太陽光発電システムは長年、多くの住宅所有者にとって設置が複雑で費用もかかりすぎていました。
今、スタートアップ企業が従来のエネルギー市場に変革をもたらし、「屋根革命」を始めています。
消費者は自らエネルギーを生み出すことで恩恵を受けると同時に、より広範な電力網にも貢献できます。
気候危機については誰もが知っています。毎週金曜日、多くの国で若者たちが街頭に繰り出し、気候変動対策を求めてストライキを行います。ブリュッセル、北京、ワシントンDCをはじめ世界各地で、政策立案者、企業のリーダー、科学者が炭素排出の緩和に取り組んでいます。
明るい知らせもあります。過去20年間で太陽光発電と風力発電は成熟し、手頃な価格になりました。特に太陽光発電は、2020年代に再生可能エネルギーの急増を牽引すると、国際エネルギー機関(IEA)
しかし、進展は遅々としています。世界の温室効果ガス排出量は依然として増加しており、増大するエネルギー需要はあまりにも多くの場合、化石燃料で賄われています。
再生可能エネルギー先進国の一つとしてよく紹介されるドイツでさえ、太陽光発電設備が設置されていない適地の屋根は、依然としてほぼ90%に上ると、コンサルティング会社EUPDは述べています。この数字は、1世帯または2世帯が暮らす個人住宅を対象としています。多くの入居者がいる集合住宅では、太陽光発電設備のない屋根の割合はさらに低くなります。

進展が遅いのは、情報不足や市民の支持が低いからではありません。ドイツ人の10人に9人が屋根への太陽光発電設備設置を支持していることが分かっており、太陽光パネルは最も人気のあるエネルギー源となっています。
気候危機への対処に多くの人が自分の役割を果たす意欲を持っているのに、実際に行動する人がこれほど少ないのはなぜでしょうか。
太陽光発電の普及には行動変容が必要
イノベーション普及理論がその答えを示しています。行動を変えるには、多くの場合、意志の強さや自制心だけでなく、時間とお金も必要です。社会科学で示されてきた古典的なジレンマに「些細な貢献の問題」があります。気候危機のような問題に対する個人の貢献はあまりにも小さく、取るに足らないように見えるため、個人は行動する理由がないと考えてしまいます。
社会科学者のハラルト・ヴェルツァーによると、人々が行動するには「直接的なメリット」が必要です。変化は簡単で便利で、これまでより良く、できれば時間とお金の節約にもつながるものでなければなりません。こうした直接的なメリットがあって初めて、ほとんどの人は行動を変えます。
ヴェルツァーによれば、気候を守る動機は説得力があるように聞こえても、実際には行動変容を促しません。多くの人にとって、環境保護は直接的なメリットではなく、「二次的なメリット」としか見なされていないからです。
新たな事業者が太陽光発電を手軽で手頃なものに
長い間、太陽光発電は複雑で費用もかかり、その設置には大きな未開拓の可能性が残されていました。太陽光発電システムの設置に関心のある住宅所有者は、ローンを組むか貯蓄を取り崩すかを考え、信頼できる施工業者を見つけ、保険やメンテナンスに対応するなど、多くの問題に対処しなければなりませんでした。あまりにも多くの場合、ストレスと多額の費用が伴っていたため、そこまで手間をかける理由があるでしょうか。
しかし近年、スタートアップ企業がこうした課題に着目し、住宅所有者が太陽光発電の普及に参加し、「プロシューマー」、つまり自らグリーン電力を生産・消費する人になりやすくする新たなビジネスモデルを生み出しました。
この傾向は、カリフォルニアを拠点とするスタートアップ企業、Sunrunから始まりました。わずか数年で、Sunrunは米国を代表する住宅用太陽光パネルおよび蓄電池の会社となりました。
太陽光発電のリース方式が拡大
太陽光発電のリースは、欧州でも広がりつつあります。ベルリンを拠点とするスタートアップ企業、Enpalは、コンサルティング会社デロイトによると、ドイツで最も急成長しているテクノロジー企業となり、同国初のグリーンテック分野のユニコーン企業となりました。現在では、多くの企業がこのビジネスモデルを模倣し始めています。
Enpalのアイデアはシンプルでありながら効果的です。サブスクリプション方式で太陽光発電をリース提供することで、住宅所有者は多額の初期投資を抑え、システムの監視、保険、メンテナンスに対応する必要もなくなります。
初期費用がかからず、固定のリース料も低額なため、消費者は自宅で発電したクリーンエネルギーを自家消費できるほか、余剰電力を電力網に売ることもできます。これにより太陽光発電は手軽で、手頃で、利用しやすいものとなり、自宅に眠るクリーンエネルギーの潜在力を引き出して、太陽光発電の普及を促します。
太陽光エネルギーの「屋根革命」
電気自動車への移行に伴い、グリーンエネルギーへの需要は非常に大きくなっています。エネルギー価格が上昇するなか、消費者は従来の供給事業者や化石燃料への依存を減らし、電気料金を節約するとともに、気候危機への対処にも貢献しようとしています。
市民が自らのエネルギーを自分の手で担うべき時が来ています
ヴォルフガング・グリュンディンガー、Enpal
政策立案者は、太陽光発電の普及を後押ししてきました。実際、政策による固定価格買取制度の保証と技術の成熟により、太陽光発電のコストは下がりました。IEAによると、今やほとんどの国で、太陽光発電は新設の石炭火力やガス火力発電より安価です。「太陽光発電が世界の電力市場の新たな王者になると見ています」と、IEAのファティ・ビロル事務局長は予測します。
クリーンエネルギーへの移行に向け、世界経済フォーラムはどのような取り組みを行っていますか?
こうして太陽光発電という「新たな王者」は、一握りの人々の手にではなく、多くの人々の手に委ねられることになります。屋根のある人なら誰もが明日のエネルギー供給に参加する、ボトムアップの動きがそれを可能にします。
市民が自らのエネルギーを自分の手で担うべき時が来ています。規制当局が再生可能エネルギーの拡大を促し、スタートアップ企業が自宅でクリーンエネルギーを簡単に生み出せるようにする今こそ、屋根革命の時です。


