鉄スクラップとは何か、ネットゼロの実現にどう役立つのか?

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  • 鉄鋼需要は今も増加しており、特に発展途上国でその傾向が顕著です。

  • リサイクル鉄スクラップは排出量の少ない鉄鋼原料ですが、利用可能な材料の大半はすでに回収されています。

  • 鉄鋼生産の脱炭素化には、鉄スクラップの回収をさらに最適化することが不可欠です。

橋から自動車、ペーパークリップに至るまで、鉄鋼は私たちの物質世界のあらゆるところにあります。鉄鋼は、前例のない生活水準の向上と人類の進歩をもたらした基盤となる材料の一つです。しかし、排出を伴う他のすべての経済部門や素材群と同様に、鉄鋼業界も気候課題に対応するため、脱炭素化を進める必要があります。素材としての鉄鋼の成功により、世界の粗鋼生産量は19億トンを超えていますが、推定30億トンのCO2を年間排出しています(とはいえ、同じ用途に使われる可能性のある他のほとんどの材料より排出量は少ないです)。

鉄鋼は、一次資源、すなわち自然界から鉄鉱石を採掘して純鉄に加工する方法、または二次資源、すなわち鉄スクラップを再溶解して新たな鉄鋼をつくる方法、あるいはその両方を組み合わせて生産されます。二次資源である鉄スクラップとは、製造工程で発生する廃棄物や、寿命を終えて廃棄された建物、インフラ、設備、車両、製品から回収され、利用可能になった鉄鋼のことです。

世界で利用可能な鉄スクラップの量には限りがあり、社会が廃棄する速度に左右されます。これに対し、鉄鉱石を原料とする鉄鋼の供給量は、増大する鉄鋼需要に応じて採掘活動を拡大できるため、増やすことができます。

鉄鋼の主な生産方法は2つあります。Image: アルセロール・ミッタル

本来備わる循環性

鉄鋼は優れた循環性を備えています。他の材料は寿命を終えると品質を落として再利用されることがよくありますが、多くの用途では、鉄スクラップを元の特性を保ったまま繰り返し新たな鉄鋼に戻すことができます。鉄鋼の磁性により、混合廃棄物の流れから鉄スクラップを容易に選別できます。

鉄鋼に由来する世界の排出量は、主に一次資源である鉄鉱石から鉄鋼を生産する過程で発生します。エネルギー源および還元剤として、一般に石炭や天然ガスが使われるためです。二次資源である鉄スクラップからの鉄鋼生産では主に電力を使用し、排出量は大幅に少なくなります。実際、クリーン電力を使って鉄スクラップから鉄鋼を生産すれば、排出量を非常に低く抑えた循環型素材になります。

世界がカーボンニュートラルな循環型経済へ移行するなか、これは鉄鋼にとって追い風です。循環性やカーボンニュートラルの実現可能性がより低い他の材料と用途が重なる場合、鉄鋼がますます選ばれるようになるでしょう。

鉄スクラップを使った生産は、鉄鉱石からの鉄鋼生産より排出量が少ない。Image: アルセロール・ミッタル

世界的に高まる鉄鋼需要

実際のところ、現在、回収可能な鉄スクラップの多くはすでに回収されています。鉄スクラップは、コストと排出量を伴う鉄鉱石の採掘・製鉄工程に代わる原料として高い本質的価値を持っています。新たな鉄鋼をつくる原料として価値が高く、選別も容易なことから、製造工程で生じる廃棄物や、寿命を終えた建物、インフラ、設備、車両、製品から生じる鉄鋼のうち、世界全体で85~90%が現在回収され、新たな鉄鋼を生産するための鉄スクラップとして利用されていると推定されます。

