルギー源を選ぶかを完全に自由に決められるようになる。炭化水素由来・非炭化水素由来の双方で供給の選択肢が豊富になり、競争力も高まっている。重視すべき点は、そして実際に重視されつつあるのは、手頃で持続可能なエネルギー供給である。
こうした将来のエネルギー情勢は、国によって形成の速さが異なる。EAPI報告書は、少数の国が進歩の風を捉えようと舵を切る一方、多くの国が今後の変化に備えたエネルギー構造の整備に苦慮している様子を示している。さらに、世界最大級の経済国の多く、ひいては最大級のエネルギー消費国の多くは、急速に変化するエネルギー分野の機会を捉える取り組みを加速する必要がある。そのために、これらの国々は先行する国々にならい、次の3点を実現しなければならない。
エネルギー分野の長期的な方向性を定め、これに取り組むことを約束する
柔軟な政策を策定し、エネルギー転換を可能にする
最大の効果が見込める分野に投資を振り向ける
これらの行動は、石油・ガス企業にとっても不可欠である。世界のエネルギー分野で進む前例のない規模の変化に対し、企業にも抜本的な対応が求められている。必要なのは、従来どおりの事業を続けるための許可を得るだけではなく、将来の経済的存続を支える真の変革である。それを実現するため、企業は今、将来どの分野で事業を展開し、どう勝ち抜くのかを考えなければならない。
どこで事業を展開するか
石油・ガス企業は、エネルギーのバリューチェーン全体にわたってポートフォリオを見直す必要がある。つまり、最も競争力が高く、大きな効果をもたらす資産を選び、投資することだ。これには化石燃料と非化石燃料の両方が含まれる。特に、選択肢の多い化石燃料に加え、非化石燃料も従来型のエネルギー源に対する競争力を高めている。この見直しは、利益率を確保・向上させ、必要とされる水準の手頃なエネルギー価格を実現するうえで重要となる。
どう勝ち抜くか
エネルギー消費者が中心的な存在になるにつれ、石油・ガス企業は供給者中心のビジネスモデルから顧客中心のモデルへ移行する必要がある。顧客との距離を縮めるには、エネルギー需要を一貫して満たせるようバリューチェーンの下流へさらに統合することや、計画・ポートフォリオの意思決定に顧客ニーズをより的確に反映することが考えられる。また、手頃なエネルギーを利用する必要性が最も高い地域や顧客、そして経済成長を生み、それによってエネルギー需要を押し上げる可能性の高い地域や顧客を見極める力も求められる。
事業を展開する地域を見極めるとともに、市場ごとに適した独自のアプローチを採用する必要がある。そのためには、今後の政策形成に寄与し、市場の発展に合わせて競争することが求められる。適切な資源への投資も不可欠であり、エネルギー関連の資源に加えて、人材やインフラなど地域のその他の資産も対象に含めるべきである。変化が続くなかで、事業モデルはより個々の状況に合わせ、機敏なものにする必要がある。さらに企業は、新たなエネルギーの世界への移行を特徴づける、形成途上のパートナー・エコシステムに参加しなければならない。また、この新たな環境で事業を成功させるため、新しいデジタル技術への投資も必要となる。
今こそ行動の時
こうした取り組みは、長く検討を重ねてから始めるものではない。すでに一部の事業者は、手頃で環境的に持続可能かつ安定したエネルギーシステムの実現に向けて前進している。企業は現地の政府と協力し、政策を推進するとともに、エネルギー革新の利点について地域住民に伝えている。経済成長を促す政府との連携も生まれている。たとえば、ある事業者は地方政府と協力してLNG輸出ターミナルを建設した。この事業は同国の歴史上、最大の資本投資であり、最も複雑なエンジニアリング、建設、生産事業となり、同国のGDPを倍増させる可能性を持っていた。
新たなエネルギー技術に取り組み、洋上風力や太陽光などの再生可能エネルギー源に大規模な投資を行う企業もある。各社は政府と連携し、CO2削減を目指す政策の策定を支援するとともに、地球規模の環境課題に取り組むマルチステークホルダーの活動に参加している。一部の事業者は、技術とデジタル化によってエネルギーへのアクセスを拡大する世界的な主導的地位を築き、その地位を生かして重要なニーズに応える商業的ソリューションを生み出している。たとえば、ある企業は革新的な移動式太陽光発電技術を用い、サハラ以南のアフリカとアジアで、これまでエネルギーを利用できなかった100万人に、クリーンで効率的なエネルギー源を提供している。
こうした取り組みは明確なメッセージを発している。エネルギー転換はすでに進行しており、企業は新たな世界で自らの将来を守るため、また事業を展開する地域の利益のために、具体的な行動を取る必要がある。これは政府だけに委ねるべき課題ではない。石油・ガス企業も手を携え、同じだけの責任を担って行動すべき時である。
2017年版 世界エネルギー・アーキテクチャ・パフォーマンス指数こちらからご覧いただけます。以下のヒートマップで、報告書の結果をご覧ください。



