バングラデシュの電力のうち再生可能エネルギー由来は約3.5%にすぎないが、政府は今後20年間で40%に引き上げる計画だ。
バングラデシュの排出量は先進国と比べてごくわずかだが、新たな石炭火力発電所の建設計画を実行に移せば、現在の気候目標を達成できない可能性が高い。
幸い、いくつかの政策構想からは、バングラデシュがグリーンエネルギーの拡大に取り組んでいることがうかがえる。
バングラデシュが来年初めに新たな5カ年国家電力計画を発表する準備を進めるなか、研究者らは政府に対し、クリーンエネルギーを拡大し、南アジアの同国で環境に配慮した社会的に公正な移行を実現する政策を進めるよう求めている。
現在、同国の電力のうち再生可能エネルギー由来は約3.5%にすぎず、政府は今後20年間で40%に引き上げる計画だ。しかし気候活動家らは、その目標達成に必要な包括的な取り組みが欠けていると指摘する。
南アジアの同国では、電力の半分以上を天然ガスに依存しており、さらに8%は石炭由来だ。新たな石炭火力発電所の建設計画が実施されれば、今後数年で石炭の割合は高まる見通しだ。
環境保護活動家らは、そうなれば地球温暖化を抑えることを目指す2015年のパリ協定の目標と相いれず、海面上昇など気候変動の影響に対する低地の同国のリスクを高める恐れがあると主張する。
パリ協定の下、約200カ国は、産業革命前と比べた世界の気温上昇を「2℃を十分に下回る」水準に抑え、理想的には1.5℃にとどめるため、排出量を大幅に削減することで合意した。
しかし科学者らによると、それ以降、地球の気温はすでに約1.1℃上昇しており、2030年までの温室効果ガス排出削減に関する現行目標が達成されても、2.4℃上昇する見通しだ。
バングラデシュの排出量は先進国と比べてごくわずかだが、新たな石炭火力発電所の建設計画を実行に移せば、気候目標を達成できない可能性が高い。それに加え、持続不可能なエネルギーインフラと雇用を生み出すことになると、活動家らは警告する。
先月のCOP26気候サミットでは、各国政府が「公正な移行」のアプローチの必要性を支持した。気候変動に対処するため経済がより環境に優しい生産へ移行するなか、労働者の権利と生計を守る取り組みなどが含まれる。
バングラデシュが国民のための「公正な移行」の計画をどこまで進めているのか、見てみよう。
バングラデシュでこの概念はどの程度浸透しているのか?
「公正な移行」という言葉は最近、国家政策や労働に関する議論に登場するようになった。しかし多くの労働者や工場経営者は、この言葉を知らない可能性があると研究者らは言う。
いくつかの政策構想からは、バングラデシュがグリーンエネルギーの拡大に取り組んでいることがうかがえる。例えば今年初め、同国は新たに10基の石炭火力発電所を建設する計画を取りやめた。
しかし政府ウェブサイトによると、政府は依然としてさらに8基を追加する作業を進めており、その大半は建設中だ。
今年発表され、COP26で提示された「ムジブ気候繁栄計画」は、低炭素成長に重点を置いている。
しかし、風力や太陽光発電を拡大するという政府の公表済みの目標にもかかわらず、こうした政策の現実世界での効果はまだ見えていないと、ダッカに拠点を置く政策対話センターの研究ディレクター、コンドカー・ゴラム・モアゼム氏は述べた。
「政治的な公約と官僚的な手続きの間には隔たりがある」と同氏は付け加えた。
同氏は、石炭より二酸化炭素排出量が少ないものの、地球温暖化を引き起こす化石燃料である液化天然ガス(LNG)の利用拡大への関心が高まっていると指摘した。
当局者らは、バングラデシュの炭素排出量は他国に比べて非常に少なく、同国が進めている措置は経済成長と発展に必要だと述べている。
バングラデシュで公正な移行に取り組む産業は?
