今年のダボスでの世界経済フォーラム年次総会で、中国の習近平国家主席は、国際協力に関する一帯一路サミットを開催する意向を表明し、中東・北アフリカ(MENA)地域の大半の国々が招待された。
これは、中国初のアラブ政策文書に続く動きだ。同文書は、2016年1月に発表され、地域諸国との関係強化に向けた政府の構想を示している。この文書は、北京にとって中東の重要性が急速に高まっていることを疑いなく反映しており、今後の計画を予告するものとなる可能性もある。実際、2014年までの10年間で、双方の貿易額は600%増加した。

しかし、この動きは中国が同地域へ軸足を移していることを示しているのだろうか。また、過去10年間に中国とMENA諸国との関係が深まる中で、どのような重要課題があるのだろうか。
石油の必要性
2015年、中国は米国を抜き、世界最大の原油輸入国となった。現在輸入している日量620万バレルのうち、半分以上はMENA地域で採掘されている。このため、中国はサウジアラビアやイランを含む複数の国にとって、最大の輸出先となった。堅調な経済成長に支えられ、自動車を購入する国民が増える中、原油への需要が近いうちに満たされる見込みは薄い。実際、国際エネルギー機関(IEA)は、中国のMENA地域からの輸入量が2035年までに倍増すると予測している。同地域には、世界の確認済み石油埋蔵量の半分があるとみられている。その結果、中国が同地域の安定に寄せる関心は、今後ますます高まるだろう。
一帯一路
2013年10月に習主席が発表した「一帯一路」(OBOR)構想は、60カ国にまたがるインフラ事業に中国の多額の資金を投入するものだ。とりわけ経済ベルト構想は、中央アジア、中東を経て欧州に至る、元来の「シルクロード」沿いの国々を結びつけることを目指す。
OBORを通じ、中国は三つの目標の達成を目指している。一つは、貿易相手国の経済を活性化し、自国の輸出品への需要を支えることだ。また、自国製品の陸路を整備することで、東海岸の港湾都市から、より貧しい西部・南部の省へと経済の重心を移し、国内の均衡を図ろうとしている。同時に、この貿易ルートによって国際貿易におけるマラッカ海峡への依存を減らせる。中国の石油輸入量の推定80%が同海峡を通過している。たとえば南シナ海をめぐる緊張が高まれば、中国は海上封鎖の影響を受け、経済が停止しかねない。三大陸の中心に位置するMENA地域は、したがってこの戦略に欠かせない要素となる。
この目的のため、中国は新シルクロード基金(NSRF)に400億ドル、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に1,000億ドルを拠出し、パートナー国のインフラ事業に投資する任務を与えた。AIIBの理事会には、他の国々に加えて、
同地域の二大ライバルであるイランとサウジアラビアの代表が参加している。2016年、AIIBは17億ドルの融資を実施し、その中にはオマーンのドゥクム港の拡張と、同国初の鉄道網整備の準備に向けた3億ドルの融資も含まれていた。中国の投資家が比較的長い投資回収期間を見込むこと、政治リスクの高い地域への投資経験があること、そしてMENA地域でインフラへの長期投資が極めて必要とされていることを踏まえると、この最初の融資は今後続く多くの融資の先駆けとなる可能性がある。
中国の専門知識を活用
原油価格が低迷を続けると予想される中、MENA諸国は、これまで国民に提供してきた高額な補助金への依存を減らさざるを得なくなる。特に、エネルギーや燃料への補助金は、エネルギー収入が減るにつれて財政を圧迫するだけでなく、逆進的でもある。つまり、貧困層よりも裕福な人々に大きな恩恵をもたらす。国際通貨基金(IMF)の推計によると、2011年、エネルギー補助金は地域の公共収入の22%、域内総生産(GDP)の8.6%に相当した。
この移行に対応するには、各国政府はエネルギーの生産と配給をより効率化するシステムを導入する必要がある。中国は太陽光発電設備の世界最大の生産国となった。地理的条件を踏まえると、MENA諸国はこの分野の中国の技術やノウハウを特に活用しやすいだろう。近年の技術の飛躍的進歩と大幅なコスト低下により、MENAのような日照に恵まれた地域では、補助金がなくても競争力を持つ可能性がある。
さらに、中国は日本の福島第一原発事故後も原子力発電所への関心を失っていない数少ない国の一つであり、2020年までに原子力発電容量を3倍にする軌道に乗っている。特に湾岸諸国を中心にMENA諸国の関心が高まる中、この分野でも相互に利益をもたらす協力関係が生まれる可能性がある。中国は最近、石炭火力発電所103カ所の建設を断念し、再生可能エネルギーの世界的リーダーとなることで、環境の改善に向けた取り組みを強めている。
同様に、世界銀行の「グローバル金融包摂データベース」によると、MENA地域は金融サービスを利用できない人口の割合が地域別で最も高く、銀行口座を持たない成人は8,500万人を超える。Alipay、Baidu、WeChatなどが先駆的なサービスを提供し、金融テクノロジー(フィンテック)の最前線にある中国の専門知識は、同地域の貧困層が従来型の銀行を介さずに済むよう支援し、状況を一変させる可能性がある。
深まる関係
エネルギー、再生可能エネルギー、インフラ、貿易、そしておそらく技術の分野で相互補完的な利害を持つ中国とMENA諸国の協力は、今後数年間でさらに深まると考えられる。さらなる発展の余地もあり、この新たな関係は、経済の変革と多角化を目指す双方の取り組みに決定的な役割を果たす可能性がある。中国が世界経済フォーラム中東・北アフリカ会合(5月19~21日、ヨルダン)に参加すること、またMENA諸国が6月に大連で開催される次回のニュー・チャンピオン年次総会に参加することは、双方の関与が強まる兆候がないか、注目を集めるだろう。


