企業向けPPAは欧州のグリーン回復をどう後押しできるか

COVID-19 stimulus packages can use corporate PPA to help hasten corporate decarbonization
COVID-19 stimulus packages can use corporate PPA to help hasten corporate decarbonizationImage: REUTERS/Fabrizio Bensch
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  • 企業向け電力購入契約(コーポレートPPA、またはCPPA)は、欧州の民間セクターの脱炭素化を支える強力な手段となり得る。

  • しかし、エネルギー転換の推進力としてその潜在力を引き出すには、乗り越えるべき課題がいくつかある。

  • EUが実施するような グリーン景気刺激策は、こうした障壁を取り除き、需要を生み出すことができる。

COVID-19によるロックダウンは、気候変動対策や気候緩和に関する国際合意のいずれも期待し得なかったことを成し遂げた。2020年の世界のCO2排出量は、予想では2019年比で8%減少する見通しだ(合計2ギガトン[Gt])。これは観測史上最大の前年比排出削減量となり、2009年の世界金融危機時に記録された過去最大の削減量0.4Gtの6倍に相当する。

しかし、この一時的な削減は、持続可能な変革という未解決の課題を解決するものではない。実際、COVID-19が世界経済活動に与える影響は、そのために必要な企業の財務的余力を大きく制約することになる。さらに、この一時的な排出削減の効果だけでは、世界の気候目標の達成にはとても足りない。地球温暖化を1.5°Cに抑えるには、今後30年間にわたり、2020年の減少率を維持する必要がある。

排出量以外にも、COVID-19はエネルギー市場にも大きな影響を及ぼしている。欧州全体で電力需要は10〜20%急落し、商品価格は40%以上下落した。その結果、欧州全体の平均電力価格は30〜40%低下した。近い将来にコロナ禍以前の水準に戻ることは見込まれていない。副次的な効果として、従来型発電が市場から押し出される形で、発電構成における再生可能エネルギーの比率が過去最高を記録した。

ドイツにおけるベースロード電力価格へのCOVID-19の影響Image: Aurora Energy Research

危機を企業向けPPAの好機に

COVID-19は、パンデミック発生以前に多くの企業が表明した脱炭素化への約束の信頼性を試すリトマス試験となったが、企業は経済危機を理由に気候変動対策から手を引いてはいないことが明らかになった。

むしろ、気候緩和の勢いは以前にも増して高まりつつある。政策立案者が短期的な救済策から経済回復策へと関心を移す中、一般市民、企業、政府の一部が、経済刺激策を「グリーン」なものにするよう声を上げている。180社以上の企業トップと欧州の閣僚が、ポストCOVID-19の経済回復計画において低炭素投資を優先することで連携した。実際、最近の研究によれば、クリーンエネルギーの物理的インフラを支援するなどの適切な政策は、経済回復と脱炭素化を同時に実現できることが示されている。

欧州委員会は、1月に発表された1兆ユーロの「欧州グリーンディール」に加え、7,500億ユーロ(8,430億ドル)のCOVID-19復興基金「次世代EU」のうち、少なくとも25%を脱炭素化の支援に充てると発表した。これは、ネットカーボンニュートラルの実現を目指す企業にとって朗報だ。実際、いくつかの大手企業は最近、救済計画の一環として、信用補完や再生可能エネルギーの電力購入契約の迅速な展開などの措置を導入するよう欧州委員会に要請した。

以下の段落では、景気刺激策が企業の脱炭素化に向けた強力な手段の出現をどのように後押しできるかに注目したい。その手段とは、企業向け電力購入契約(cPPA)を通じたグリーン電力調達である。

企業向けPPAの役割

世界的に見ると、cPPAはここ2年で大きく普及している。米国はPPAの開発を主導しており、2019年の世界の取引量の70%以上を占めた。一方、ほとんどのEU加盟国は現在もなお後れを取っている。

