中国では発電側と系統側の蓄電が主流で、2023年に新たに導入された蓄電容量の97%を占めた。
2023年は、中国の産業・商業向け蓄電にとって飛躍の年となった。予測では、今後大幅な成長が見込まれている。
フォーラムのエネルギー消費の近代化イニシアチブは、3人のリーダーを結集し、中国の産業部門における蓄電導入を進めるための知見と戦略を提供する。
産業部門は、パリ協定と中国の「デュアルカーボン」戦略が掲げる目標の達成に重要な役割を果たす。しかし、再生可能エネルギーの供給変動や出力抑制といった問題があり、クリーン電力への移行における課題は増している。分散型再生可能エネルギーと蓄電を組み合わせることは、有効な解決策として浮上している。電力の需給を調整するとともに、電力利用効率を高められるためだ。
産業用蓄電部門はいま、課題と有望な機会の双方に直面する岐路に立っている。一方では、市場ポテンシャルは大きく、蓄電の重要性を認識し、蓄電システムの設置意欲を高める産業利用者が増えている。他方では、産業企業は蓄電システムの調達・導入にかかる高コストに直面しており、用地取得、系統接続、資金調達などがその要因となっている。

世界経済フォーラムは、産業部門における蓄電導入の推進について、3つの視点を集めた。
「再生可能エネルギー源のより良い統合」
高紀凡、会長兼最高経営責任者、トリナ・ソーラー
新たな発展の潮流のもと、蓄電業界には、かつてないほど高品質で先進的な高度化が求められている。トリナ・ソーラーは、ブランド構築、資金調達力、製品開発、システム統合、納入・サービスという5つの重要な推進力に注力し、太陽光発電・蓄電の高品質な発展の道筋を築くことに取り組んでいる。
電力供給の信頼性向上などの利点をもたらす産業用蓄電システムは、自家開発の太陽光発電設備と公共電力網をつなぐうえで欠かせず、効果的で安全な統合ソリューションが必要となる。
トリナ・ソーラーは、例えば江蘇省の塩城徳龍プロジェクトで、モジュール型設計を実現する包括的な蓄電ソリューションを開発した。このシステムは、エネルギー管理システム(EMS)を統合し、電力変換システム(PCS)およびバッテリーモジュールを監視して通信を行うことで、システム効率と電力品質を大幅に向上させる。
このシステムは、電力料金が安い時間帯に電力を蓄え、料金が高い時間帯に放電することで、価格差を活用してエネルギーコストを削減する。また、系統の停電時や保守時にはバックアップ電力を供給し、信頼性を高めて混乱を最小限に抑える。さらに、蓄電ソリューションにより、蓄電設備の所有者や運営者は系統のアンシラリーサービスに参加でき、系統の安定性向上と追加収益の創出につながる。このシステムは、風力や太陽光などの再生可能エネルギー源のより良い統合を支え、よりクリーンで持続可能なエネルギーミックスを促進する。資金面では、トリナ・ソーラーはパートナーとの共同投資やエネルギー管理契約の締結により、蓄電プロジェクトに十分な資金を確保し、安定した運営を実現している。
「安定した電力供給の確保」
于勇、会長、HBISグループ
鉄鋼業の高い炭素排出量は、そのエネルギー構造に起因する。HBISは、水素、グリーン電力、蓄電の導入によって排出削減を主導している。この戦略は再生可能エネルギーの利用を増やし、多様でクリーンなエネルギーシステムを構築することで、世界の気候変動の緩和と環境保護に大きく貢献する。
HBISグループは、グリーン転換とグリーン電力需要の課題に取り組んでいる。グリーン電力取引では鉄鋼業界をリードし、中国で上位10社に入り、2025年までに再生可能エネルギー容量350 MWの達成を目指している。再生可能エネルギーの利用を高めるため、HBISは蓄電技術の開発と応用を加速している。
