ビッグデータとDNA検査の進歩を背景に、この10年間で生物学者のヒト・マイクロバイオームに関する知識は飛躍的に広がった。収集された情報の豊富さは、科学者に数多くの新しく刺激的な問いを投げかけている。
新たな知識領域ではどれもそうであるように、まずは分類に取り組む。たとえば、腸内には何千もの細菌種が生息していることが分かっているが、その真の多様性ははるかに大きいと判明するかもしれない。地球上で最も数の多い生物学的存在であるウイルスについては、これまでに分類されたのはわずか5~25%にすぎない。
その理由の一つは、特定の微生物を単離するのが難しいことにある。微生物は成長するために他の微生物の群集を必要とすることが多く、単独培養が困難だからだ。ヒト・マイクロバイオーム・プロジェクトのもとで開発され、昨年からGEが商業化している新技術により、研究者は単一細胞のDNAを単離し、わずか数時間で複製できるようになった。Phi29 DNAポリメラーゼを用いるこの手法では、わずか1フェムトグラム(マイクログラムの10億分の1)のサンプルから、マイクログラム単位のサンプルを増殖させることができる。こうした技術は単一細胞シーケンシングを促進し、やがて特定の微生物がマイクロバイオームにどう寄与するかを研究者が理解する助けとなる可能性がある。
その研究が進む一方で、細菌が互いに作用する分子機構の解明に取り組む研究者もいる。ブリティッシュコロンビア大学のブレット・フィンレーは、今年初めに発表した論文で、「生体内で産生される微生物叢の代謝産物の大半について、私たちはほとんど何も知らない。微生物が互いに、また宿主と意思疎通するために使う重要な分子であるにもかかわらず」と指摘している。ユニバーシティ・カレッジ・コークのジョン・クライアンも同意する。「こうした機構を本当に解明しなければなりません」と彼は言う。
その研究を待たずとも、医療での治療は可能かもしれない。作用機序が正確には分かっていない薬は、現在も数多く使われている。ただし、臨床試験は必要だ。クライアン氏は、プロバイオティクスに関する主張も同様に検証されるべきだと強調する。プロバイオティクスとは、何らかの効果を期待して摂取される、細菌を含む食品、あるいは細菌そのものを指す。
微生物のエンジニアリングも、関心と投資を集める分野だ。つい先月、ゲイツ財団は、発展途上国の子どもの栄養不良を予防できる可能性のある方法で、バクテリオファージを用いて腸内マイクロバイオームを操作する実験の提案を募集した。
微小な細菌ウイルスの可能性を探るこの研究とは対照的に、これまで成功が確認されているマイクロバイオーム操作は、慢性腸管感染症を軽減するための、糞便マイクロバイオーム全体の移植(FMT)だけである。感染症は クロストリジウム・ディフィシル 菌が引き起こす。しかし、まだ多くの課題が残っている。実際に有益な細菌の特定、使用する糞便または糞便由来培養物の標準化、適切な規制制度の整備などが必要だ。米国ではFMTは依然として治験薬と見なされている。
マイクロバイオームという新たな世界は、直接的な応用を超えた問いも提起する。たとえば、他のあらゆる生命に先んじて微生物が存在していたという事実は、人間とその微生物群集がどのように共進化してきたかを理解する必要性を示している。それは遠い目標に思えるかもしれないが、システム生物学者や計算生物学者は、細胞を一つずつ調べながら追究し始めている。現時点で研究対象となっているのは、私たちが知る最も単純な細菌の一つである マイコプラズマ・ジェニタリウムだ。何兆もの細菌や何千もの種、そしてヒト細胞との無数の相互作用にまで研究を広げるには、まだ長い道のりがある。
最終的には、マイクロバイオーム研究の影響を受けずに残るヒト生物学の側面は、ほとんどないだろう。クライアン氏が強調するように、「この分野の素晴らしいところは、非常に学際的で、皆が互いに話し合っていることです」。
この記事は当初、 GE LookAheadに掲載された。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しない。
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著者:ジョン・ターニーはGE LookAheadの寄稿者。
画像:窓越しに見える研究者が、実験室でDNAの準備をしている。ロイター/ロベール・プラッタ。

