「浮体式風力」がエネルギー転換の鍵となる理由と、それを迅速に海上へ設置する方法

The world's first full-scale floating wind turbine, Hywind, being assembled in the Åmøy Fjord near Stavanger, Norway in 2009, before deployment in the North Sea
The world's first full-scale floating wind turbine, Hywind, being assembled in the Åmøy Fjord near Stavanger, Norway in 2009.Image: Lars Christopher
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  • 浮体式風力は、海底に固定されず海上に設置されたタービンを使用するもので、従来の陸上型や着床式の風力発電所に比べて、いくつかの重要な利点があります。

  • 浮体式風力は、再生可能エネルギーの設備容量の不足を埋めるうえで大きな貢献をする可能性があり、世界のエネルギー分野にとってゲームチェンジャーとなります。

  • 現在の予測では、着床式風力と浮体式風力の均等化発電原価(LCOE)が収束する時期は2035年とされていますが、その時期はこれよりはるかに早まる可能性もあります。

一見すると、エネルギー転換は本格的に進んでいるように見えます。世界各地の多くの政府や企業が、今後数十年かけて二酸化炭素排出量をゼロにすることを公約しており、そのため大部分において化石燃料は再生可能エネルギーに置き換えられる必要があります。しかしながら、こうしたネットゼロ目標を達成し、化石燃料から低炭素エネルギーへと転換するためには、再生可能エネルギー源を緊急に開発する必要があります。

残念ながら、この発電能力は現時点では存在していません。風力発電事業者らが、最近G20に対して説明したとおりです。。2017年には、世界のエネルギーの約80%が化石燃料由来でした。再生可能エネルギー源は急速に拡大しているものの、特にエネルギー需要が今後数年にわたって増加し続けることを考えると、設備容量には依然として大きな不足があり、埋める必要があります。「浮体式風力」は、このギャップを埋めるうえで大きな貢献をする可能性を秘めており、世界のエネルギー分野にとってゲームチェンジャーとなります。

浮体式風力エネルギーは、世界のエネルギー分野における不足を埋める大きな可能性を秘めています。

浮体式風力とは何か?

その概念はきわめて単純です。浮体式風力は、海底に掘削して固定されず海上に設置されたタービンを使ってクリーンな電力を発電します。浮体式風力タービンは沖合まで曳航され、浮体式プラットフォーム上に設置されます。必要に応じて、メンテナンスのために陸岸へ曳航し戻すことも可能です。水深にかかわらずタービンを浮かせることができる点は、発電容量の面でゲームチェンジャーとなり、標準化された製造の可能性(着床式の洋上風力発電と比べて)は、コストの面でゲームチェンジャーとなります。

浮体式風力は、従来の陸上型や着床式の風力発電所と比べて、いくつかの重要な利点があります。

第一に、浮体式風力は、陸上型や着床式の洋上風力(すなわち海底に固定された風力タービン)のいずれと比べても、追加的に得られる発電容量の可能性がはるかに大きいです。陸上風力は地域社会から景観を損ねるものとみなされることが多く、新規サイトの計画許可を得ることはますます困難になっています。着床式の洋上風力サイトは、水深と既存の海上インフラの両方によって制約され、タービンは水深60メートルまでの場所にしか設置できず、また地域社会や野生生物に過度の影響を与えることもできません。一方、浮体式風力は水深にかかわらず設置できるため、エネルギー発電に利用できる広大な海域を開くことができます。推定では、浮体式風力は、着床式の洋上風力のおよそ2倍の潜在的発電容量を有しています。これは、海岸から200キロメートル以内に位置する海域のみを考慮した場合でも同様です。

第二に、海岸から離れた海域ほど風の状態が安定しています。これは、同程度の設置コストであれば、より高い出力を持つ大型の浮体式風力タービンを使用でき、エネルギー効率とコスト効率の向上につながることを意味します。

