世界経済フォーラムの2024年の注目新興技術トップ10レポートでは、今年最も大きな影響をもたらす新興技術を紹介しています。
このリストには、医療、通信、インフラ、持続可能性への応用に焦点を当て、人工知能が科学研究を加速させる方法が含まれています。
AIを活用した科学的発見、炭素を回収する微生物、弾熱効果を利用した技術などが、紹介される10の技術に含まれています。
移り変わりの速いアイデアがあふれる世界で、意思決定者、起業家、市民は、今後数年間、どの新興技術を議題に取り上げるべきでしょうか?
世界経済フォーラムの最新の2024年の注目新興技術トップ10レポートは、本日発表され、フロンティアーズとの協力で作成されました。可能性に満ちた未来を明らかにする今回のレポートは、第12版にあたり、より広い視野を取り入れています。世界を代表する300人を超える学者や専門家の知見を活用し、フォーラムのグローバル・フューチャー・カウンシル、大学・研究者ネットワークおよび注目新興技術運営グループのメンバーから知見を得ています。
これらの知見をデータ分析と組み合わせることで、材料科学の進歩から医療を変革する技術まで、複数の世界的課題への対応において各技術がもたらし得る影響を確かな形で理解できます。
レポートで取り上げられている技術は以下のとおりです。
接続性技術
エネルギー使用量を減らす必要がある世界で、6Gの登場も視野に入るなか、即時のデータアクセスに対する需要の拡大とその提供を、どうすればより持続可能なものにできるでしょうか?
再構成可能なインテリジェントサーフェス(RIS)は、形状を動的に変えることで無線通信回線を最適化します。メタマテリアル、スマートアルゴリズム、高度な信号処理を組み合わせ、電磁波を制御・操作します。
通信容量と接続性の向上を目指して設計され、環境の持続可能性を重視するRISは、一般的な壁や表面を無線ネットワークのインテリジェントな構成要素へと変えることができます。
この技術は日常のどのようなプロセスに影響を与えるでしょうか?主な用途は通信分野です。レポートによると、スマート工場や車両ネットワークにおける、より信頼性が高く効率的な電波通信や、農業現場での通信範囲の改善につながる可能性があります。
フォーラムは、グリーン技術への投資をどのように促進しているのでしょうか?
最新の太陽光発電、バッテリー、軽量複合材料、航空電子技術を活用する高高度プラットフォーム局(HAPS)システムは、通信と観測の能力を新たな水準へ引き上げる可能性があります。地上約20kmの高度で運用され、通常は気球、飛行船、固定翼機の形態をとるこれらのシステムは、特に世界の遠隔地で、地上の基地局や衛星を上回る接続性、カバレッジ、性能を実現できます。
HAPSの革新的なインフラは、接続環境が整っていない100か国の26億人を超える人々にインターネットアクセスをもたらし、教育や経済成長の機会を生み出す見込みです。
デジタル包摂の改善に加え、HAPSは迅速に展開できるため、緊急事態において重要な役割を果たす可能性があります。
センシング機器や通信機器があふれる世界では、機能の一部が重複するのは避けられません。統合センシング・通信技術(ISAC)は、これらの機能を単一のシステムに統合し、データを同時に収集・送信できます。これによりコストやハードウェアを効率化し、新たな応用の可能性も広がります。
ISACは無線ネットワークに環境認識機能を持たせ、位置特定、環境マッピング、インフラ監視などを可能にします。例えば、センサーやデータ分析を使って、大気や水質、土壌水分、気象条件を監視できます。実用例には、スマート農業、環境保全、都市計画の監視システムのほか、エネルギーの生産と消費を最適化するスマートグリッドがあります。
ダボス会議2025「インテリジェント時代の産業」
AIが可能にする発見
人工知能(AI)の急速な進歩と、それが科学研究にもたらす意味が、今年の主要な技術開発リストの筆頭に挙がるのは驚くことではありません。AIが知識や能力の向上にどう役立つか、科学者たちは長年研究を続けてきましたが、近年のディープラーニング、生成AI、基盤モデルの飛躍的な進歩により、発見や予測の速度は大きく変わりつつあります。
