自動運転車には、世界を「見る」だけでなく、意思疎通し、協力することも求められる。
自動車はカメラ、センサー、人工知能(AI)を活用して道路や交通の状況を認識し、それに応じて対応する。しかし、センシングが最も効果を発揮するのは、車両のすぐ近くにある物体や動きだ。
車の周囲にある重要な情報を、車載カメラですべて捉えられるとは限らない。衝突する軌道上を高速で接近してくる別の車両は、手遅れになるまで見えない可能性がある。
そのため、車車間通信の開発が急速に進んでいる。私たちの研究によると、技術面、倫理面で大きな課題はあるものの、車が道路上で互いにやり取りし、協力できるようになる必要がある。
車車間通信の仕組み
車車間通信の用途は、車両が隊列を組んで走行することから、近くにいる緊急車両に関する安全情報の伝達まで多岐にわたる。車両同士が警告を送り合って交差点での衝突を避けたり、歩行者や自転車に関する情報を共有したりできる。
こうした通信の可能性は、米国自動車技術者協会(SAE)のDSRCメッセージセット辞書に記載されている。同辞書は、すべての自動車を対象とする標準化された車車間通信メッセージを定めている。
この通信方式は、広く普及しているIEEE 802.11Wi-Fi規格を基盤とし、「車両のインターネット」の実現につながる可能性がある。
近い将来、車は4Gに接続するだけでなく、通信範囲内に入ると、専用狭域通信(DSRC)規格を使ったピアツーピアネットワークでもつながるようになる。
数百メートル先からでも、車両同士でメッセージを交換したり、路側機(RSU)から近隣の事故や危険な道路状況について情報を受け取ったりできる。
こうした車両には、高度なAIが必要と考えられる。A地点からB地点まで自動運転するだけでなく、受信したメッセージに適切に反応するためだ。車両はリアルタイムで受け取る情報を踏まえて計画を立て、推論し、戦略を練り、状況に適応しながら、協調行動を実行する必要がある。
例えば、自動運転車の集団が算出されたリスクを踏まえて一緒に特定のルートを避けたり、前方の渋滞を予測して、受信したメッセージをもとに、ある車両が予定より早く乗客を降ろすと判断したりすることが考えられる。
車両が通信するなら、協力し合う必要がある
協調行動をどのように実現するかを含め、車車間通信のさらなる活用方法について研究が続いている。
私たちの研究は、交差点付近にいる車両がルート情報を共有し、走行経路について協力することで渋滞を緩和できることを示している。
例えば、道路の分岐点に近づく車両は、推定される道路状況に基づいて計算し、全車両が同じ道路区間に右折してもう一方の道路を空けておくより、半数が右折し、残りが左折した方が全体として速く進めると判断できる。
交差点で機会に応じて協力する知的エージェントとしての車両。プラジャクタ・デサイ博士の博士論文をもとに作成。指導教員:セン・W・ローク。提供:著者
つまり、多数の車両が最短距離のルートに集中して渋滞を起こす代わりに、一部の車両は、距離が長くても交通量の少ないルートを利用できる。走行距離が長くなっても、目的地にはより早く到着する場合がある。
MITの研究も、車両がルートを調整し合うことで、全体的な渋滞の緩和につながる可能性を示している。
車両同士が協力して駐車場の混雑を解消したり、他の車が駐車スペースを見つけられるよう情報を交換したりすることもできる。私たちの研究は、こうした協力によって車両の駐車にかかる時間を短縮できることを示している。
信頼をめぐる問題
協調行動を標準化する必要はあるのだろうか。あるいは、自動運転車が車車間メッセージにどう反応するかも標準化すべきだろうか。これは未解決の課題だ。
車両が他の車両からのメッセージを信頼できるかという課題がある。また、非協力的な行動を抑止し、車両が悪意をもって協力しないようにする仕組みも必要だ。
一見突飛に思えるが、自動運転車が連合を組み、他の車両を欺くこともあり得ない話ではない。
例えば、車両の連合が大規模な駐車場の特定エリアについて虚偽の情報を広め、他の車両にそのエリアを避けさせれば、連合に属する車両のために駐車スペースを空けられる。2台の自動運転車が協力し、特定の場所に交代で駐車すれば、他の車両がそこに駐車するのを困難にすることもできる。
互いに、そして人間とも倫理的に協力できる自動運転車は、期待が高まる一方で、実現には課題も多い。


