拡張現実データの価値を引き出す

Kai Lee models a prototype Holoseer augmented-reality headset during the 2016 CES trade show in Las Vegas, Nevada January 8, 2016. The headset, with 100 degrees of view, is made by Caputer, a start-up company based in Shenzhen, China. REUTERS/Steve Marcus - GF20000088198
An augmented reality headset being tested during the 2016 CES trade show in Las Vegas.Image: REUTERS/Steve Marcus
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拡張現実センサーの文脈豊かなデータにより、企業は情報を結び付け、より優れた製品やプロセスを構築できます。

「センサー」という言葉は、モノのインターネット(IoT)と切り離せないものになりました。センサーは環境条件を検知し、産業機械が稼働状況を報告する場合も、自宅のサーモスタットを遠隔操作でオンにする場合も、こうした信号をデータとして双方向にやり取りします。このデータはIoTが世界経済にもたらす影響を左右する重要な要因であり、マッキンゼーはその経済効果が2025年までに年間最大11.1兆ドルに達する可能性があると推計しています。

IoTが登場する以前、センサーの主な機能である環境の変化を検知することと、そのデータを伝達することは、おもに人間が担っていました。今日、拡張現実(AR)技術の普及が進むなか、まもなく人々はスマートフォンやヘッドセットなど、さまざまなARデバイスを通じてセンサーを身に着けることになります。この拡張によって、組織はこうしたデータの知見を活用し、業務効率を高めるとともに、消費者向けの製品やサービスを差別化する新たな機会を得られます。

今日のAR市場は、話題を集め、ユーザーに新たな機能の初期価値を示している点で、2010年当時のIoT市場に似ています。ARには、視覚化し、指示を示し、双方向にやり取りする力があり、私たちがデータを扱う方法を変える可能性があります。IoTの黎明期から得られた教訓を踏まえ、企業は、ユーザーの知見からより優れた製品やプロセスを構築できるよう、ARデバイスのデータをどのように計画し、その価値をどう見極めるのが最善かを問うべきです。

スマートにつながる現実が、より多くのユーザーデータをもたらす

計画を進めるうえで、最近の「つながる」時代の歩みから学べることは多くあります。2007〜2008年にiPhoneとAndroidが市場に登場したことで、顧客が各ブランドとどのように関わるかについて大量のデータが得られ、エンジニアはユーザーのニーズに関する新たな知見を得ました。この市場の変化によって価値提案は一変しました。アプリケーションは顧客体験を提供すると同時に、それを感知し測定できるようになり、サブスクリプション型や利用量に応じたサービスへの道が開かれました。IoTを通じて物理的な製品にも同様のセンシング機能が現れると、企業はすぐに接続機能を組み込み、モノのインターネットを構成するスマートコネクテッド製品(SCP)が誕生しました。それ以来、データをめぐる競争とデータ経済の台頭が、技術面で後れを取る企業に変革を迫ってきました。

こうした実証済みの市場動向を考えると、豊かなデータを収集する次世代の手段として、ARをセンサーとして活用する可能性は非常に大きいといえます。製品にはすでにAPIと接続機能が備わり、ARデバイスには複数のカメラからGPS、Bluetooth、赤外線、加速度計まで、さまざまな機械センサーが搭載されています。

ARはまた、機械自動化の熱狂のなかで見落とされがちなセンサーも活用できるようにします。それは、人間が持つ創造性、直感、経験という能力です。人間には、未知の状況を認識して対応する優れた力があり、現在の技術システムよりも迅速かつ正確に状況を判断できます。

ARデバイスを使う人々が、こうしたやり取りに何をもたらせるか考えてみましょう。接続されていない製品とSCPの両方から、新たなデータや行動に関する有益な知見を集められます。接続されていない製品なら、ARをセンサーとして使う人は「この製品はどのように使われ、ユーザーは何を好むのか」と尋ねるかもしれません。SCPなら、「使い方は性能にどう影響するのか、また製品は使い方にどう適応できるのか」と問うでしょう。

人とのやり取りは、ARによるデータ収集に人間の創造性、直感、柔軟性を取り入れることで、接続されている製品もされていない製品も、実際にどう使われ、どう機能し、目的に合わせてどう適応できるかを理解するための文脈をもたらします。

新たなARデータがもたらすビジネス機会を評価する

ARによって生み出される新たなデータは、製品の使われ方やカスタマイズの機会を探るためのフィードバックループを形成します。こうした顧客データの価値は、新たなデジタル経済における事業戦略の中核として、ますます重要になっています。

データの価値を理解する方法の一つは、DIKWピラミッド(「DIKWモデル」を参照)を使って評価することです。これは情報管理で用いられる階層モデルで、生のデータ信号が価値ある知識や洞察へと変わる過程を理解するのに役立ちます。