第三に、浮体式風力は、タービンの設計と製造の標準化を促進し、コストを大幅に引き下げることができる可能性があります。現在は、土壌の種類や海流がそれぞれ異なるため、洋上風力発電所ごとに個別に設計する必要があり、その結果、設備投資コストが大幅に膨らんでいます。標準化により、これらの初期費用を削減するとともに、製造や保守の規模拡大、再生材料の利用、さらにタービンの耐用年数終了後のリサイクルや再利用が促進されます。この規模の拡大はコスト削減の鍵となり、設備投資コストは既に非常に急速に低下しています。

発電(系統への供給が可能)に加えて、浮体式風力技術を活用してグリーン水素(すなわち再生可能エネルギーを用いて製造される水素)を製造する機会も存在し、既存の石油・ガス資産(例:北海のプラットフォーム)を分散型の水素製造施設に転換できる可能性さえあります。理論上は、海運業界が水素を燃料とする方向に移行すれば、船舶向けの分散型燃料補給設備も整備され、港湾への需要を軽減できる可能性があります。

雇用の見通しも明るいものです。石油・ガスの洋上産業は、世界各地の多くの地域で伝統的に大きな雇用主となってきました(例:北海、メキシコ湾、ペルシャ湾)。長年にわたり、洋上の石油・ガス産業で訓練を受けた労働者は、危険な環境の中で技能と専門知識を培ってきました。これらの技能は、例えば設備の点検や補給船への人員配置などにおいて、浮体式風力にそのまま活かすことができます。

公正なエネルギー転換を確保することは、その社会的受容にとって重要です。浮体式風力は、縮小する石油・ガス産業から最も大きな打撃を受けた人々の一部が、再生可能エネルギーの拡大によって生まれる新たな雇用から直接的な恩恵を受けられるようにすることができます。また、浮体式風力は地域の雇用ももたらします。港湾の整備が必要となり、タービンの保守は現地で行われ、タービンや支持構造物の製造も新たな風力発電所の近くで行われる可能性があります。これらすべてにより、地域社会はクリーンエネルギーだけでなく、それに伴う経済的恩恵からも利益を得ることになります。

今後の課題

ただし、浮体式風力の今後の道のりは、障害のないものではありません。浮体式風力はいまだ新しい技術であり、すべての投資家がこれに賭けることに前向きなわけではありません。現時点では、着床式風力よりもコストが高く、ケーブルや系統接続に必要な費用も高額です。実際、状況によっては地域の系統への接続が実現不可能な場合もあり、グリーン水素などによって電力を陸上へ届けるための代替手段が必要となることもあります。また、タービンを効果的に運用するためには、大規模で高度に整備された港湾施設も必要となりますが、そのようなインフラは一夜にして構築できるものではありません。

投資を促進するためには、当初は補助金が必要となります(炭素の外部性が適切に価格に反映されている場合を除く)。標準化、技術の習熟、規模の拡大によって浮体式風力のコストが比較対象となる手法のコストを下回るまでは、補助金が必要です。現在の推計では、2035年が着床式風力と浮体式風力の均等化発電原価が収束する時期とされていますが、その時期はこれよりはるかに早まる可能性もあります。

Wood Thilstead社の上級構造エンジニアであるWill Hancock氏は次のように説明しています。「浮体式風力が10年以内に最も安価な風力エネルギーとなるシナリオが存在します(…)。主な要因は、浮体式風力タービンの標準化と、サイトの利用可能性の拡大です。」

浮体式風力エネルギーのコスト削減の見通し。Image: Berkeley Lab

世界各地で、政府、組織、そして一般市民が、二酸化炭素排出量を緊急の課題として議論しています。しかし、浮体式風力はこの議論からしばしば抜け落ちているように思われます。政府は、この新技術に対する資金調達(例:規模拡大を加速するための補助金を通じた資金供与)を確保するだけでなく、新規プロジェクトの計画を優先的に進めるとともに、公海(すなわち、いずれかの国の管轄権の範囲外にある海域)に位置するプロジェクトの計画における協力体制も確保する必要があります。

浮体式風力がもたらす機会は非常に大きく、その緊急の規模拡大の必要性も同様に大きいものです。

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