地域別の企業向けPPA導入状況Image: Aurora Energy Research、BNEF

欧州をカーボンニュートラルにする万能策は存在しないが、企業による再生可能エネルギーのPPAは、民間セクターが脱炭素化を推進できるようにする上で重要な役割を果たし得る。政府による直接的な支援の枠を超えて、再生可能エネルギーの導入を拡大する手段でもある。

電力の購入者にとって、企業向けPPAの価値は競争力のある価格だけで決まるのではなく、それに伴う強力なサステナビリティ上の主張によっても決まる。企業のグリーンな約束を実現するには、既存または新規の再生可能エネルギー資産に基づく企業向けPPAが、企業である購入者の行動とエネルギーシステムの持続可能な変化とを、具体的につなぐ役割を果たす。

実際、過去数か月に電力価格が経験した混乱にもかかわらず、危機の間も企業向けPPAの取引は続いており、市場はこれまでのところ高い回復力を示している。例えば、ACCIONAは最近、10年契約を通じてTelefonicaに100GWhの再生可能エネルギーを供給する新たな企業向けPPAを欧州で締結した。

CPPA - 今後の課題

下図が示すように、保守的なシナリオのもとでも、現在の環境では企業向けPPAの供給が企業需要を満たせない見通しだ。

欧州の企業向けPPA市場:供給と需要Image: Aurora Energy Research

実際、cPPA市場は供給者と購入者の双方にとって有益であるため拡大してきた。しかし、欧州のエネルギー転換においてより大きな役割を果たすことが期待されるなら、克服すべき課題がある。

1. 購入者の信用力の欠如。供給者は資金調達を確保するためにこれを必要とする。

2. 購入者が長期の電力市場リスクを引き受ける意欲と誘因が限定的であること。

3. いわゆるバーチャルPPAと呼ばれるデリバティブ契約の出現により、これらの商品の会計処理がさらに複雑になること。

これらの障壁は、COVID-19以前からcPPA市場の発展を制限してきたが、パンデミックの発生によって、今後の電力市場の発展に関する不確実性がさらに増幅されたにすぎない。

政策によって企業向けPPAの需要をどう押し上げられるか

グリーン景気刺激策は、EUにおいてcPPAが本格的に普及するための明確な規制枠組みを設定する、またとない機会である。PPAを支援する政策は、市場ベースの再生可能エネルギー導入の障壁を克服することを目指すべきである。以下に、支援政策の目標の概要を示す:

再生可能エネルギー導入における企業向けPPAの普及を支援する政策措置Image: Aurora Energy Research

再生可能エネルギーの消費割合の義務付け、排出削減へのインセンティブ、救済措置におけるグリーン条件の課差 ――エールフランスに課された措置のようななどは、2030年の気候目標の達成に向けた追加措置となり得る。

今こそ行動すべき時だ

これまでの経験が示すように、景気後退への短期的な対症療法は、経済が回復した後の排出量増加を含め、環境に悪影響をもたらすことが多い。今回は、政策立案者はレジリエントな経済を育み、社会的・環境的な最大の見返りをもたらすため、長期的な価値に焦点を当てる必要がある。さらに、財政刺激の資金は、長期的な価格シグナルと整合している場合に最も効果を発揮する。

経済刺激策の乗数効果は危機時に最も強く現れるが、脱炭素化への取り組みでは、その便益はコストをさらに上回る。脱炭素化に投じられた1ドルは、3ドルから8ドルの見返りをもたらす気候変動による外部性の将来的なコストを回避することによって。

こうした排出量およびコストの削減は、企業向けPPAを通じて民間セクターが脱炭素化を進める力となるはずだ。欧州は前例のない速さで化石燃料から再生可能エネルギーへ転換する必要がある。それに伴うシステム統合の課題に対して費用対効果の高い解決策を見いだすことは、規制当局だけに任せることはできず、すべての市場参加者の革新的な力が求められる。ここにこそ企業向けPPAが重要な役割を果たし得るのであり、今こそ行動すべき時なのだ。

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