切り下げは人民元を準備通貨にする助けとなるか?

切り下げは人民元を準備通貨にする助けとなるか?
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今月初め、世界の金融市場はほぼ崩壊寸前に陥った。東アジアから西欧に至るまで通貨は急落し、株価も下落した。その原因は、中国が人民元をわずかに切り下げることを決めたことにある。中国経済は崩壊の瀬戸際にあると悲観論者は警告した。新たな通貨戦争の時代が幕を開けるだろうと、警鐘を鳴らす者たちも加わった。これを過剰反応と呼ぶのは、あまりに控えめな表現というほかない。

確かに、中国経済は減速しており、その大きな要因の一つは輸出の急減である。人民元の切り下げは、輸出の落ち込みを反転させ国内成長を回復させるための攻撃的な動きとみなすこともできる。そしてそれは、アジアやその他の地域の競合国にも為替レートの引き下げを促し、全面的な通貨戦争を引き起こしかねない。この点において、投資家の懸念にはまったく根拠がないわけではなかった。

しかし、その脅威はどれほど深刻だったのか。実際には、中国の切り下げは微々たるものだった。週末までに、全体で5%未満にとどまっている。今年これまでにユーロが20%下落したことや、日本が2012年末に「アベノミクス」と呼ばれる改革プログラムに着手して以降、円が35%急落したことと比べれば、人民元の「急落」を伝える誇張された見出しがいかに誤解を招くものであったかは明らかだ。中国が本当に世界の輸出でより大きなシェアを獲得したいのであれば、その政策担当者がこれほど控えめな調整で満足したとは想像しがたい。

中国の真の動機は、より先を見据えたものであるように思われる。今回の切り下げは、人民元を国際準備通貨とするという中国の戦略目標を前進させるものであり、長期的には米ドルに対する信頼に足る世界的な挑戦者とすることにもつながる。

この目的のため、中国は数年にわたり、IMFの準備資産であるSDR(特別引出権)の価値を決定する通貨バスケットに人民元を加えるよう働きかけてきた。現状では、そのバスケットには米ドル、英ポンド、ユーロ、日本円が含まれている。人民元がこの世界の主要通貨群に加わることになれば、その威信は大きく高まり、各国の中央銀行が準備資産としての利用を増やすことは間違いないだろう。

IMFによれば、通貨がSDRのバスケットに組み入れられるためには、二つの重要な基準を満たさなければならない。第一の基準、すなわち発行国が世界の主要輸出国の一つであることは問題にならない。中国はすでに世界最大の輸出国だからである。

しかし第二の基準、すなわち通貨が「自由利用可能」(広く使われ、広く取引されていること)でなければならないという点は、大きな障壁であることが明らかになっている。外国投資家による人民元の購入や、中国の投資家が海外投資に人民元を使うことに対して政府が厳しい制限を課していることを考えれば、この通貨を自由利用可能と評する観察者はそれほど多くないだろう。実際、わずか2週間ほど前にIMFのスタッフ報告書は、まさにその理由から、人民元はグローバル経済で本格的に通用する段階にはまだ至っていないと結論づけた。

しかし中国は、人民元の利用を拡大するための取り組みを着実に進めている。二十数か国との通貨スワップ協定の締結、人民元建て預金や債券のオフショア市場の積極的な育成、国内資本市場の慎重な開放などがそれに当たる。

中国は現在、人民元の国際的利用を妨げているもう一つの重要な要因、すなわち為替レートに対する政府の管理にも取り組んでいる。人民元の為替レートは、歴史的に中国人民銀行(PBOC)によって毎日固定されてきた。市場の基調的な心理を考慮することなく、きわめて狭い変動幅の中で取引されることが認められてきた。しかし中国は今後、日々の為替固定に市場のシグナルを反映させると発表した。PBOCがこの方針を実行に移すならば、中国は自国通貨が自由利用可能であると、より説得力をもって主張できるようになる。少なくとも、その方向へ進んでいると言えるだろう。

もちろん、まだすべての人が納得しているわけではない。PBOCが実際にどのように行動するかは、見極める必要がある。しかしIMFは確かに注目しており、「今後、人民元が通貨バスケットに組み入れられた場合にSDR業務を円滑にするため、市場で決定される為替レートの方がよい」との見解を示している。これは以前のスタッフ報告書からの、かなりの論調の変化である。

世界の多くが通貨戦争という想定上の脅威に気を取られている間に、中国はSDRバスケットに滑り込む道を見出したのかもしれない。少なくとも現時点では、人民元に対する中国の長期戦略は順調に進んでいるようだ。

本記事は、 Project Syndicateとの協力により掲載されたものです。掲載は、世界経済フォーラムによる見解の支持を意味するものではありません。

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執筆者:ベンジャミン・J・コーエンは、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の国際政治経済学教授であり、著書に Currency Power: Understanding Monetary Rivalryがあります。

写真:2015年8月12日、北京の市場で100元紙幣を手にする客。火曜日、中国は一連の経済指標の悪化を受けて自国通貨を切り下げ、世界の市場に衝撃を与えた。中国はこれを自由市場改革と位置づけたが、一部の専門家は、為替レートのより長期的な下落の始まりである可能性を疑っている。REUTERS/Jason Lee

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