世界第2位の衣料品輸出国であるバングラデシュの縫製産業では小規模な取り組みが見られるものの、公正な移行の原則が適用されることはまれだと研究者らは言う。
衣料品を輸出する少なくとも2,000工場のうち約140工場が、米国を拠点とするグリーンビルディング評価制度LEEDの認証を受けている。
そうした工場では屋上に太陽光パネルを設置し、水や化学物質を再利用する新たな方法を探り、よりエネルギー効率の高い機械を使っている。
国際金融公社(IFC)は6月、トムソン・ロイター財団に対し、338工場の温室効果ガス排出量を年間50万トン以上削減する支援を行ったと伝えた。これは自動車11万9,000台以上を道路からなくすのに相当する。
非営利団体グローバル・ファッション・アジェンダとコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーによる2020年の調査によると、こうした改革は極めて重要だ。アパレル産業は世界の温暖化を引き起こす排出量の4%を生み出しており、これはフランス、ドイツ、英国の年間排出量の合計に相当する。
しかし、より環境に優しい工場やクリーンエネルギーには、より多くの設備投資が必要だと経営者らは言う。こうした転換がバングラデシュの縫製労働者400万人にどのような影響を及ぼすのか、疑問が生じている。
一部の経営者は、新たな省エネ機械によって労働者の一部が不要になる可能性があると考えている。一方、ファッションの変化は速いため、産業の高度な自動化には適さないと話す人もいる。
グリーンエネルギーへの転換により、工場が労働者にとって働きやすい環境になり、肉体労働が減るため、労働者に恩恵をもたらす可能性があるとの見方もある。
また、労働者の権利と雇用をどう守るかが焦点となる可能性が高いのは、船舶解撤産業でも同様だ。政府はヤードの所有者に対し、2023年までに操業慣行を改善し、香港条約(船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための国際条約)の基準を実施するよう命じている。
2009年に採択されたものの、世界的にはまだ発効していないこの協定は、労働者の安全を改善し汚染を抑えることを目指す。一方、ヤードが要件を満たすためにより高度な設備を導入すれば、必要な労働力が減る可能性もある。
バングラデシュは気候変動による移住者の公正な移行を実現できるか?
少なくとも1億6,000万人が暮らすバングラデシュは、地球温暖化に伴う暴風雨や洪水の悪化により、最も深刻なリスクにさらされる国の一つと見なされている。
米国の非営利国際学術団体、米国地球物理学連合は4月、バングラデシュの沿岸地域で海水が迫るのを逃れるための移住により、2050年までに少なくとも130万人が住まいを追われる可能性があると警告した。
現在、沿岸地域からの移住者の多くは都市のスラムに行き着き、親族から非公式な支援を受けながら、適切な安全対策や許可を欠く工場などで危険な環境のもと働いている。
研究者らは、将来の人口移動に対応するため、衛生環境や住宅事情が劣悪なダッカやチッタゴンのような過密都市から離れた町に雇用機会をつくるべきだと考えている。
難民・移住動態研究ユニットを設立したタスニーム・シッディキ氏は、気候変動への適応を地域社会が進めるための資金を「より革新的に」活用するよう求めた。現在その資金は主に、耐塩性の作物や水中でも育つ作物の開発などに使われている。
「真の適応には、都市を移住者にとって暮らしやすくし、農村地域を発展させる適切な計画が必要です」と、同氏は今年初めにトムソン・ロイター財団に語った。
同氏は、移住労働者の公正な移行を求めるとともに、当局者、労働組合、雇用者団体が連携し、ディーセント・ワークと新たなグリーン雇用を計画するよう呼びかけた。
バングラデシュ国際気候変動・開発センター(ICCCAD)の副所長、ミザン・カーン氏は、河岸浸食や洪水で沿岸地域の家を追われた「小規模農家、漁業者、女性」が最も大きな支援を必要とすると述べた。
公正な移行の実施には誰が関わる必要があるのか?
バングラデシュの縫製産業の公正な移行に取り組む国際労働機関(ILO)は、解決策は産業内部から生まれる必要があると考えている。
アジアの環境とディーセント・ワークを担当するILO上級専門官、クリスティーナ・マルティネス氏は、気候変動対策と公正な移行の取り組みは、バングラデシュに多くの機会をもたらす可能性があると述べた。
「しかし、機会は外部からもたらされるものではありません。こうした機会を得るには計画が必要です。行動の緊急性を共有する多くの関係者と連携する機運はあります」と、同氏はメールで述べた。
ICCCADのカーン氏は、「公正な移行」という概念が国の議論に登場したのはごく最近であり、現場で実現するにはさらに注力する必要があると指摘した。
また、地域レベルでは、気候変動への適応の最前線にいる地域社会が取り組みを主導しなければならないと付け加えた。

