仮想現実をもっと単純に考えてもよいのかもしれません

People test Samsung Gear VR glasses at their stand during the Mobile World Congress in Barcelona, Spain February 23, 2016. REUTERS/Albert Gea TPX IMAGES OF THE DAY - GF10000320102
As VR becomes more mainstream and easily accessible, new discoveries are being made constantly.Image: REUTERS/Albert Gea
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新たな研究によると、仮想現実で新しい空間について学ぶ際に、身体を動かす必要はないかもしれません。

仮想現実は、販売中の住宅のオンラインツアーから、超リアルなデジタル世界にゲーマーを没入させるハイテクヘッドセットまで、日常生活にますます浸透しつつあります。そのエンターテインメントとしての価値は確立されていますが、仮想現実には、まだ探求され始めたばかりの実用的な用途にも大きな可能性があります。

アリゾナ大学心理学部のヒューマン・スペーシャル・コグニション・ラボの所長であるArne Ekstrom氏は、空間ナビゲーションと記憶を研究するために仮想現実を活用しています。同研究室の関心の一つは、初動対応者、医療従事者、危険な環境を移動しなければならない人々の訓練など、社会的に有益な用途に対するこの技術の可能性です。ただし、こうした用途を最も効果的なものにするためには、仮想環境で人々がどのように学習するのかをより深く理解する必要があります。

学術誌『Neuron』に掲載された新たな研究では、Ekstrom氏と共著者でカリフォルニア大学デービス校神経科学センターの博士研究員であるDerek Huffman氏が、仮想空間を物理的に移動できるかどうかが、それらをどのように学習するかを改善するのかを検証することで、その理解を深めています。

Derek Huffman氏が全方向トレッドミル上で、仮想環境を360度移動している様子。

仮想現実での移動方法

「仮想現実における大きな懸念や欠点の一つは、現実世界を移動するときに私たちが実際に得る体験を捉えられないことです」と、心理学の准教授であり本研究の責任著者でもあるEkstrom氏は述べています。「本研究で私たちが取り組もうとしたのは、まさにこの点です。実際に物がどこにあるかを知るうえで役立つ空間表象を形成するには、どの情報が十分なのか、ということです。」

研究者らは、研究参加者にヘッドセットを装着させ、3つの仮想都市を探索させました。参加者は、次の3つの方法のいずれかで各都市を移動しました。

1) 参加者は、全方向(360度)トレッドミル上を歩きながらヘッドセットを装着しました。このトレッドミルでは、あらゆる方向に自由に歩くことができます。この条件では、参加者は歩いたり頭を回したりすることで、仮想環境を移動することができました。

2) 参加者は、手持ちのジョイスティックのみを使って仮想環境を移動しました。頭を動かしたり歩いたりして移動することはできませんでした。

3) 参加者は、身体を左右に動かし、ジョイスティックを前後に動かすことで移動しました。歩き回ることはできませんでした。

参加者は、仮想都市を探索し、指示された特定の店舗を見つけるのに、平均して2~3時間を費やしました。環境を十分に学習する機会を得た後、研究者らは空間記憶を検証するための一連の質問を投げかけました。例えば、研究者は、参加者にコーヒーショップの前に立っていて、書店の方を向いていると想像するよう求めることがありました。その後、参加者に食料品店の方向を指し示すよう求めることもありました。

参加者の回答の正確さは、どの条件にいたかによって変化しませんでした。

その後、参加者は同様の一連の質問に答えながらMRIスキャンを受けました。これにより研究者らは、参加者が空間記憶を想起する際に脳内で何が起きているかを確認することができました。

研究者らは、3つの状況すべてで参加者の脳の同じ領域が活性化することを発見しました。さらに、脳の異なる領域間の相互作用のパターンも、3つの条件の間で類似していました。

「私たちが発見したのは、異なる条件間で神経コードが同一であったということです」とEkstrom氏は述べています。「このことは、脳に関する限り、また行動として測定できた内容から見ても、仮想環境で物を見るだけで十分な情報が得られることを示唆しています。環境を十分によく知ってしまえば、身体を動かすことで得られる情報は、実際にはそれほど大きな追加価値にはなりません。」

長きにわたる議論に終止符を打つのか?

今回の研究結果は、身体の動きが物理的な空間の学習に役立つかどうかをめぐる、長年にわたる科学的議論に答えるものです。

「学習の仕方が大きな違いをもたらすかもしれず、身体に基づく手がかりがない場合は、空間の記憶を形成するうえで重要となり得る大切な要素が欠けているのだ、という考え方が以前からありました」と、本研究の筆頭著者であるHuffman氏は述べています。「私たちの研究が示唆するのは、環境についての十分に形成された記憶さえあれば、その学習方法はそれほど重要ではないということです。」

「複雑な空間表象を形成するために、身体への没入は必要ないですし、身体の手がかりも必要ありません」とEkstom氏は付け加えています。「十分な経験を積めば、単純な仮想現実アプリケーションでもそれは実現できます。」

実用面から見ると、今回の研究は、基本的な仮想現実システムでさえ教育用途で役立つ可能性があることを示唆しています。

「仮想現実は、直接体験することができないかもしれない状況を理解させてくれる可能性を秘めています」とEkstrom氏は述べています。「例えば、建物への攻撃の後に、その建物に一度も行ったことがなくても人々を見つけ出せるよう、初動対応者を訓練できるとしたらどうでしょうか。」

「私たちの研究結果は、仮想現実の活用には、ジョイスティックを動かすだけの単純なアプリケーションであっても、空間環境に関するかなり複雑な知識を人々に教えられる可能性があることを示唆しています。」

出典:アリゾナ大学

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