ビッグデータを一部の人だけでなく、多くの人々のために活用する必要がある

Big data technology can tell us how to reduce pollution in cities
Big data technology can tell us how to reduce pollution in citiesImage: REUTERS/Toby Melville
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パンデミックや自然災害、あるいは単に偏った食生活によって脅かされる何百万人もの命を、ビッグデータはどうすれば救えるのか。答えは明快でありながら、深く考えさせられるものだ。私たちが収集し、処理し、再利用している膨大なデータに、一般の人々がアクセスできる道を設ける必要がある。

今日、ビッグデータ技術によって、地震の震源地を特定し、都市の汚染を減らし、ジカ熱のようなパンデミックの拡大を抑えることができる。こうした情報の大半は、災害後に人々が携帯電話をどのように確認するか、あるいはソーシャルメディアでどのような言葉を使うかを分析することで推測できる。

疾病から汚染までを地図化する、ビッグデータの強力な活用法Image: https://ourworldindata.org/air-pollution

ただし、ひとつ問題がある。こうした貴重なリアルタイムデータの大半は、危機の解決に最も有効に活用できる公的機関ではなく、民間事業者が保有しているのだ。これには、携帯電話ネットワーク事業者や、世界的に圧倒的な利用者を持つ検索エンジンを展開するGoogleなどのテクノロジー企業が含まれる。しかし、その大部分を所有しているのは、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディア・プラットフォームだ。

位置情報の特定や視線追跡など、多くの機能に加え、私たちが何の疑いもなく自ら進んで提供する膨大な個人情報のおかげで、こうした企業は、パートナーや親しい友人よりも私たちのことをよく知っている。約10万人を対象とした実証研究では、たとえばFacebookで300件の「いいね!」をすれば、コンピューターは配偶者よりも正確にあなたの性格を判断できることが明らかになった。

検索エンジン、ソーシャルネットワーク、写真共有サイト、メッセージサービス、アプリを通じて企業が収集するデータは増え続けている。それらは、商業的利益、インターフェースの設計、アルゴリズムによる処理、そしてユーザーが示す嗜好、行動、態度の相互作用から生み出される。

民間データの人道目的での利用は、社会をより良くするために、その潜在力が封じ込められていることを浮き彫りにする。適切に活用すれば、社会にもたらすプラスの影響は大幅に大きくなる。事例は数多い。商業データを都市計画や医療に応用すれば、人々の暮らしを大きく向上させる可能性がある。肝不全の共通予測因子を特定すれば、命を救える。若者の自殺に関連する特定の誘因メッセージを評価すれば、どの予防策が有効か(あるいは有効でないか)を公的機関がより適切に判断できる。さらに、位置情報タグを用いて人々の公共交通機関や自家用車の利用を把握すれば、都市の機能を明らかにできる豊富なデータが得られ、交通量、ひいては汚染の削減につながる。

こうしたツールやデータを政府が活用できれば、ビッグデータが重要な「デジタル時代の状況把握のための資源」として機能するため、大きなプラスの効果が見込める。とりわけ、データを開示し、組み合わせることで、テクノロジー企業は公的機関の状況認識や対応力の向上を支援し、緊急の健康課題に関する介入の優先順位付けを可能にする。

実際、企業が提供するデータは、特定の政策介入が実行可能かどうかだけでなく、直面しうる問題への対処法も教えてくれる。たとえば政策立案者が、炭酸飲料税や健康警告、健康に悪いとみなされる製品の販売制限を導入した場合、その結果、市民の消費が減ったかどうかを把握できる。つまり、ソーシャルメディアのデータセットにアクセスできれば、新たな公共政策の設計を改善し、現実社会での効果を追跡することもできる。

データ共有が人々の福祉を向上させる以上、それが道徳的に必要な実践であることに異論を唱えるのは難しい。同時に、この高まりつつある道徳的要請を、実行可能で法的にも確かな解決策へと結びつける技術的・法的枠組みも必要だ。Facebook、Google、Appleなどの企業と交渉し、データベースを共有する合意を実行に移さなければ、社会問題が指数関数的に増大しかねない。こうした合意は、企業の根底にあるビジネスモデルに対する社会の反発を抑えるうえでも重要となる。

こうしたテクノロジー企業は現在、何らかの「データ・フィランソロピー」をきっかけとしたCambridge Analyticaによるデータ収集や、世界規模の租税回避といったスキャンダルがもたらした悪影響に揺さぶられている。データを豊富に保有する民間部門、とりわけソーシャルメディア企業が、一定の状況下でもデータの一部を公開しない姿勢を続ければ、さらなる反発を招く可能性がある。

リアルタイムの民間データを公的に利用すれば命を救ったり健康を改善したりできるのに、企業がその知識を差し控えていると市民が気づけば、ソーシャルメディア企業をはじめとするデータ保有企業の評判はさらに傷つくだろう。Google、Apple、Facebook、Amazonは、自社が時間をかけて積極的に収集してきた利用者自身のデータを、公益のために、さらには緊急時でさえ利用できない理由を、世界中の利用者にどう説明できるだろうか。

この問いに答えるには、ビッグデータの可能性に関心を持つ研究者や専門家が、厳密でありながら魅力に満ちた研究の道のりに踏み出す必要がある。データ共有の価値観を企業の実践に根付かせることは、明日には一部の人々にとっての好機となるかもしれない。しかし今日、それはすでに多くの人々にとって生死を分ける問題なのだ。

本稿は、次の論文に基づいている。「公益のためのデータ:民間保有データを多くの人々の利益のために活用する」Alberto Alemanno著、『European Journal of Risk Regulation』第9巻第2号(2018年)。

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