地熱エネルギーや石油・ガス生産など、地下に水を注入する産業活動には、通常は小規模ながら、時には被害をもたらす地震が副作用として伴います。しかし、こうした人為的地震を引き起こすうえで、流体注入が果たす正確な役割は、科学者にも明らかになっていませんでした。
今回、初めて、カリフォルニア工科大学(Caltech)など米国とフランスの研究機関の研究者が、大規模な地下断層で流体注入がどのように微小地震を引き起こすかを観測しました。この知見は、断層内の流体の流れへの理解を深め、地震リスク管理の改善につながる可能性があるほか、自然地震のメカニズムの解明にも役立ちます。
「現時点で産業界が直面する大きな課題は、流体注入に伴う地震ハザードを評価する確立された理論がないことです」と、論文の共著者であるジャン=フィリップ・アヴアック氏は述べます。同氏はケンブリッジ大学の地球物理学教授であり、Caltechのアール・C・アンソニー地質学教授、さらに研究が始まったCaltechのテクトニクス観測所(現在は閉鎖)の元所長でもあります。「私たちのような実験を通じて、地震の発生場所、規模、可能性を評価するのに必要なモデルを構築できます。」
フランスのエクス=マルセイユ大学にある欧州環境地球科学研究教育センター(CEREGE)の教授、イヴ・ギュリエルミ氏が主導したこの研究は、6月12日付の 『Science』に掲載されました。
地震は通常、蓄積した圧力によって地殻の一部が断層に沿って滑るときに発生します。最もよく知られている断層は、カリフォルニア州のサンアンドレアス断層のように、地殻を構成する大陸規模のプレート間にあるものです。サンアンドレアス断層は、太平洋プレートと北米プレートの境界です。しかし、こうした主要断層からは多くの小さな断層が枝分かれし、ほとんど、あるいはすべての岩石に存在する微細な亀裂にまで及んでいます。
「私の分野の課題の一つは、実験室で再現できる規模の岩石変形と、自然界で観測される変形とを結びつけることです。自然界の変形は、実験室より何桁も大きな規模に及びます」とアヴアック氏は述べます。「規模には非常に大きな隔たりがあります。」
今回の研究は、その隔たりを埋める助けとなります。アヴアック氏らは、石灰岩を貫いて4分の1マイルを超えて延びる断層で流体注入実験を行いました。この断層は、フランス南東部にある旧地下軍事施設で、現在は科学者が利用できる「低騒音地下実験所」(LSBB)に隣接しているため、調査が可能です。
研究チームは、深さ約925フィートの位置で断層に穴を掘りました。次に、センサーを備えた長さ5フィートの円筒容器を穴に降ろしました。この装置は「破砕の現位置特性を測定する段階的注入法」、略称SIMFIPと呼ばれます。SIMFIPは断層帯に吊り下げた状態で、圧力、水の流量、岩石の動きなどの重要なデータを測定するよう設計されています。
「SIMFIPプローブは、地震ハザード研究や地震の物理学の理解に不可欠な断層特性の解明への道を開きます」と、論文の共著者であるフランスのニース・ソフィア・アンティポリス大学ジオアズール地球惑星科学研究所の教授、フレデリック・カッパ氏は述べます。ギュリエルミ氏、アヴアック氏と共同で実験とモデルを開発したカッパ氏は、研究準備期間中、テクトニクス観測所の客員教授を務めていました。
「SIMFIP技術は画期的です」とアヴアック氏は述べます。「将来、さまざまな地質環境にある断層の研究に、この技術や類似技術が使われることを期待しています。」
SIMFITプローブを挿入した後、研究者らは断層帯に250ガロンの水を注入しました。水を送り込むと、岩石は当初、ゆっくりとクリープするように滑り、その様子をSIMFIPが記録しました。断層におけるこの種の動きは、測定可能な微小地震が発生しないため、非地震性すべりと呼ばれます。しかし、この小さな動きの間に断層の両側の岩石が離れると、断層への水の流入速度が急激に増しました。実験開始から約18分後、すべり速度が上昇し、地震波と数十回の測定可能な微小地震が生じました。
この実験から、流体注入そのものが地震を直接引き起こしたのではないことが明らかになりました。そうではなく、非地震性すべりによって、クリープする岩石領域の縁に応力が蓄積した可能性があります。やがて応力が断層内の岩石面間の摩擦を上回り、地震を引き起こしました。
研究に関与していないカリフォルニア大学サンタクルーズ校の地震学者、エミリー・ブロツキー氏は、この研究の「近接観測は、これまでで最も完全な地震発生の全体像を示しています。静かなクリープから地震への移行は、このデータセットに豊富に捉えられており、非常に単純なモデルによく合致していることも意外です」と述べています。
この研究は、石油・ガス産業の流体注入や、地熱エネルギー企業による発電施設の設置に関連する地震ハザードについて情報をもたらします。SIMFIPを用いた研究を続ければ、発電所から排出される二酸化炭素を地下に閉じ込め、大気への温室効果ガスの流入を防ぐ炭素回収・貯留技術の開発にも役立つ可能性があります。懸念されるのは、地震を誘発する可能性です。たとえば、地下の炭素貯留層に損傷を与え、漏出につながる恐れがあります。
最後に、アヴアック氏らは、流体注入によって生じる浅い人為的地震への理解が深まれば、深部の水が断層にどのような影響を及ぼし、大地震を起こす可能性にどう関わるかについての理論に知見をもたらすと示唆しています。
論文のタイトルは 「流体注入によって誘発された非地震性すべりが引き起こす地震活動」 です。実験研究は、HPPP-CO2プロジェクトを通じたフランス国立研究機構(ANR)のCaptage de CO2、およびPETRO-PROプロジェクトを通じたPACAから資金提供を受けました。本研究の速度・状態依存断層モデルは、フランス科学アカデミー、Caltechテクトニクス観測所、ANR HYDROSEISの支援を受けました。
この記事は、 Caltechとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムによる見解への支持を意味するものではありません。
Agendaの最新情報を受け取るには、 週刊ニュースレターにご登録ください。
著者:アダム・ハダジー氏はCaltechのために執筆しています。
画像:カンザス州ハドソンにあるキビラ国立野生生物保護区の干上がった池の一つの上に虹がかかる。REUTERS/Jeff Tuttle

