ケニアは、バイクタクシーなど大気汚染の深刻な車両に電動の選択肢を提供し、交通部門を変革している。
専門家によると、新興国がeモビリティへの移行を加速するには、電気自動車の普及を阻む障壁に包括的な戦略で取り組む必要がある。
11月の国連気候変動会議では電動モビリティが重要議題となる見込みであり、ケニアの取り組みは体系的な移行のモデルとなり得る。
ケニアでは、多くの人が町なかを移動する際、現地で「ボダボダ」と呼ばれるバイクタクシーの後部座席に乗る。1日あたり2,200万回の乗車で、この分野は推定100万人の直接雇用を運転手に提供している。交通渋滞を避け、アクセスしにくい地域にも行ける、より安価で速い移動手段であるバイクの利用は、ケニアでは2030年までに3倍になると予想されている。しかし、これらのバイクは自動車の10倍の汚染物質を排出し、大気の質を悪化させ、人々の健康を脅かしている。
明るい兆しとして、ケニアでは政府と民間部門の双方が交通部門の変革に真剣に取り組んでおり、電動バイクはボダボダタクシーなど大気汚染の深刻な車両に代わるゼロエミッションの選択肢となり得る。広く成果を上げているこの取り組みは、人々の健康を改善し、車両からの排出を減らそうとする他国のモデルとなり得る。
しかし、電動モビリティ(eモビリティ)への移行にあたり、新興国は電気自動車(EV)の普及を妨げる障壁に取り組む必要がある。障壁には、EVは燃料費や維持費が低く長期的には安価であるにもかかわらず初期費用が高いこと、バッテリーの航続距離への懸念、充電インフラの不足がある。これらの国で金融機関がeモビリティへの投資をためらうことも多い。バッテリー寿命や資産の再販価値に関する実績がない新技術への融資に懸念があるうえ、融資適格なプロジェクトも不足しているためだ。さらに、EVを再生可能エネルギーで稼働する電力網に接続しなければ、環境負荷を強めるおそれがある。
グリーン成長と世界目標2030のためのパートナーシップ(P4G)は、グリーンビジネスモデルの加速を目指すプラットフォームとして、ケニア政府および民間部門と協力し、こうした障壁への対応に取り組んでいる。以下に挙げるような革新的な解決策に資金を提供し、磨きをかけることで、投資を呼び込み、公正なeモビリティへの移行を実現するために必要な金融・技術インフラの整備に貢献できる。
実現可能性の基盤を築く
社会変革に向けたeモビリティ・ソリューションの加速パートナーシップでは、農村部でEVに融資する企業や政府のリスクを軽減する方法を検討した。Siemens Stiftungが主導するこのパートナーシップは、新興市場で民間投資を呼び込むために公的開発資金を活用するブレンデッド・ファイナンスを、アフリカのeモビリティ部門の発展に向けてどのように組み立てられるか調査した。また、電動バイクメーカーと連携し、地元で電動バイクを調達し、充電インフラを構築する方法を実証した。
パートナーシップは、政府機関およびケニア民間部門連盟とともに、調査結果に基づく提言を運輸省と国家財務省に共有した。消費者のEV購入を促すインセンティブの提供、充電設備と現地組み立ての能力構築、中小企業や個人の金融アクセス改善が、eモビリティへの移行を加速できると結論づけた。
融資適格なプロジェクトの案件群を築く革新的なモデルの検証
市場での実現可能性が示され、eモビリティのインフラ構築に向けたロードマップが整ったことを受け、ケニアは解決策の展開を始めた。
電動バイクの初期費用は、ほとんどのケニア人にとって高すぎる。平均的な内燃機関の二輪車の価格は1,300ドルだが、同等の電動バイクは1,800ドルである。電動バイク向けPayGoは、M-KOPAとShell Foundationが主導するパートナーシップで、1,000人の運転手が電動バイクに切り替えられるよう、デジタルの従量払い(PayGo)技術を提供している。これにより、高額な初期費用を避けながら燃料費を節約できる。このプロジェクトでは、既存の走行パターンに基づいてPayGo充電ステーションを100カ所設置している。これは運転手が移行しやすくするための重要な考慮事項だ。