蓄電分野では、HBISはバナジウムとチタンの資源を活用し、年間300 MWのバナジウム電池蓄電生産ラインを建設している。バナジウム・チタン産業チェーンを強化し、イノベーションと競争上の差別化を促進することが狙いだ。
HBISは自社のエネルギー利用環境を活用し、蓄電技術の実証を推進している。承徳では、豊富な太陽光資源を生かし、バナジウム・チタン材料産業パークで150 MWの電源・系統・負荷・蓄電一体型プロジェクトを開発し、安定した電力供給の確保を目指す。武陽では、157 MW/314 MWhの電気化学蓄電システムにより電気アーク炉の効率を大幅に高め、炭素削減とコスト効率化を実現している。張家口では、蓄電ソリューションの多様化に向け、圧縮空気エネルギー貯蔵の応用を模索している。
低炭素発展ロードマップに基づき、HBISはエネルギー構造の最適化、蓄電技術の前進、「新エネルギー+蓄電」プロジェクトの推進を続け、鉄鋼業のグリーン転換への道を切り開いている。
フォーラムはグリーンテクノロジーへの投資をどのように促進しているのか。
「二つのピークと二つの谷」
陳海生、会長、中国エネルギー貯蔵連盟
地域の産業用蓄電を迅速かつ高品質に発展させるには、早期の政策誘導が極めて重要だ。この戦略は企業と地方政府に相互利益をもたらすだけでなく、産業エコシステムの成長に向けた好循環も生み出す。
CNESAの調査によると、効果的な政策枠組みに後押しされ、蓄電導入で確かな成果を上げた地域がある。例えば浙江省には多様なエネルギー需要シナリオがある一方、建設コストの高さや投資回収期間の長さなどの問題を抱えている。利用者側の蓄電を対象とする多様な奨励政策を通じて、浙江省は蓄電プロジェクトの経済性を高め、太陽光発電の分散型導入・蓄電産業の発展を支援してきた。
浙江省の電力システムでは、時間帯別電気料金を「二つのピークと二つの谷」に分けている。つまり、新たな蓄電所は充電と放電のため、1日に2回、ピーク料金帯と谷料金帯に入る。さらに、一部の市や区では、主に放電量と設置容量に応じて、蓄電所に追加補助金を提供している。
こうした政策は、蓄電プロジェクトの投資回収期間を効果的に短縮し、企業の設備投資負担を軽減して、採算性を高めてきた。補助金が継続的に減少するなかでも、好循環の仕組みを通じて、市場が自律的に蓄電業界の健全な発展を促進できる。
初期の補助金は産業の発展を導くだけでなく、課税基盤を広げ、地方の財政収入を増やすことで、還元ももたらす。
これらの成功は、適切に設計された政策的インセンティブと効果的なマクロ経済規制が、エネルギー消費者と地域経済の双方の成長を促せることを示している。浙江省の経験は、政策誘導が地域での大規模な蓄電導入をいかに促進し、長期的な持続可能な発展を確保するとともに、他地域に貴重な知見をもたらすかを示している。
世界経済フォーラムはクリーンエネルギーへの移行をどのように促進しているのか。
エネルギー・素材センターは、エネルギー、素材、産業システムを変革する複雑な移行を理解するため、リーダーを結びつける。エネルギー安全保障、手頃な価格、持続可能性がどのように交わるかを探る場を提供する。
バリューチェーンや地域を越えた協働を通じて、同センターは共通の道筋を築き、パートナーが安全で低炭素かつ公平な移行に向けた実践的な解決策で足並みをそろえられるよう支援する。
未来を切り開く:産業用蓄電の推進
最新の調査によると、2030年までに、商業・産業用蓄電システムはスポット市場への参加やアンシラリーサービスの提供がはるかに容易になり、大幅な収益増につながる。特に、仮想発電所のアグリゲーションを通じたスポット市場取引の利益は10倍に増え、投資回収後の収益の約80%を占めると予測されている。
産業用蓄電の見通しは有望で、急速に進化している。その可能性を最大限に引き出すには、企業内のクリーンエネルギー転換を進め、産業用蓄電部門の秩序ある発展を支えるため、すべてのステークホルダーが一丸となって取り組む必要がある。

