世界経済フォーラムの次の報告書が示すように、世界のエネルギー転換を加速させる必要性は差し迫っています。効果的なエネルギー転換の推進 2019報告書は、発行8年目となる2019年エネルギー転換指数(ETI)の調査結果をまとめています。
ETIの目的は、意思決定者が世界各地の進捗を比較評価できるよう、エネルギー転換に関する事実の基盤を構築することです。ETIは、エネルギー、経済、環境に関する40種類のデータセットから指標を集約し、時系列で追跡できる、世界のエネルギーシステムの包括的なデータ主導の全体像を示します。ETIの基礎となる統計モデルは豊富な情報源であり、分析を通じて、世界各地のエネルギー転換に関連するさまざまな課題について知見を得ることができます。
昨年もまた、世界の気温が記録的な高さに達した年となりました。衝撃的な報告書は、温室効果ガス排出削減の緊急性を強調しました。こうした変化の必要性にもかかわらず、ETIによると、世界のエネルギー転換は停滞しています。ETIの世界平均スコアの前年比上昇幅は、過去5年間で最低でした。パリ協定によって政治的な取り組みが世界的な節目を迎えてから3年が経過した今も進展が乏しいことは、現在の取り組みが十分かどうか、また課題の大きさを現実に照らして見直す必要性を示しています。
エネルギー転換には重大な地政学的側面があることは明らかです。幸いなことに、ETIで明らかになった前向きな点の一つは、エネルギー安全保障とエネルギーへのアクセスに関する分野です。これらの分野の指標は引き続き大きく改善しており、新興・発展途上アジアで電力へのアクセスが大幅に向上したことや、燃料輸入国の輸入相手がますます多様化していることが背景にあります。
2014年から2016年にかけて、毎年平均1億3,500万人が新たに電力を利用できるようになりました。アクセスの改善はアジアの人口規模の大きな地域に集中しているものの、より広い範囲で進んでいます。分析対象国のうち、電力への普遍的なアクセスをまだ実現していない国の90%で、入手可能な最新データによると年間の改善が見られました。特にケニアとエチオピアでは大きな進展があり、電力アクセス率はそれぞれ14ポイント、9ポイント上昇しました。
指数のデータは、エネルギー貿易をめぐる地政学がどのように変化しているかも明らかにしています。米国のシェールオイル革命と中国で急増するエネルギー需要が、世界的な主な要因となっています。利用可能な過去10年間のデータでは、総供給量に占める純エネルギー輸入の割合は米国で20ポイント低下し、中国で12ポイント上昇しました。これに対し、欧州連合諸国への純エネルギー輸入の水準は、ここ数年比較的安定しています。
この報告書は、貧困削減と経済成長を環境の持続可能性と両立させるため、引き続き注意を払う必要があることも示しています。報告書で示された複雑な事情は、2018年に世界の二酸化炭素排出量が増加し、過去最高に達したこと、そして世界の石炭消費量が過去2年間で増加したこと(インドと中国で需要が拡大したため)の背景を説明する一助となります。
この両立が必要なのは、発展途上国や新興国だけではありません。指数の報告書は、米国エネルギー情報局が最近実施した調査によると、米国の世帯の3分の1がエネルギー料金の支払いに苦労していると指摘しています。世界銀行のデータによれば、米国の所得格差はOECD加盟36カ国中33カ国より大きくなっています。所得格差は2000年代初頭にいったん横ばいとなった後、近年再び拡大しています。世界最大の経済とエネルギーシステムを擁する米国ですが、ETIの総合順位は分析対象115カ国中27位、環境の持続可能性では89位です。
米国が直面するエネルギー転換と経済的平等という二重の課題を受け、「グリーン・ニューディール」に盛り込まれた一連のエネルギー・経済政策改革への支持が高まっています。具体的な政策はなお策定中ですが、これらの課題をめぐる政治的な機運は大きな機会をもたらしています。グリーン・ニューディールの成否は、温室効果ガスと地域の汚染を削減しながら、包摂的な経済成長に貢献できるかどうかにかかっています。
フランクリン・D・ルーズベルト大統領は、米国を大恐慌から立ち直らせるのに貢献したニューディールの経済政策を実施しました。遠縁にあたるセオドア・ルーズベルト大統領は、国立公園、森林、保護区の制度を創設し、世界に広がる保全重視の環境倫理を確立しました。どちらの取り組みも必要であり、それだけでは十分ではありません。
エネルギー転換を不完全であってもモニタリングすることは、このテーマに関する世界的な対話に役立ちます。今年のETI報告書は、環境改善の停滞と、経済成長および開発の側面におけるまちまちな結果を背景に、全般的に勢いが欠けていることを示しています。一方、ほとんどの国でエネルギーへのアクセスと安全保障の分野に大きな進展が見られます。さらに、各国の詳細に目を向ければ、ほかにも多くの前向きな動きを見つけることができますが、集約された指数では見落とされることがあります。オンラインで公開されている豊富な関連データをご覧いただくことをお勧めします。