では、バイクの充電中に待ちたくない運転手には、どのような選択肢があるのだろうか。ChargeUp!は、ARC Ride、Fika Mobility、Energy 4 Impactが参加するプロジェクトで、補完的なモデルとして、手軽にバッテリーを交換できる45カ所のステーション網を提供する。バッテリー・アズ・ア・サービス(BaaS)モデルの商業的な実現可能性を実証することで、パートナーシップは電動バイクの運転手が残量の少ないバッテリーを満充電のものとすばやく交換できるよう支援し、運用コストと航続距離への不安を軽減する。航続距離への不安とは、バッテリーがその日に必要な走行距離を走りきれるか、運転手が確信を持てない状態を指す。
ケニアは、公正なeモビリティへの移行の実現にも取り組んでいる。バイクタクシーの運転手や乗客となる女性が直面する、安全面の懸念やジェンダーバイアスなど特有の課題を認識し、電動バイク向けPayGoは調査を行い、改良モデルを支援している。解決策が女性によって、女性のために設計されるようにするためだ。真に地域に根ざした解決策とするには、プロジェクトが地域経済を活性化する必要がある。これらのプロジェクトは、中小企業に充電器を設置して雇用の拡大を支援し、農村部と都市部の双方で国内製造の可能性を探っている。eモビリティへの移行を促す、堅固で投資可能な案件群へと発展し得る多様な地域発の革新的解決策を育てるには、能力構築と資金面の支援が必要だ。
包括的な取り組みを組み立てる
上記の解決策は有望だが、依然として断片的な取り組みにとどまる。eモビリティへの移行を実現するには、各国に包括的な戦略が必要だ。包括的な戦略は、eモビリティのエコシステムにおける主要な担い手と各段階を支援すべきである。具体的には、電動バイクのリスクを軽減して初期費用を抑え、現地製造を促す融資プログラム、充電インフラと安全基準に関する関税・政策改革、整備士や運転手の技能訓練が挙げられる。
こうした理由から、政府省庁、非営利団体、民間部門の連携組織が協力し、包括的なeモビリティ・プログラムをNAMA Facilityとともに策定し、ケニアのEV市場を加速させようとしている。このプロジェクトは、電動バイクと現地での製造・組み立てへの投資を促し、リスクを軽減するために1,650万ドルを提供する。さらに、eモビリティ政策と関税の改革、技術支援を行い、2028年までに年間の自動車販売の15%を電動車とし、電気自動車の80%を国内で組み立てることを目指す。ケニアでこの取り組みの有効性を実証すれば、電動モビリティへの道を歩み始めた他国の指針にもなり得る。
地域主導の交通ソリューションは、人々と経済に恩恵をもたらす
ケニアのような新興国では、事業を可能にする規制環境や、効果的なビジネスモデルへの資金が不足しており、依然として障壁となっている。幸い、上記のような解決策によって市場を開き、国内への投資を促すことができる。
P4Gは、各国の気候変動対策の優先事項を支える的を絞った政策介入とともに、初期段階のビジネスモデルに資金を提供し、その成長を加速させることで、この不足を補おうとしている。政府が民間部門と連携することで、この取り組みは開発金融の拡大と民間投資に向けた安定性と信頼を高める。P4Gは開発金融機関とも協力し、こうしたモデルが投資対象となり、資本にアクセスできるよう支援することで、財政的に持続可能となり、長期的な効果をもたらせるようにしている。
ケニアでは、この取り組みによって、交通システムをより手頃で、公平かつクリーンなものへと変革できる。11月にエジプトで開催される国連気候変動会議(COP27)では、電動モビリティが重要議題となる見込みであり、ケニアの取り組みは公正で体系的な移行のモデルとなり得る。この移行を加速させるには、ドナー国と開発金融機関が参加し、各国のグリーン成長に向けて地域市場を築くこうした解決策に投資する必要がある。