AIによってデータの世界がかつてないほど広がるなか、倫理やセキュリティ上の懸念なくデータを活用する方法を見つけることが重要です。そこで登場するのが合成データです。これは期待が高まるプライバシー強化技術であり、AI時代に再び注目されています。合成データは、機微なデータセットのパターンや傾向を再現しながら、個人と結び付けられたり、組織や政府を危険にさらしたりする具体的な情報を含みません。AIの進歩を土台に、識別情報を取り除くことで、科学者などが世界中でデータを共有し、生物学や健康に関する研究で協力できるようになります。
科学的発見のためのAIは、新たな知識の発見と活用のあり方を変革しています。DeepMindのAlphaFoldなどのAIシステムは、タンパク質構造の3次元モデルを高い精度で予測できます。また、AIは新たな抗生物質の系統を発見した研究や、より効率的なバッテリー用材料の開発にも応用されています。米国大統領科学技術諮問委員会の最近の報告書によると、「AIはあらゆる科学分野と、科学の進め方の多くの側面を変革する可能性があります。」
国連によると、建築・建設部門は炭素排出量のほぼ40%を占めています。建築環境向けの没入型技術とAIを活用した複合現実ツールは、よりクリーンな未来を実現するうえで重要な役割を果たす可能性があります。課題を予測し、現実世界での実施に向けてプロジェクトを最適化できます。例えば、デジタルツインを使って複雑な結果をシミュレーションすれば効率が高まり、仮想プロトタイピングや実験によって精度を向上させられます。
ビジネスは活況を呈しているかもしれませんが、世界的な労働力不足は続いています。注目新興技術レポートによると、メタバース上で、世界各地の建築、エンジニアリング、建設の専門家を結び付ける没入型の学習・訓練環境を通じて、この問題を緩和できる可能性があります。
気候変動に取り組む技術
気候危機への対応や解決策となる技術が、今年のトップ10で大きな比重を占めています。
弾熱効果技術は急速に進歩している分野で、「筋肉のように働く熱システムを実現する」と説明されています。より持続可能な冷却方法をもたらす可能性があります。気候の温暖化とデータ需要の増加を踏まえると、その重要性はかつてないほど高まっています。弾熱材料を用いたヒートポンプは、ニッケルやチタンなどの材料を使います。これらの材料は機械的な応力を加えると熱を放出し、応力を緩めると冷却します。従来の暖房・冷房システムよりエネルギー効率が高いことが示されています。
レポートによると、環境に有害な冷媒ガスを使わずに済み、電力網のインフラが限られている、あるいは存在しない地域でも冷房に利用できることも利点です。米国エネルギー省の研究では、これらのヒートポンプは、現行システムに代わる最も有望な選択肢と評価されています。
気候危機のさなか、微生物が貴重な資源として注目されています。空気中や排ガス中の温室効果ガスを回収できる微生物は、排出物をバイオ燃料などの有用な製品に変換します。こうした製品は地球温暖化を抑制する可能性があります。
主な微生物による炭素回収には2つの方法があります。1つ目は、シアノバクテリアや微細藻類などの生物が、光合成を通じて炭素を「食べる」方法です。2つ目は、水素や有機廃棄物流などの再生可能エネルギー源を使う微生物でCO2を回収し、バイオディーゼルやタンパク質を豊富に含む飼料などの新たな製品に変換する方法です。
畜産では大豆などのタンパク質の生産に依存しており、それが森林破壊、生物多様性の損失、過剰施肥、土地利用の変化による温室効果ガス排出につながる可能性があります。代替家畜飼料として、単細胞タンパク質、藻類、食品廃棄物を原料とする家畜用タンパク質飼料が、そうした製品に代わる実行可能で持続可能な選択肢となる可能性があると、レポートは述べています。需要の増加に伴い、その可能性は特に高まります。
移植医療の進歩
移植は命を救いますが、需要を満たすだけの臓器はまったく足りていません。しかし、CRISPR-Cas9など、遺伝子操作における近年の進歩が状況を変える可能性があります。
移植のためのゲノミクス:遺伝子改変された臓器をヒトに移植することに成功したのは、医療における大きな進歩であり、移植を待つ何百万人もの人々に希望をもたらします。