DIKWモデル

DIKWモデルは、生データから分析によって価値ある知恵に至るまでの階層を示しています。

見覚えがあるのは、これが今日、SCPのメーカーやユーザーに価値をもたらしているデータの流れそのものだからです。こうした知見をエンジニアリングシステムにフィードバックすることで、企業はこれまでにない方法で製品ポートフォリオ、設計、機能を最適化できます。

ARを活用したデータ収集を、SCPから流れてくるIoTデータと組み合わせれば、さらに文脈を加え、より包括的な知見を得られます。接続されていない物理製品やデジタルのみのサービスでは、人がARを通じてそれらとやり取りすることでセンサーの役割を果たし、製品やサービスの利用状況、品質、さらにはユーザー体験と価値を最適化する方法について、新たな知見をもたらせます。

ARの知見を活用した初期事例

こうしたデータソースを活用する初期事例は数多くあります。Honeywell、Cannondale、Amazon、DHLなどの企業は、ユーザーから得たARデータを利用し、それに基づくパーソナライズを提供することで、製品戦略、バリューチェーン、品質管理の取り組みに新たな機会を生み出しています。(「AR活用の初期事例」を参照)

AR活用の初期事例

企業はすでに、ARデータから得た知見を使って新しい製品やサービスを生み出しています。

こうした初期事例から、ARをセンサーとして活用することがどのように一般化し、製品戦略とバリューチェーン活動の両面でメーカーに新たな機会をもたらすかが見えてきます。

専門知識の継承。ユーザーにAR体験を提供する利点が広くうたわれるなか、HoneywellはARを使って熟練作業者の専門知識を記録し、新入社員への知識継承を改善しています。経験を通じて初めて明らかになる製品知識をデジタル化することで、Honeywellは埋め込み型センサーを使わずに、従来は得られなかった方法で製品とその使われ方を理解できます。

製品の声。Cannondaleでは、最新の高級自転車にARアプリが付属し、自転車の機能を紹介するとともに、一般的なメンテナンス手順をユーザーに案内しています。これにより、製品の定義は物理的な自転車だけから、物理とデジタルを組み合わせた体験へと根本的に変わりつつあります。こうしたデジタルAR体験を通じて、Cannondaleは匿名化データを収集・分析し、製品の「声」を届ける機会を得ています。どの機能や手順が最もよく使われるかを理解すれば、製品への理解を深め、ユーザー体験の向上と競争優位につなげられる可能性があります。

パーソナライズされたサービス。ARは、顧客が購入前に商品を視覚化して試せるため、他のメディアにはない形で電子商取引や小売業を変革すると期待されています。Amazon Echo Lookは、顧客が仮想の服を自分に着せて撮影し、実物を購入する前に確認できる新しいデバイスです。2018年1月、Amazonは「マジックミラー」技術の特許を取得しました。この技術をEcho Lookと組み合わせれば、次世代の試着室への道が開かれます。Echo Lookを通じて現在収集されているデータは、ユーザーの好みのプロファイルを作成し、嗜好に基づくおすすめ商品を選定するために分析されています。服のおすすめを顧客の姿に重ねて表示する機能と組み合わせれば、この新たなARデータ源が、パーソナライズされたサービスや体験を新たな段階へと導くことは容易に想像できます。

品質管理。DHLは長年AR技術の最前線に立ち、現在のARプログラムでも先進的な取り組みを進めています。物流プロセス全体の摩擦を減らすことで、ARは日々の業務に取り組むDHLの従業員に大きな価値をもたらします。しかし、データの活用はユーザーにとどまりません。バーコード読み取りに統合型コンピュータービジョンを用いることで、DHLは新たな方法で品質保証データを収集・記録できるようになりました。これにより、人間の行動が注文の品質やプロセスの効率に影響する箇所を把握できます。

各社のこうした初期導入事例は、今後のAR体験の提供方法と、そのデータが企業にさらなる価値をもたらす仕組みを垣間見せてくれます。

戦略的な情報を結び付ける

より広範なデータ戦略には、どのような影響があるでしょうか。この視点から一歩引いて見ると、その影響は大きなものになり得ます。多くのデータ施策の価値は、情報を結び付ける能力にかかっています。IoT、デジタルエンゲージメント、顧客の声などの取り組みが、製品やプロセスの最適化に向けた大きな機会を生み出し続ける一方、技術面や組織面の制約から、多くの企業はこうしたプロジェクトを個別に進めています。

ARが文脈豊かな新しいデータ源として登場するなか、スマートコネクテッド製品からCRMデータ、デジタルエンゲージメント、その他の洞察源まで、複数の情報源を結び付ける企業が、最大の機会を生み出すでしょう。

こうした機会を生かしたい企業は、従来の部門別または技術別の連携体制ではなく、顧客体験の向上という目標に専念する、部門横断型のリーダーやタスクフォースを設けるべきです。

この新たなデータ主導の世界では、全体は部分の総和を上回ります。ARは、ビジョンを実現するために必要な最後のピースかもしれません。

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