社会が直面する課題は、新たな鉄鋼の生産に利用できる鉄スクラップの量に比べて、鉄鋼需要がはるかに大きいことです。鉄鋼需要のうち、鉄スクラップで賄われているのは推定でわずか4分の1です。世界が完全に発展した社会のニーズを満たすだけの建物、インフラ、設備、車両、製品を十分に備えて初めて、鉄鉱石を原料とする鉄鋼生産を段階的に廃止し、需要を満たすだけの鉄スクラップを生み出す完全な循環性を実現する道筋に立てます。これには時間がかかります。多くの成熟経済圏では鉄鋼の使用量が頭打ちになっていますが、発展途上国では、先進国の水準に近づくにつれて鉄鋼需要が依然として大きく伸びています。また世界は、カーボンニュートラル経済への移行のさなかにあり、それに伴って世界各地で多くのエネルギー・製造資産、インフラ、建物の更新が加速します。これにより、鉄鋼を含む材料の需要は一時的に増加します。

現在の消費パターンが続き、材料効率が大幅に向上することを考慮しても、世界の粗鋼需要は2021年の19億トンから、2050年までに年間26億トン超へ増加すると予測しています。2050年までに、寿命を終えた鉄スクラップが鉄鋼生産全体に占める割合は大幅に増えるものの、世界の鉄鋼生産の約44%にとどまります。これは鉄鋼に限らず、すべての素材群が直面する課題です。

2050年までに産業界の排出量を半減させる可能性のある、新しい鉄鋼製造方法
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鉄スクラップの課題に取り組む

鉄スクラップを原料とする生産が鉄鋼業界の脱炭素化で果たす役割は今後ますます大きくなりますが、2050年を見据えると、今後数十年にわたり鉄鋼の主要な供給源であり続ける鉄鉱石由来の鉄鋼生産の脱炭素化に注力する必要があります。その実現には、前例のない規模のイノベーションと投資が求められます。

こうした状況で、鉄スクラップについて脱炭素化を後押しするために、さらにできることはあるのでしょうか。それとも、鉄鉱石由来の鉄鋼生産に代わるほど鉄スクラップが増えるまで、何十年も待つ必要があるのでしょうか。答えは、今すぐ実行でき、実行すべきことが数多くある、ということです。

鉄鉱石由来の鉄鋼は今も必要ですが、鉄スクラップを使った生産もさらに脱炭素化できます。Image: アルセロール・ミッタル

前述のとおり、鉄スクラップの回収可能量の約85~90%が回収されていると推定されます。これは非常に高い回収率ですが、スクラップ由来の鉄鋼が持つ循環性とカーボンニュートラルへの貢献を踏まえ、さらに高い回収率を目指すべきです。廃棄物管理システムを改善し、革新的な鉄スクラップ回収プロセスを導入することで、回収率をさらに高めることができます。

粗鋼生産の主要工程である電気炉にクリーン電力を使えば、鉄スクラップからの鉄鋼生産は排出量を低く抑えられます。それでも、スクラップ由来の生産で残る排出をすべてなくすため、さらに脱炭素化を進めることができます。たとえば、電気炉への化石由来炭素の吹き込みをバイオ由来炭素に置き換えることや、圧延工程の加熱に使う天然ガスを電化加熱またはクリーン水素に切り替えることが挙げられます。

現状では制約のある特定の鉄鋼用途でも、スクラップ由来の鉄鋼の利用を広げる必要があります。たとえば、衝突安全基準を満たす車体用の高強度鋼を製造する企業は、一般的なスクラップ由来の鉄鋼の使用に慎重になるでしょう。化学成分の仕様が厳しく、現在のスクラップ由来の鉄鋼ではその適合を保証できないためです。このような場合は、品質向上のため、異なる廃棄物の流れから出る鉄スクラップをより適切に選別する取り組みが必要です。また、化学成分を改善するための鉄スクラップの前処理を開発し、促進する必要があります。さらに製品の観点からは、可能な場合、鉄鋼製品に関する仕様を調整し、製品に使用できる鉄スクラップ由来の鉄鋼の割合を増やすべきです。

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鉄鋼業界には、脱炭素化に向けて大きな課題が待ち受けています。スクラップの利用拡大だけでは2050年までにカーボンニュートラルな鉄鋼業界を実現するには不十分ですが、鉄スクラップの利用を最適化することが全体の成功の鍵となります。

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