エネルギー貯蔵がラテンアメリカの電力バリューチェーンを変える。その理由

Energy storage will allow for more distributed generation of solar power.
Energy storage will allow for more distributed generation of solar power.Image: REUTERS/Bruno Kelly
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大規模な蓄電池群によるエネルギー貯蔵は、ラテンアメリカではまだ導入の初期段階にある。しかし、同地域が発電源を多様化し、変動する発電を平準化してピーク需要のコストを抑えるために蓄電池の活用を目指すなか、電力貯蔵の役割は今後大きく高まると見込まれる。

拡大するエネルギー貯蔵

同地域の一部の政策立案者や民間企業は、実証プロジェクトや新たな政策を通じて、蓄電池の普及に向けた準備をすでに進めている。メキシコでは、ゼネラル・エレクトリックが、太陽光発電と風力発電を送電網に統合するのに役立つ5件の電力貯蔵プロジェクトを開発する計画を発表した。またドミニカ共和国では、AES Dominicanaが2017年8月に設置した出力10MWの蓄電池群2基が、数週間後にハリケーン「イルマ」が襲来した際、同国の送電網の稼働維持に貢献したと評価された。

エネルギー貯蔵は、ピーク需要対応型発電所に取って代わり、将来の送配電(T&D)投資を変え、再生可能エネルギーの出力変動を抑え、電力市場を再編し、電力エコシステムのデジタル化を後押しすることで、ラテンアメリカ全域の電力バリューチェーンに影響を及ぼす。

電力会社にとって、蓄電池はピーク負荷の管理、電圧と周波数の調整、再生可能エネルギーによる発電の安定性確保、より柔軟な送配電システムの構築に欠かせない手段となる。顧客にとっては、エネルギー貯蔵によってピーク時の電力需要に伴うコストを削減できる。

こうした機会を生み出しているのは、蓄電池コストの低下だ。これは、電気自動車向け電池の開発・製造が急速に拡大した結果である。ベイン・アンド・カンパニーの調査によれば、2025年までに大規模蓄電池は、電力需要が高いときに稼働するピーク需要対応型発電所とコスト面で競争できる可能性がある。この試算はコストだけに基づいており、企業や電力会社がエネルギー貯蔵から生み出すと期待される付加価値は含まれていない。一部の市場では、再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせた発電は、すでに石炭火力発電より低コストになっている。

エネルギー貯蔵:蓄電池のコストはピーク需要対応型発電所に対してますます競争力を高めている

エネルギー貯蔵への投資価値を高める

電力会社と大口の商業顧客も、エネルギー貯蔵への投資をより実現しやすくするため、その価値を高める方法を模索している。需要の少ない時間帯に蓄電池へ電力を貯め、ピーク時に放電してピーク負荷を抑えるだけでなく、蓄えた電力は電圧や周波数の調整といったサービスにも活用できる。また、変動する再生可能エネルギーによる発電の安定性向上にも役立つ。

こうした機会を生かすには、電力会社は運営モデルを調整する必要がある。例えば、エネルギー貯蔵によってピークが抑えられ、負荷曲線が平坦になると、電力会社はピーク需要対応型の発電能力への投資を一部見送り、送配電インフラへの投資を先送りできる可能性がある。

さらに、エネルギー貯蔵は小規模な単位で導入でき、移動も可能なため、投資コストを抑えられる。こうしてエネルギー貯蔵は、システムのニーズを満たす手段となるだけでなく、不要な設備容量や無駄をシステムから取り除き、システム全体のコスト削減にもつながる。

電力会社の経営幹部は、機会を生かすために商業・産業顧客と連携する方法を創意工夫する必要がある。例えば、電気自動車を多数保有する大口商業顧客を考えてみよう。効率性を考慮し、この企業は、車両を駐車し、夜間に充電する車庫に大規模な蓄電池群を設置するかもしれない。車両が満充電になっている時間帯や走行中に、電力会社がこの蓄電設備を利用できる可能性がある。同様に、大規模なデータセンターを運営する企業は、電力の安定供給を確保するため蓄電池に投資しつつ、データセンターで必要としない時間帯には電力会社がその蓄電資源を利用できるようにするかもしれない。こうした契約を管理することに慣れている電力会社は少ないため、実現には新たなスキルが求められる。

こうした取り組みの中心となるのは、電力会社のIT能力の強化、とりわけ高度なデータ分析の分野だ。顧客や規制当局からより多くの対応を求められるなか、電力会社には、場合によっては回路単位にまで踏み込んで、供給、需要、電圧や周波数のニーズをより正確に把握する力が必要となる。

現在、これほど大量のデータを管理し、価値あるリアルタイムの知見を引き出す能力を備えた電力会社は少ない。一方、多くの経営幹部は、そうした能力を社内で構築し始めていると述べている。第三者の分析サービス事業者と提携するほうが、費用対効果と効率の面で優れていると分かる場合もある。電力会社が持つ業界への深い知見と豊富なデータを、事業者の分析専門性と組み合わせることで、こうした提携は深い知見をより迅速かつ経済的に得る道となることが多い。

再生可能エネルギーによる発電と同様、エネルギー貯蔵の導入を後押しする勢いの多くは、商業・産業分野に広がる新たな機会を機敏に捉えられる新興企業から生まれる。顧客はコスト削減、信頼性とレジリエンスの向上、そして総じてエネルギー利用の主導権を強めることを目指し、より高度な選択をするようになっている。そうしたニーズを満たすため、電力会社だけでなくエネルギーサービス会社にも目を向ける顧客が増えている。

ラテンアメリカにおけるエネルギー貯蔵の将来

エネルギーサービス会社の役割自体は新しいものではないが、エネルギー貯蔵はその提供手段に新たに加わった。こうした企業は、エネルギー貯蔵に加えて幅広いサービスを提供できる。需要ピークを抑えて(ピークに基づく固定需要料金を減らし)、分散型太陽光発電の出力を安定させ、顧客が送電網から独立して運用できるようバックアップ機能を提供する。高度な知見を持つ開発事業者やソフトウェア企業は、データ分析能力を活用してこうした収益源をうまく付加し、顧客に新たな価値を生み出すことができる。

エネルギー貯蔵のコストが下がり続けるなか、幅広い価値の流れを統合する新たなビジネスモデルが、その潜在力を引き出す。大規模な再生可能エネルギーの組み合わせをさらに豊かにし、よりモジュール型で柔軟かつ地域に根差した送配電(T&D)システムを構築し、顧客により大きな価値を届けることで、エネルギー貯蔵はラテンアメリカの電力バリューチェーンを変える。

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